※諸注意

 この小説は、かなりいろんな意味でギリギリの線を越えちゃったり越えなかったりしてますが、まぁ、そんなに気にしないでください。

 

 

 

 

 

妄想の小部屋[探偵ヴァージョン]

 〜事件は現場でなく会議室で起こったり起こらなかったり気づいたらいつの間にか事件はあらぬ方へ発展しもうこうなったらどうにでもなれと作者は考えた結果こうなっちゃたんだよDX小説決定版〜

 

 

―キャスティング―

 江戸○コナン(名探偵コ○ンより)

…………………… 月宮あゆ
 古畑○三郎(警部補 古畑任○郎より) …………………… 水瀬秋子
 金田○耕介(金田一○介シリーズより) …………………… 美坂香里
 ○宮サキ(スケバン○事より) …………………… 川澄舞
 青島○作(踊る○走査線より) …………………… 沢渡真琴
 工藤○作(探偵○語より) …………………… 水瀬名雪
 検死官(太陽に○えろより) …………………… 倉田佐祐理・天野美汐
 ホ○ムズ(宮崎監○作品の例の犬のやつ) …………………… 美坂栞
 他多数。

 

 

 

『突然ですが、臨時ニュースをお伝えいたします』

 TVに写っている女性ニュースキャスターは、渡された原稿をすらすらと読み始めた。

「そういえばさぁ、おかあさん?」

「なに? 名雪」

 親子は昼食を取りながら、のほほんとTVを観ていた。

「いつも思うんだけど、ニュースキャスターさんって、いきなり見た原稿をすらすら読めるってすごいよね」

 ほふぅ、と名雪はため息をついた。

「そうね。小学生のときから本読みとかが苦手だった名雪には、とても無理ね」

「おかあさん、ひどいよ〜」

 ふふふ、と秋子は微笑んだ。

「おかあさんだって、早口言葉とか苦手じゃないの」

「あら。言ってなかったかしら」

「なにを?」

「おかあさんはね、早口言葉とかも得意なのよ」

「そうなの!?」

 そうなのよ、と秋子は微笑んだ。

「昔は、柔道もしてたのよ」

「エエッ!!」

「オリンピック候補にだって、何度もなったんだから」

「ウソぉ」

「二つの世界を救ったりもしたんだから」

 秋子は優しく微笑んだままだ。ウソか本当か、その顔からは読み取れない。

「それをいうなら、私だって」

「何が出来るの?」

「昔は星座にまつわる精霊たちを召喚できたんだから」

 それはすごいわね、と秋子は笑った。

「信じてないでしょう……」

「そんなことはありませんよ」

 依然として、秋子の表情からは何も読み取れない。

「あ、ニュース。何か言ってるよ」

 名雪は再び、TVに視線を移した。

『本日未明、某市立某高等学校で』

「あぁ! 私の通ってる学校だよぉ」

「……そういえば、そんな名前でしたね」

『その、某高等学校で、殺人事件が発生した模様です』

「へぇ〜、物騒だねぇ」

「落ち着いてますね、名雪」

「そう?」

 ニュースキャスターは咳払いをすると、原稿を読み始めた。

『ゴホン。ええ…、死亡されたのは相沢祐一君、十七歳という若さでした』

「そうなんだぁ」

「物騒ですね」

「おかあさん、スープが冷めちゃったよ」

「あらあら、大変ですね。すぐに、温めましょう」

 秋子は席を立った。

「それよりも、私、明日は部活で遅くなるから」

 頑張ってね、と秋子は優しく言うと、スープをレンジに入れた。

 どこまでも、のほほんとした親子だった。

 本当に、どこまでも、どこまでものほほんとしていた。

 

 

 

 

