※諸注意

この小説は、かなりいろんな意味でギリギリの線を越えちゃったり越えなかったりしてますが、まぁ、そんなに気にしないでください。

 

 

 

 

 

妄想の小部屋[今流行の能力者モノ]

〜あははーっな感じでいつの間にやらもうこんなにも進みしかもまったく説明無しでやってきたからこれを読んでいる人はかなりバカな私についてきてくれるかなり心優しい方々ばかりなんだろうななどと常日頃から感謝しています小説DX決定版〜

 

 

 

 

 

 

 夢の終わり

 

 それはいつかは訪れる

 

 それがいつなのか?

 

 誰によってなのか?

 

 なんの前触れもなく、

 

 夢は醒める

 

 それがいつなのか……

 

 誰も、

 

 わからない

 

 しかしそれは、やってくる

 

 何者でもない

 

 自分自身の手によって

 

 夢は

 

 醒める……

 

 

 

 

 香里の背後に回りこんでいた久瀬は、香里を手に持っていたナイフで斬りつける。

「さぁ、兵士がどこまで僧正に食い付けますかな?」

 久瀬の嘲笑が枯れ果てた森に響き渡る。

 ナイフが振り下ろされようとしたその時、

「"Gli Amanti―― 恋人たち(全てを分かち合う覚悟)"!」

 美汐は香里を突き飛ばし、久瀬と対峙した。

「フッ……。咄嗟でのこの判断力、なかなか出来るものではありませんね……」

「くっ」

 ギリギリと押さえつけながら、久瀬は笑みを崩さない。

 美汐はそんな久瀬に嫌悪感も露わに、睨みつける。

「その眼……。そんな眼をしても、戦いでは勝てませんよ」

「そうね」

 背後に回りこんでいた香里が、″La Forza―― 力(全てを燃やす炎)″を発動させ炎を纏った腕を、振りかぶる。

「でも、これで――

「これで、なんです?」

「?!」

 香里の眼前にいたはずの久瀬が、背後から香里にナイフで斬りつけた。

「きゃあッ」

「! そ、そんな……」

 しかし、美汐の目の前にも久瀬はいる。ナイフを"Gli Amanti―― 恋人たち(全てを分かち合う覚悟)"で生じている壁に、突き立てている。

「こ、これは……」

 美汐が困惑し、香里は斬りつけられた肩を抑えながら、異口同音に呻く。

「これくらいで驚いているようでは、張り合いがありませんね」

 ふたりになった久瀬は、まったく同じ仕草で、笑う。

 これこそが、久瀬の能力―― いや、二つ名。

 その存在こそが能力の久瀬は、Shadow・Priest―― 影の僧正。影を自由に操ることの出来る能力。

「まあ、この影たちは数を増やせば増やすほど制御が難しくなるので、せいぜいひとつの命令しか受け入れてはくれませんが」

 久瀬が思わせぶりに笑う。

「そう―― 、たとえば、生贄である金髪でツインテールの少女を連れて来い、などのね」

「!? あ、あなたがぁ!!」

 美汐に、かつてないほどの怒りが漲る。

 コイツだ! コイツが、真琴を!! あの子を!!

「うわぁあああぁあぁぁ!!」

 美汐は、吼え、

「″Il Re Coppa―― 杖の王(神の血を満たし支配者)″!!」

 力任せに、久瀬を押しのけた。

「ほぅ?」

 久瀬の口元に笑みが浮かび、

―――― ッ?!」

 香里はその場に膝をついた。

 これ、は?