「事件は会議室で起こってるのよ!!」

 真琴はグリーンのジャンパーを羽織ながら言うと、[会議室]とプレートに書かれた部屋に入った。

「うわぁ!」

 思わず、目を逸らしたくなるような光景が広がっていた。

 部屋の奥にある机の前には、被害者である相沢祐一が、体中に刃物を刺して、首にロープをかけてブラブラと揺れていたのだ。

「あはは〜。死因はですねぇ」

「キャアッ」

 真琴の背後に、どこからともなく白衣を羽織った佐祐理が現れた。まったくいつもと変わらない、笑顔だった。

「死因はですねぇ」

「そんなことより、いつもあんたの横にいるあの無口な女はどこにいったのよぅ!」

「あはは〜。今回は別行動なんですよ〜。それで、死因はですね〜」

 真琴は懐から警察手帳を取り出した。手帳には『あおしま』と、ひらがなで書かれていた。

「イイですか? ちゃんとメモは取って置いてくださいね。あとあとそれが非常に役に立ちますから」

「あぅ〜…っ。ネタバレしないでよぅ!!」

「あはは〜。今回も、メインキャラじゃないので、コレくらいは許可してもらってるんですよ〜」

「そんなことって!?」

「――――なんて、実弾(現金)を打ち込めば一発ですよ〜」

「あぅ〜っ。伏字だから誰だかわかんないわよぅ」

 気にしないでください、と笑顔で切り返す佐祐理。秋子に負けず劣らずポーカーフェイスであった。

「それにしても、遅いですね」

 人指し指を唇にあて、佐祐理は首を傾げた。

「まだ、誰か来るの……」

 部屋の中を見回しながら、真琴は呟いた。部屋の中には真琴、佐祐理、それとサングラスに白衣といういでたちの男が五人しかいない。

 部屋の奥にある机の前には、被害者である相沢祐一が、体中に刃物を刺して、首にロープをかけてまだブラブラと揺れていた。

「無様……」

「キャアッ」

 真琴の背後に、またしても誰かが突如として現れた。

「………二代目は……。マッポの手先…?」

「台詞くらい覚えなさいよッ!!」

 真琴は振り向くと、ヨーヨーを構えたまま固まっている舞を怒鳴りつけた。舞は、もちろん制服姿だ。しかし、いつもの制服とは違う。セーラー服と呼ばれる部類の制服を着ていた。

「まったく。あと何人なのよぅ」

「まあ、そのうち揃うと思いますので、死因を言っておきましょうか」

 佐祐理は男から一切れの紙片を受け取ると、読み始めた。

「ええ〜っとですね。死因は、刺殺に撲殺、絞殺に黙殺、封殺、落札。さらには毒を盛られたり、窒息したり、溺れたりもしちゃってますね」

「……見れば、わかる」

「あはは〜。それもそうですね〜」

「チョット!! なにも疑問に思わないの!?」

 真琴が、二人のやり取りに堪りかねて大声を上げた。

「何がですか?」

「……凶器がそのままだから、見ればわかる」

「そうじゃなくてッ! だいたい、黙殺に、封殺、落札って、ワケわかんないわよぅ!」

「………。あはは〜。佐祐理は他人とはズレた人ですから、そこらへんはよくわからなかったです」

「そんなの、理由になんないわよぅ!!」

 真琴は頭を抑えた。

(祐一ってば、いつもこんなに激しいボケにツっ込みを入れていたなんて……)

 ちょっぴり同情なんかした真琴であった。

「手順はですね」

 感慨に耽っている真琴を押しのけ、佐祐理は再び口を開いた。

「この状況で、手順とかは関係あるの?」

 あるんですよ、と佐祐理は言ったが、その表情は依然として笑顔なため、信用度は低い。

「え〜っと、手順は、埋められて殺されて犯されちゃってます」

「ハァ!?」

 先ほどまでの死因の説明はなんだったの、と真琴はツっ込みたかったが、それは叶わなかった。

「ん〜、猟奇的な手順ですねー」

 秋子がどこからともなく現れたのだ。自転車(ママチャリ)に乗って。もちろん、真っ黒のスーツを着用している。

「こ、ココって三階……」

 真琴が素朴な疑問を口にするが、秋子は黙殺した。

「それでは、解決編に…」

「ちょっとまったぁ!!」

 突如として、部屋の窓ガラスが割れて、何者かが入ってきた。

「まぁ、いいんだけどね。ちょっと、気になることがあってね」

 そう言いながら、四人に近づいてきたのは、美坂香里だった。チューリップ帽子にどてらなんかも羽織ったりしている。

「はぁい、ちょっとごめんなさいねー」

 サングラスの男たちを押しのけながら、香里は祐一をまじまじと観察し始めた。

 そして、ふと、気がついた。

 机の影で蠢いている影に。

「誰?」

 香里は手を伸ばして、その“何か”を掴むと、引っ張った。

「うぐぅ」

「あらあら」

 香里が掴んだのは、あゆの足だった。

 あゆは、大きめのメガネをかけ、青い子供用のスーツに赤い蝶ネクタイをしていた。

「子供は危ないから、早く帰りなさい」

「うぐぅ。ボクはこう見えても高校生だよ!」

「そうは言われても、どっかの少年誌に出てくる主人公じゃないんだから……」

 香里は優しく言うと、あゆを廊下へと連れて行った。

「じゃあね。小さな探偵さん」

 閉められた扉を前に、あゆは、

「うぐぅ」

 

 

 

 

「私、バイクの免許なんて持ってないよ〜」

 玄関先に置いてあるベスパ(オートバイ)の前で悩んでいるのは、水瀬名雪だった。もちろん、服装は例のスタイルだ。帽子だって、忘れてはいない。

 スタイルはバッチリである。これで、あとはベスパ(オートバイ)に乗って、例のBGMをバックに疾走すれば完璧である。パパママたちが若いときに一度は憧れたあの探偵の復活!! なのだが、

「だから、私はバイクなんて運転できないよ〜」

 当の本人が乗り気でない。

 これではいけない。

 場面展開をしてみましょう。

 

 

 

 

 ビ――――――――ィ!!

 お世辞にも、静かとはいえないモーター音で疾走するベスパ(オートバイ)。それに乗るのは、

「ちょ、ちょっとぉ!!」

 情けない声を上げ続ける名雪であった。

 もとろん、BGMは流れている。

 これで、髪がアフロなら完璧な……。

「それだけは、いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 ドップラー効果を残しつつ、名雪はものみの丘へと向かっていった。

 

 

 

 

「犯人が分かったよ!!」

 そのころあゆは、女子トイレで証拠品を見つけていた。

 事件とは、いつも関係ない場所に証拠品が落ちたりしているのもなのだ。

 もちろん、あゆがそんなことを知っているわけがない。証拠品を見つけたのはたまたまで、ある。

 お約束だが、証拠品は黒塗りで見えない。

「さぁ、早く媒介を見つけて、犯人を知らせないと!!」

 この探偵、人の力を借りないと推理を皆に披露できない、結構面倒くさい探偵なのだ。まぁ、外見が小学生だから仕方がないのだが。

 

 

 

 

「そこの暴走オートバイ! 止まりなさいっ!!」

 この状況を一番楽しんでいるのは、案外、栞なのかもしれない。

 いや、パイプを咥えてあの車椅子自動車を運転しながら笑っているのだから、楽しんでいるのは間違いない。少なくとも、今、栞の前方を爆走している彼女よりは、この状況、配役を楽しんでいるといえた。

 栞の前方をベスパ(オートバイ)で爆走しているのはもちろん、

「私は運転できないっていったのに〜」

 名雪である。

 ものみの丘へと向かう途中、買い物に出ていた栞に見つかり、その暴走っぷりを見咎められたのだ。

「こらー! 止まりなさい!!」

 栞が、あと十年早く生まれていたら、道行く人々と同じように名雪に羨望の眼差しを向けていただろうに。

 それはさておき、このままこの二人のおっかけっこが続けば、行き着く先は、某市立某高校である。

 なぜだか知らないが、行き着く先は、あの現場。

「止まりなさぁーい!!」

「止まれないから、困ってるんだよー」

 二人の声が、いつの間にか現れた夕日にこだました。

 

 

 

 

「えぇ〜っと、何かいい人材はいないかな〜」

 あゆは、会議室の前をせわしなく行き来している人たちを眺めながら、例のキック力が増強されるシューズの威力を最大にまで引き上げた。

 そのとき、目の前を筋肉隆々の男が通り過ぎた。この高校の体育教師(もちろん、緑のジャージ姿)であるが、モチロンあゆはそんなことを知らない。

「見つけたぁ!!」

 あゆは、足元に用意していたゴルフボールを、力一杯蹴り飛ばした。

 そう、力一杯、蹴り飛ばしたのだ。

 そしてボールは、

 ――――メキャ!!