 香里が膝をついたのは、久瀬に斬りつけられた傷が痛むからではなく、もっと、別の――

「まさか!?」

 香里は、美汐を睨む。

 その視線に気づいた美汐は、

――

 すまなさそうに眼を伏せただけで、

「あなただけは、許しませんっ!!」

 久瀬に、敵意を剥き出しに、吼えた。

「ハハッ。いいですね、それくらいはしてもらわないと」

 笑う久瀬の背後には、すでに二桁に達しようかという数の影が現れていた。

 影さえあれば、いいのだ。

 久瀬の能力―― その力は、影さえあればそれに自分の意思を与えることが出来る。これを、最強といわずしてなんというか。

 この世界に、いやこの世に影がないところなどない。

 どこにいっても、影は必ず付きまとう。どこにいようとも、影は必ず、そこにあるものなのだ。

 さあ、はじめようか。

 久瀬はすでに準備は出来ている。あとは、美汐の能力の発現を待つだけ。

「はああぁぁぁああぁぁぁッ!!」

 美汐は、まだ辺りに微かだけ残っているエネルギーをかき集める。香里には悪いと思いながらも、彼女からもその力を奪う。

 ……それでも、足りない。

 すでに光りは弱り始めている。辺りを照らす光りの力を弱めてしまっては、こちらが不利になるだけだ。すでにもう追い詰められているというのに、これ以上不利な状況には持っていけない。

 それなら――

「……それなら、自分から奪うだけですっ!」

 美汐は、自らの力、それでさえも注いだ。

 そしてそれは、姿を現した。

 

 聖者殺しの槍――最凶のロンギヌス

 

「ほぅ、それが」

 久瀬は感嘆のため息を漏らした。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 肩で息をしながらも、美汐はその槍を構える。

 禍々しいという以外に形容のしがたいその槍を。

「先ほどまでの洗礼された形を失いましたか……当然ですね」

「……?」

 美汐は眉をしかめる。

 確かにそうだ。先ほど召喚したときのロンギヌスは、シンプルを突き詰めたような形をしていた。ただの槍にしか、見えないはずなのだ。本来のロンギヌスは。

 しかし、コレは――

「……その形。ハハッ、どうやらまだキミは知らないようだね」

 久瀬が見下したような態度をとる。

 それははじめからだったが、今度のはさらに輪をかけたように、非度い。

「知らないのなら、教えてあげましょう。いいですか? そのロンギヌスを召喚するときに自分の力を使った場合は、その召喚者本人の、心の内がその形に大きく反映されるんですよ」

 分かりましたか? と、久瀬はまるで出来の悪い教え子に何かを諭すように云う。

「……その形こそが、キミの心の内というわけだ」

 嘲るように久瀬は云う。

「そんな……そんな――

 美汐は禍々しく黒光りするロンギヌスを握り締める。

 それを見て、久瀬はますます愉快な気分に浸る。

「どうしました? もう戦意喪失ですか」

「そんなこと―― 関係ありません!」

 美汐は、ロンギヌスを握り締めたまま、久瀬に突進する。

 そう、そんなことは関係ない。

 関係ないのだ。ようするに、自分はただ目の前の敵を倒す力が欲しいだけ。

 それがどんなものであれ、自分には関係ないのだ。

「そう思いたければ、好きなようにすればいい……だが、そんなもので」

 この僕を倒せますかな? そう久瀬は眼で美汐を威圧する。

「そんなもの!」

 威圧をものともせず、美汐はロンギヌスを振るう。

 久瀬を守るように立ちはだかる五つの影を、横一文字に切り捨てる。

「殺ッ!」

 影が美汐の背後に回り込めば、美汐は振り返りもせずに槍をただ背後に向かってのばすだけ。

 それだけで、影は霧散していく。

 まるではじめからそんなものは無かったかのように。

 そうだ。相手は影。

 地面にへばり付いている二次元の存在。

「そんなものに、」

 負けるわけにはいかない!

 美汐は槍を振るいながら、ただ突進する。

 威力は、先ほどの比ではない。

 段違いどころではない。こちらの方が、万倍も身体に馴染む。

 まるで身体の一部のように扱える。

 右から遅い来る影が視界に入った瞬間には、その影はすでに槍に貫かれ霧散している。

 予想外の場所から襲い掛かられようとも、視界に入った瞬間には、その敵は槍に切り裂かれている。

 視覚と連動しているかのように、槍は、それを握る腕は縦横無尽に動き回る。

 それが、苦ではない。

 ―― 勝てる!

 確信した。

 この敵は、自分自身の敵ではないと。

「そうかもしれませんね」

 突如、頭上から声が響く。

「ッ!!」

 見上げれば、いままさにナイフで切りつけてくる久瀬が――

―――― ぁぁああああッ!!」

 美汐は槍を突き上げ、

 

 バシュッ!

 

 という音とともに、久瀬は霧散した。

「?!」

「まあ、それは当然のように影です」

 驚く美汐の足元から、さらに久瀬の声が――

「シッ!」

 身体を屈め、槍の柄の部分で久瀬を叩く。

 

 バシュッ!

 

 またしても霧散する久瀬。

「っ!」

「チェスにおいてビショップとは、その機動性を生かし、盤上をかき乱すものとして使用される」

 今度は、右。

 息をする間もなく、美汐は槍を右へと滑らす。

 しかし、今度は空振り。

 そこには、久瀬の影すらいなかった。

「敵陣に切り込むのはポーンの役目ですが、それを手助けするためにひたすら敵を翻弄するのが――

 今度は、

「左ッ!」

「ビショップの役目なんですよ」

 槍が、閃光より疾く、走る。

 

 ガキッ!

 

 捉えた!

 今度は、本物だ! いまはナイフで防がれているが、この程度――

 美汐は目の前の相手を睨む。自身を映したといわれるその槍で、相手を押しながら、相手を睨む。

「そんなナイフくらいでッ」

 このロンギヌスを防げるとでも思って、

「だからまぁ、これくらいは造作も無いことで」

「ッ?!」

 突如、頭上より降りてきたのは、いままさにナイフごと押し切ろうとしている久瀬だった。

「まさか!」

「それも、影です」

 たったいま降りてきた久瀬の持つナイフが、振り下ろされる。

 美汐の持つ、ロンギヌスへと――

 

 スパッ。

 

 呆気ないくらいに、スッパリとロンギヌスは切られた。久瀬が手に持った、一本の何の変哲のないナイフによって。

「あ、」

 美汐が声を上げる間もなく、

「さて、これで終わりですね」

 久瀬がその終わりを告げた。

――――――――

 それっきり、美汐は動かなくなった。

「なっ!」

 それまで傍観を余儀なくされていた香里は、それを見て息を呑む。

 美汐は、その眼には生気は無く虚ろに、身体はすでに停止していた。

―― なにを、」

「なにもしていませんよ」

 香里が問いかけるよりも早く、久瀬は返した。

「?!」

 なにもしていないワケはない! いま、まさに美汐の持つロンギヌスを両断したではないか!?

 香里は、美汐に駆け寄ろうとするが、足に力が入らない。

「なにもしていないのは、本当ですよ。まあ、ロンギヌスが折れる手伝い……みたいなことはしましたが」

 悪びれた様子も無く、久瀬は香里に云う。

 動く気配を見せない美汐の隣にいた久瀬が霧散していく。

「なにを言っているか分からない、といった顔ですね」

 香里に近づきながら、久瀬は楽しそうに笑う。

「そうですね。分かりやすく云うと……。もともと、アレは彼女自身の心の内を映したものだったのですから、それほど長くは保てない。どちらにせよ限界だったのです。僕がそれに干渉するには、彼女の精神に直接なにかをぶつけなければならないんですよ」

 だから、なにもしていないと、久瀬は云う。

「そんな文句が――

 通じるわけが無い!

 香里は足に力を込め、とにかく立とうとする。立ってしまえば、どうってことはない。決してそんなことは無いのだが、ただ立つだけで状況は変わるかもしれない……

 そんな祈るような気持ちで、香里は自分の両足に、それを支える両腕に力を込めるが、

「いまさら立ったところで」

 久瀬がそれを許さなかった。

「くッ」

 久瀬は無情にも、立とうとする香里を押さえつけ、その喉元にナイフを突きつける。

「もう彼女は動けないでしょうから、後は彼方だけですよ」

 久瀬のナイフが、香里の喉元に食い込んでいく。

「……ッ」

 息をするだけで、喉元にナイフが突き刺さりそうで、息が出来ない。

 身動きも出来ない。息も、出来ない。

 終わった、のだろうか?