 という、奇妙な音を立てて、体育教師の喉仏にめり込んだ。

「――――――ッ」

 体育教師(緑のジャージ姿)は、自分の身に何が起こったかもわからないまま、前のめりに倒れた。

 その時、

「しまったぁ!!」

 何者かの大声と共に、会議室のドアが勢いよく開いた。

「キャアッ!」

 ドアの前に座っていたあゆは、思いっきり吹き飛んで、体育教師(緑のジャージ姿)に折り重なるようにして倒れた。

「あっ。ごめんね」

 ドアから顔を出したのは、香里だった。

 香里はしきりに頭を掻きながら、走り去ってしまった。

 あとに残されたあゆは、

「うぐぅ。鼻が痛いよ……」

 

 

 

 

 おっかけっこはまだ続いていた。

「止まりなさーい!!」

「止まれるんなら、もう止まってるよ〜」

 某市立某高校は、目の前だった。

 役者は、揃いつつある。

 

 

 

 

「こ、これはっ」

 美汐は、被害者の足元からある物を見つけていた。

 彼女は警視庁から特別に派遣された、監察官だった。

 その彼女が、とある物を見つけた。

「これが……」

「ねーねー」

「?」

 美汐は、服の裾を引っ張られる感触で、我を取り戻した。

「ちょっと、イイかな〜?」

 服の裾を引っ張っていたのは、いつのまにか忍び込んだあゆだった。

「はぁ…、別にかまいませんけど」

 美汐は突如として現れた小学生を不振に思いながらも、取り合えず、目線をあゆの高さまで合わせた。

「えぇ〜っと、ソレって、どこで見つけたの?」

 いきなり核心を突いてきた質問だった。

「………。こ、コレはですねぇ……」

 美汐は、内心の動揺を隠そうとするが、どうしても、ぎこちない動きになってしまう。

 あゆのメガネが、キラーンと光った。

「それ、もしかして、祐一くんの足元に落ちてたんじゃないの?」

 美汐のバックに、ゴシック体(しかも太いヤツ)で、ギクッ!! という文字が現れた。

「そう、なんだね」

「そう、です……」

 この小学生がどこまで知っているかは分からないが、取り合えず美汐は正直に頷いておいた。

「これで、分かったよ……」

 小学生の呟きを、美汐は聞き逃さなかった。

 

 

 

 

「お、重い……」

 一旦あゆは、廊下に出ると、倒れている体育教師(緑のジャージ姿)の上半身を何とか起こし、会議室のドアの真正面に座らせた。

 体育教師(緑のジャージ姿)の首は、イイ感じにカックンカックン揺れていたりなんかした。

「コレで、ヨシ」

 あゆは、体育教師(緑のジャージ姿)を廊下の真ん中に座らせると、会議室のドアを開け放った。そして、

『チョット待ったぁ!!』

 蝶ネクタイに内蔵されているボイスチェンジャーを使い、男の声で喋った。

「曲者っ!!」

 この声に一番初めに反応した舞は、間髪いれずに、手に持っていたヨーヨーを投げた。スーパーヨーヨーでいうなら、フォワード・パスの要領だ。しかし、射程は半端じゃない。

 なんといっても、全盛期、あのヨーヨーは5メートル以上飛んでいたのだ。

 そのヨーヨーは、あゆの頭上を通り越し、ドアの真正面に座っていた体育教師(緑のジャージ姿)の顔面にクリティカル・ヒットした。

 もし、体育教師(緑のジャージ姿)が生きていたら、確実に死んでいたであろう威力だ。しかしながら、体育教師(緑のジャージ姿)はすでに息絶えていた。

「え、えっ!?」

 あゆは、いまいち状況が把握できなかった。

 ドアを開けたら、いきなり何かが自分の頭上を通り過ぎ、また戻っていった。

 それくらいしか分からなかった。でもそれで、十分だった。自分の身体は見たところ無事なのだから。

 しかし、無事でないモノもあった。

「…………」

 舞は、無言でソレを見つめていた。

「あらあら」

 秋子は、困ったわね、と頬に手を添えていた。

「あはは〜」

 佐祐理は、いつもと変わらない笑顔だった。

「…これは……」

 眉間に皺を寄せているのは、美汐。

「なんか……、見たところ首の骨が、非常にイイ感じの向きに曲がってるわね」

 真琴は、うわぁー、と引いていた。

「な、なになに?」

 あゆは、いまいち状況を理解していなかったが、秋子に促され、後ろを顧みた。そして、

「キャアーッ」

 あゆの後ろには、首が無い、正確には、首が後ろに完全に折れてしまい、正面からは首が見えなくなってしまった体育教師(緑のジャージ姿)がいた。

「こ、これは……?」

 あゆは狼狽した。もちろん、一番初めにこの体育教師(緑のジャージ姿)を死に至らしめたのは、あゆなのだが、本人に自覚は無い。

「さ、殺人事件だよ」

 あゆは正面を見た。

「犯人は、明らかじゃないッ!!」

 真琴は得意気に、ビシッと舞を指差した。

「ゲンコー犯よッ」

 真琴はジャケットの内側から手錠を、出せなかった。

「あははー。これは、密室殺人ですよ」

 佐祐理が、真琴の手を押さえていたのだ。

「何するのよぅ!?」

「だから、コレは密室殺人ですよ」

 相変わらずの笑顔で、佐祐理は真琴に詰め寄った。

「あ、あぅ〜…」

 真琴は、視線で秋子などに助けを求めたが、

「連続殺人ですね」

 秋子は楽しそうに笑っている。

「犯人は誰でしょう?」

 美汐は眉間に皺を寄せて、頷いている。

「……頑張るっス」

「なにをよ!?」

 舞は小さくガッツポーズを決めている。それに対して真琴は蹴りでツっ込んだ。

「……痛いっス」

 どこのノーテンキ天使なんだか、と真琴は首を傾げた。

「コレで分かりましたか」

 佐祐理は、真琴の肩を掴んだ。相変わらず、怖いくらいの笑顔である。

「この世界での全ては、イ○スでもなければ、○ーマ法王でもありません。ましてや仏○でもないんです。――――なんて論外です。この世界では、私が全てなんですよ」

 こんな危ないことを言うときですら、佐祐理はいつもと変わらない笑顔である。

「………………」

 この人は、危険だ。

 真琴は本能で察知した。この人は、危険だ、逆らうな、と。

「ガダル・カナル島は燃えているか!?」

 佐祐理は天を指差した。

「………何?」

 真琴は皆を見渡すが、皆は視線を泳がすばかりだった。

「さて、そろそろ役者が揃う頃ですね」

 佐祐理は腕時計を見て、呟いた。そして、そのとき。

 ビ――――――――ィ!!

「!?」

 皆が音に驚いている中、佐祐理だけは、ジャスト、と指を鳴らした。

 

 

 

 

 某市立某高等学校の構内にベスパ(オートバイ)の音が響く少し前。

「待ちなさぁ――――い」

 エンジンを搭載した車椅子としか形容できないような車で、栞は相変わらず、名雪を追いかけていた。

「待ちたいけど、待てないんだよー」

 名雪は、帽子が飛ばないように左手で抑えながら、右手でブレーキペダルを握り締める。

 しかし、ベスパ(オートバイ)が止まることはない。

「なんでぇー!?」

 名雪は何度も叫んだが、その問いに答えられる者は、某市立某高等学校の会議室にしかいない。

 そして、その某市立某高等学校は目と鼻の先まで迫っていた。

 舞台に役者が揃うのは、時間の問題だった。

 

 



 

 

 

 

 

「揃いましたね」

 佐祐理は、妖しげな笑みを浮かべた。

「これで、最終幕の、緞帳が上げられます」

 佐祐理の後ろから、突風が吹き荒ぶ。後ろ髪が大きく舞い上がり、顔の影が一層濃くなった。

「さぁ、幕開けです」

 ビ――――――――ィ!!