 漠然と、全ての終わりを見ている気がした。

 その光景は、香里自身が思っていたよりも凄惨なものだった。

 なにも、光りさえも届かない地で皆が、息絶える姿。

 そんなもの……

―― そんな、ものぉ!」

 ナイフが喉元に突きつけられているのも忘れ、香里は叫んだ。

 腕に力を込める。

 身体全体を動かそうとするからいけないんだ、とそのときに気付いた。腕一本なら、こんなにも簡単に動く――

「″Il Regina Coppa―― 杯の女王(多くを受入れし支配者)″!」

 久瀬の腕を掴み、そこに、触れるだけで全てを溶かしてしまうくらいの猛毒を植えつける。

「チッ!!」

 久瀬の舌打ちが、香里の耳元でする。

 ああ、以外にヤツは近くにいたんだと、思う。しかし思うだけで、香里に確認する術は無い。すでに、両目は光りを失い、意識は闇の中へと墜ちていったから……

 

 

「やって、くれましたね」

 たったいま、自分の右腕に猛毒を植え付けて気絶した少女を睨みながら、久瀬は忌々しげに舌を打つ。

 甘く見すぎていた。

 これは事実だ。でなければ、こんな傷など負うわけが無い。

「クソッ! くそ! くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ……クソーッ!!」

 許さない。許すわけにはいかない。

 僧正である自分に、使い捨ての兵士ごときが傷を負わせたこと。なによりそれが気に食わない。

 いますぐ、この少女を八つ裂きにでもしてやろうかという凶暴な衝動が、久瀬の全身を支配していく。

 ―――― そう、しよう。

 久瀬の腕が、気を失っている香里の首に伸びようといた、その瞬間に。

「ッ!!」

 久瀬自身がそれをやめ、素早くその場から離脱した。

 

 スッ……

 

 白い刃が、久瀬の眼前、さっきまで久瀬がいた場所を通り過ぎる。

 何事も無かったかのように通り過ぎたそれだったが、

「"Il Regina Spade―― 剣の女王(殲滅)"か……」

 それがどれだけ危険なものかを、久瀬は知っていた。

「……私が、相手」

 久瀬の真上から、襲い掛かる者――

「川澄、舞ぃ!」

 忌々しげに吐き捨てながら、久瀬は自分に襲い掛かってきた敵を見据える。

 舞は、初撃を躱されるや否や、手に持っていた剣を捻り、足で久瀬の正面―― 自分がいま飛び降りた木を蹴りつけそのまま久瀬へと斬りかかる。

「っう!」

 久瀬はその剣をナイフで受け、

「"Il Re Spade―― 剣の王(断絶)"……」

 舞はそれを容赦なく断絶する。

 自分を守るモノが無くなり、しかし久瀬は冷静だった。

 目の前まで迫る刃、それを持つ舞の手に出来ている小さな影、それに自分の能力をぶつけた。

「?!」

 途端、舞は自分の影に剣を絡め取られてしまい、身動きが取れなくなる。

「……危なかった、ですね。さすがに今回は少々、焦りましたよ」

 ズレたメガネを直しながら、久瀬は肩で息をする。

「……"Il Re Spade―― 剣の王(断絶)"」

 瞬間、舞を縛っていた影が散り散りになる。

「!!」

 これには、さすがの久瀬も驚きを隠せなかった。

「ばっ、バカな! そんなこと……」

「……剣は一本では、無い」

 そう言う舞の手には、手のひらサイズの小さなナイフが握られていた。本来は投擲用にあしらえてあるナイフだが、それに切れ味を持たせることなど、舞には造作も無いことだ。全てを断絶する舞にとって、この程度の拘束は足止めにすらならない。―― いや、いくら舞とて両腕を拘束されてしまえば、それまでだ。断絶するためには剣がいり、それを握り振るう腕がいるのだ。それを拘束されたら……