 佐祐理の声に被るように、ベスパ(オートバイ)のお世辞にも、静かとはいえないモーター音が会議室の前を通り過ぎていった。

「――エ?」

 通り過ぎていってしまったのだ。

「どうゆーことよ?」

 真琴がジト目で佐祐理を見たが、佐祐理は余裕の笑顔である。

「コレで、イイでしょう」

 佐祐理は指を鳴らした。

 パチンッ。

 それだけで、この世界というのは変わってしまうのだった。

「こ、ココは?」

「アレ? なんでおかあさんがいるの?」

 先ほど通り過ぎてしまったはずの二人が、突如として会議室の中に姿を現したのだ。

「これで、役者は揃いました」

 佐祐理は辺りを見回した。もう、誰も口を開かない。名雪と栞だけが、まだ状況を掴め切れていないため、キョロキョロと視線を泳がせている。

「んんー」

 それまで黙っていた秋子が、いきなり口を開いた。

「それでは、照明さん。お願いします」

 ス――――ッ、と照明が落ちる。もちろん、秋子の周りだけは光が残ってはいるが。

「んんー。この連続殺人事件は、関連性がまったくない様に見えて、実は…………ないんです」

 世界のどこかで、誰かがコケた。

(ねぇ、なんで動いたらいけないの?)

 真琴が、ヒソヒソ声で美汐に訊いた。

(なんでも、です)

(そうだよ。お約束なんだよ)

 美汐の横にいたあゆまで、同意した。

(とにかく、終わるまでは動けないんだよ)

 名雪はどこか嬉しそうだ。自分の身内が活躍するのは、やはり嬉しいものなのだ。

(それにしても、少しつらいですねー)

 あははー、と笑ったまま固まっている佐祐理。少しどころか、かなり不気味だった。

「さて、あなたたちはこのあからさまで不可解極まりない事件をどう思われますか?」

 秋子の独壇場は続くらしい。

(………長い)

 舞が、堪え切れないといった声を出した。

(そういえば、お姉ちゃんの姿が見えません)

(さっき、頭を掻きながらどこかに走って行ったよ)

(そうなんですか。もう、終わりが近いのに、どこに行ったんでしょう?)

(心配いりませんよ)

 あゆと栞に背を向けて固まっている佐祐理が、二人に背を向けたまま喋りだした。

(彼女には重大な任務を与えておきましたから)

 そうなんですか、と二人は頷いた。顔は見えないが、きっと笑ったままなんだろうなと思うと、背筋が寒くなる二人だった。

「さて、そろそろ解決編に移りましょうか。水瀬秋子でした」

 照明が、残っていたほんの少しの部分すら消えてしまった。

 

 

 

 

「分かったわ! 犯人が!!」

 香里は、祐一の机の中から一切れの紙片を取り出すと、大きく頷いた。

「さぁ、これで証拠は全て揃ったわ」

 香里は走り出した。

「相沢君、不本意ながら仇は取ってあげるわ」

 不本意ながらとはなんだ!? という声が聞こえた気がしたが、香里は頭を振ると、さらに速力を上げた。

 

 

 

 

「さぁ、最終章の幕開けです」

 佐祐理はあははー、と笑ったまま場を仕切っていた。

 もう、誰も口答えなんかしなかった(はじめからしていなかったが)。

「んんー。犯人は、あなたです」

「現場の人間はどうなってもイイっていうの!?」

「マッポの……」

「真実は、いつも一つしかないんだよ!」

「ワトソン君、この事件は、思ったよりも早く決着がつくかもしれないね」

「すみません、私はワトソンではなく、検死官という設定なのですが…」

「えっと、この役のキメ台詞ってなんなのー?」

 思い思いの台詞を言っている中で、名雪だけが首を傾げていた。

 そして、名雪だけが気づいた。

「おかあさん! 今、犯人が分かったって…」

「あらあら、みなさんまだご存知じゃなかったんですか?」

 秋子は頬に手を当てたまま、知らなかったわ、と言った。

「名雪、これくらいの事件で犯人が分からないなんて、探偵失格ですよ」

「そんなことはどうでもいいんだよ、おかあさん! 早く、祐一をこんな目に合わせたにっくき犯人を教えてよ!!」

「朝とずいぶん態度が違いますね、名雪。朝はスープの方を気にしていたのに」

「だって、乗りかかった船だもん」

 そうですか、と秋子は頷くと、

「でも、謎解きは彼女に譲りましょう」

 と、会議室のドアを開けた。

 飛び込んできたのは、

「お姉ちゃん!!」

 こと、美坂香里だった。

「犯人が、分かったわ」

 香里は、会議室の机の真ん中まで、歩いていった。

「これが、その証拠よ!!」

 香里は懐から、一切れの紙片を取り出すと、

「犯人は……」

 深呼吸をした。

「犯人は――」

「手を挙げてください」

 佐祐理が突如として、香里の手の中にある紙切れを奪った。

「さぁ、犯人の人は手を挙げてください。あんまり、佐祐理を待たせないでくださいね」

 あははー、と笑いながらも、その手の中にはちゃっかりSTIシリーズのオートマティックハンドガンが握られている。

「さあ、犯人の人は……?」

 佐祐理はゆっくりと、ハンドガンのスライドを閉じてチェンバーに1発送り込んだ。

 そのとき、

「俺だ……」

 ドアの端のほうからゆっくりと出てきたのは、

「北川君!!」

「北川くんッ!!」

「祐一さんと名雪のクラスメイトですね」

「おねえちゃんのクラスの人!」

「相沢さんのお友達」

「祐一の悪友!!」

「……知らない」

「あははー、佐祐理の知らない人ですねー」

 出てきたのは、北川潤だった。

「すまん、みんな……」

 北川は、すまなさそうに眼を伏せていた。

「彼方だけじゃないですね」

「エッ?!」

 しかし佐祐理は北川に詰め寄ると、

「佐祐理は知っているんですよ」

「な、何をだよ!!」

 動揺という言葉を身体中で表現しながら、北川はシラを切ろうと頑張った。

「佐祐理は、知っているんですよ」

 手に持ったハンドガンを北川のこめかみに当てると、佐祐理は、

「あははー」

 と笑った。

「ひいぃッ!!」

「あはは〜」

 佐祐理の笑い方が微妙に、変わった。

「分かりましたぁ!! 言います! 言いますからぁ!!」

 北川は、何かに憑りつかれたかのように、ひたすら頷き始めた。

「久瀬と、斉藤ですッ!! あの二人も、関わってます!!」

 はじめからそう言えばいいんですよ、と言うと、佐祐理はハンドガンの引き金を引いた。

 

 バアァンッ!!

 

 ひどく渇いた音が、会議室に響いた。

「な、何てことするんですか!?」

 栞が佐祐理に掴み掛かった。

「北川君!!」

「北川くん!!」

 香里と名雪が北川を抱き起こすが、北川はすでに眉間に穴を開けて、息絶えていた。

「殺すなんて、酷いじゃないですか!」

 栞は、佐祐理の襟首を掴もうとして、

「………悪は滅んだ」

 舞に、引き剥がされた。

「そうですよ。後は、二人です」

 美汐も、いつの間にか、手にサブマシンガンを持っていた。

「ちゃっちゃと終わらせて、肉まん食べに行こ!」

 真琴も、ショットガンを振り回していた。

「これって……」

 栞は、香里を見た。

「仕方ないわね」

 香里の手にも、リボルバが握られている。

「もう、――――の脳みそも限界みたいだし」

「そうだね。いい加減に収集をつけないと、またいい加減なシリーズ物になっちゃいそうだし」

「水瀬先輩まで!?」

 栞だけが、蚊帳の外だったのだ。

 全ては、たった今仕組まれたものだったのだ。

 もう、――――にとってもこの状況はキツイのだ。

「それでは、行きましょうか」

 肩にガトリング・ガンを担いだ秋子が、皆を見渡した。

「案内は、任せてよッ」

 某・小学生の姿をした高校生も持っている、追跡機能がついたメガネをあゆは振り回している。地で、あゆは小学生だった。

「……狩りの、始まり」

 舞は、ヨーヨーを構えた。

 もはや、何の集団かも分からないモノが出来上がった。かろうじて、一部の人間が元の作品を残していたが、大半の人々は、すごくわけの分からない人たちだった。

 