「……終わり」

 だが、いまは舞の腕を拘束するものなどない。

「くそうぅっ!!」

 久瀬は咆えながら、次々と影を繰り出す。

 だが、そのことごとくを舞は斬り捨て、久瀬との距離を縮める。

 正面から来るなら、縦一文字に。背後から襲い掛かってくるなら、その投擲用のナイフを投げるだけ。

 舞は、屋敷を出るときに、佐祐理の館にあった投擲用のナイフを五本ほど拝借してきたのだ。

「これで、最後」

 久瀬を守るように立ちはだかった影の、その最後の一体を舞は斬り捨てた。

「…………」

 恐ろしい形相で睨んでくる久瀬を、舞は事も無げに見る。

「……これくらいで」

 終わると思うなよ、とでも云うつもりだったのか。しかしその言葉が久瀬の口から出ることは無かった。

「あはは、舞の相手はこの佐祐理ですよ」

 突然の乱入者が、二人の間に割って入った。

「……佐祐、理?」

「倉田さん!」

 眉をしかめ、ワケが分からないといった風の舞とは対照的に、久瀬の顔は晴れやかだった。まるで砂漠でさまよい続けやっとの思いでオアシスにたどり着いた放浪者のようでもあった。

「あははー、舞は佐祐理に任せて、久瀬さんは離脱してください」

「なっ!」

 それは出来ない、と久瀬は云いたかったが、自分では敵わないとすでに久瀬は理解している。

「……クッ! わかり、ました」

 久瀬は、まさに断腸の思い、清水の舞台から飛び降りるほどの思いでその言葉を口にした。

「それじゃあ、舞の相手は佐祐理がしますね」

 佐祐理はステッキを構え、舞と対峙する。

「……佐祐理じゃ、ない」

 舞も、相手が自分の知る佐祐理ではないと分かり、剣を構えなおす。

「行きますよー! ″Il Regina Bastoni―― 杖の女王(媒介を要する支配者)″ッ!!」

 佐祐理はいきなりステッキを振りかぶった。

「ッ!」

 舞が反応するよりも早く、それは振り下ろされ、

 

 ドンッ!!

 

 地面に大穴を穿った。

「……っ」

 爆風に吹き飛ばされ、背中から大木に叩き付けられた舞は、顔を痛みでしかめながら佐祐理を見る。

「あはは、今日は偵察でしたから、コレくらいにしておきますね」

 笑顔の佐祐理は、どこからどう見ても佐祐理だ。でも、違う。

 なにかが決定的に違うのだ。

 おそらく、舞が知る佐祐理と並べてみればそれは一目瞭然なのだろうが、それは出来そうもない。

「…………」

 舞は、そっとポケットに手を忍ばせる。そこには、投擲用のナイフが、まだある。

「ダメだよ、舞。そのナイフはあと一本しかないでしょ」

「!?」

 バレた? いや、はじめから知っていたような口ぶりだ。

 ……まさか、佐祐理ははじめから″Le Stelle―― 星(極眼)″を発動させていたのか?

「今度からは、そのナイフもたくさん持ってこないと。久瀬さんは倒せないよ」

「……」

 無言で睨みつける舞に微笑みひとつ残し、佐祐理はその場から去っていった。

 舞は、追わない。

 それよりもすることがある。

「…………」

 荒地となってしまった地にひとり立ち、舞は、

「今度は、百本は持っていかないと」

 そう、呟いた。

 

 

 真琴は、出口を探していた。

 その闇の中から出たくて。

 誰か、知っている人の笑顔を見たくて。

 出来ることなら、あの人にもう一度頭を撫でてもらいたくて――

「あ、真琴」

 その声が聞こえたとき、真琴は咄嗟に前屈みになり、全力で転がるように跳躍していた。

 

 ズンッ!!

 

 真琴がさっきまでいた場所が、大きく円形に凹む。まるで、上からなにか重いものが圧し掛かってきたかのように。

「……よく、避けたね」

「あ、あぅ」

 声の主は、真琴のよく知るひとだった。……いや、微かに漂わせている雰囲気が違う。

「名雪じゃ……ない」

 真琴の目の前に立つのは、水瀬名雪だった。

「ここは、わたしのホームグラウンドだよ。真琴には、負けないんだから」

 笑顔の名雪は、やはり真琴の知る名雪ではなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、やっとこさ先の展開が決まってきましたので……

 あ、あはは〜


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