 

 

 

 かくして、某市立某高校は戦場と化した。

 たった二人の人間を捕らえるために、銃弾が飛び交い、炸裂した。

「……悪は滅んだ」

 まさに、そうだった。

 動機も分からないまま、この事件は幕を閉じることとなるわけだが……

 

 

 

 

 エンディングテーマ

 〜思い出の夢〜

 

 

 夢を観ようよ 刻(とき)を越えて

 夢は観れないなんて ただそれは

 夢を 観ないようにしてるだけ

 夢を観ようよ

 思い出の夢を……

 

 思い出してみよう 昨日のことを

 思い出したくないなら それでもいいさ

 振り返らなくとも 道はできてる

 自分が進んできた分だけ 道はできてる

 それでも心配なら 振り返ればいい 見えるのはきっと

 イイ思い出――

 

 今までの過ちは 消せやしない

 それでも 思い出せば

 それはきっと

 イイ思い出♪

                

                作詞 クルっち。

                作曲 募集(MIDIとかでもイイから、誰か作ってくださいな)

 

 

『あゆ的角度から見た今回の事件』

 今回の事件は、祐一くんばっかりモテたのが気に食わなかった三人の男性キャラ(二人の顔は知らないけど…)の復習だったんだって。あ、漢字が間違ってる! うぐぅ、消しゴムが使えないから、このままでいいや。えっと、取り合えず、ふくしゅうは、こっちの『復讐』だよッ!

 それで、この三人が協力して、祐一くんを偽者の……、あれ? にせものも違う! うぐぅ、『偽物』はこっちだよッ! それで、その偽物のラヴレターで祐一くんを呼び出して、三人で、刺殺に撲殺、絞殺に黙殺、封殺、落札。さらには毒を盛ったり、窒息させたり、溺れさせたりもしたりしたんだよ。それでもって、埋めて、殺して、犯したんだ。酷いよねー。

 それでボクたちは祐一くんを生き返らせるために、ある人に会いに行くことになったんだよ。

 そのある人ととは、『あの人』なんだよッ!!

 なんでも、佐祐理さんって人が言うには、「あははー、ちゃんとシナリオ通りでしたし、これからもシナリオ通りでしょう」だって。シナリオって、なんなんだろ?

 えっと、これが、今回の事件の全貌だよッ!

 アレ? なんか、予告みたいなのも混じっちゃったよ。

 

 

 

 

「水瀬秋子でした」

「エッ?! 秋子さん!! どこから?」

 

 

 

 

 〜読めばためになるであろうかも知れない文章〜

 この作品を書くにあたって、私はとある作家さんに謝らねばなりません。

 その作家とは、○道神氏先生です!

 ああ、どうか許してください!! 先生の作品があまりにも面白かったため、つい……。

 ともかく、この作品ネタが古いので、皆様も分からなかった場合は、ご両親に聞くのをお勧めいたします。

 ええっと、エンディングテーマについては、音が付いてないのが寂しいですね……。まぁ、単なる詩として楽しんでいただければ幸いです。

 それでは。

 

 追伸。
 これは、おそらく続きます。

 

 追伸の追伸。
 オリジナルの方も、私は書いておりますので、そちらも是非読んでくださいッ☆

 

 追伸の追伸の追伸。
 できれば、感想なんかもいただければ……

 

 最後の追伸。
 この作品を読んでくださった彼方! 本ッ当に、ありがとうございました。これからも私は、日々精進できるように努力していきますので、彼方もお体を大切に。

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