DESTINY

〜ver MAGNUS〜

 

 

「…何でこんな事に……」

 目の前にある、小石の集まりを見てオレは小さく呟いた。

「うん、イケるイケる!!」

 向こうは向こうでかなりはしゃいでいる。

 …って言うか、何でオレがこんな目にあわなきゃいけないんだ? オレは何も悪い事してないのに。

 今日の朝飯を台無しにしたのは雷牙だし、彼らのオムレツを最初に食ったのはクルトだし、バッグを漁ったのはビットじゃないか!? 何で三人のせいでオレが戦わなきゃならないんだ!?

『どっかからうまそうな匂いが…』

 …あれ?…最初に匂いに気付いたのってオレだっけ?

『分かったよ、食えばいいんだろ!?』

 …オレって誘惑に負けてる…?

『ファイア!!』

 …一番最初に手を出したのは……オレか!?

「双撞掌底破!!」

「…ん? うわッ!! ちょっとタンマ!!」

 まだ考えがまとまってないっていうのに…第二発目のそれをジャンプで避ける。着地地点の側には問題の三人がいた。

「おい、どうする? 逃げるか?」

 とりあえずビットに尋ねてみる。

「やだね、面倒い」

 …即答ですか。何となく予想はついてたが……。

「とにかく、あんな奴らになめられっぱなしでいるというのも良い気分じゃないしな。マグナス、お前あの四人と戦ってこい」

「え? オレ1人で?…って何で命令してんだよ!?」

「当たり前だろ!? 自分で蒔いた種くらい自分で始末しろ!!」

 え、やっぱオレのせいだったのか?

「ったく、分かったよ。オレがやればいいんだろ?」

 言いながらオレは背中の大剣を抜いた。この剣は死んだ親父の形見で、オレの身長を越える長さというバカでかい剣だが、それ程使いにくいという訳でもない。むしろ使い安いくらいだが、なぜかオレ以外の人間には使えこなせないらしい。オレより力のある雷牙も「重い」とか言って使えなかった。つまりこれはオレだけの剣という訳だ。ちなみにオレはこの剣の事を"マグナスソード"と呼んでいる。三人はこの名前を気に入ってない様だが……何でだ? いい名前じゃないか。

「うっし、行くぜ!!」

 叫びながら、マグナスソードを片手にさっきファラと呼ばれていた女の人の方へと向かって走る。それに対して向こうも構えている。本当は出来れば女の人とは戦いたくなかったんだけど…。

「とおッ!!」

 掛け声と共にジャンプして、空中へと跳ぶ。

「行くぜ!!」

 落下しながらマグナスソードを振り下ろす。もちろん両刃なので、剣の腹の部分を相手に向けてある。さすがに女性に刃を向ける事なんて出来ないよな、漢として……。

「魔神剣!!」

 …って誰だよ、人がカッコよく攻撃しようとしてるのに叫ぶのは!?

 声がした方を横目で見てみる。その先には……なんじゃありゃ? 何かは判らないが真空波が地を這い、もの凄い勢いでこっちへ向かって来ている。何だか危なそうな気がするな。

「よッ!!」

 オレは攻撃の手をそのまま横に薙ぎ、身体ごと真空波に向き直す。

「そりゃあ!」

 マグナスソードを地面に突き刺し、真空波を剣の腹で受けた。

 ズガッ!!

 真空波が、マグナスソードとぶつかり、消える。

「痛てッ!!」

 …なんつぅ威力だ、手が痺れたぞ。

 その真空波が来た方向を見てみる。そこには、さっきのヘソだしルックスの兄ちゃんが立っていた。

「リッド!!」

 ファラって人が叫ぶ。どうやらあのヘソだしの名前らしい。

「お前の相手はオレだ!!」

 リッドって人が剣を構えたまま突っ込んでくる。とりあえず、その攻撃をマグナスソードで受ける。

 カンッ!!

 マグナスソードとリッドの剣がぶつかり、鋭い音が辺りに響く。その時、一瞬力負けをしたのが自分でも分かった。

「なッ!!」

 つ、強い! 力だけなら雷牙に匹敵するか!?

 一歩後ろに下がる。それに合わせて相手も下がった。

「おい!」

 気が付くと、いつの間にかクルト、ビット、雷牙の三人がすぐ側にいた。

「悪い。一人ずつならとにかく、やっぱ四人相手は少し無理みたいだ。お前らも手伝ってくれよ」

 三人に頼んだ。

「ったく、お前はホントに一人じゃ何も出来ないな」

 ビットが鼻をフンッ、と鳴らした。

 余計なお世話だよ。

「まぁ、奴らの実力はさっきの攻撃から分からなくもないな」

 クルトが言いながらリッドを睨み付ける。どうやら彼の強さに気付いたらしい。

「悪いな。じゃ、そう言う事で…」

 四人でリッドの方に近づいていく。向こうも四人で何やら話していた。

「作戦は決まったか?」

 奇襲は、無いとは思うが用心で一応剣は構えている。

「お互いにな」

 リッドがこちらに向き直る。その後ろから三人の男女が顔を出した。

 って…四人!? さっきキールって呼ばれてた人が立ってる!?

「リッド、気を付けろ! さっきのあいつの攻撃は普通じゃなかったぞ!」

 そうだよ、さっきファイアをぶつけたんだよ、あんたに! 何でそんなピンピンしてんだよ!?…凄い回復力(防御力?)だな、おい。慣れてるのか? だとしたら、一体普段どんな人と一緒に旅(もしくは仕事)をしてるんだろう?

「ま、今はそんな事はどうでもいいか…」

 四対四、数は同じでもこっちは男四人、あっちは男女二人ずつ…。

 どう見てもオレ達の方が有利!!…でも、気を付けるのはあのリッドだ。さっきの攻撃はかなり強力だったしなぁ…。

「ま、力で負けたらスピードで勝つ!! よし、行くぜ!!」

 オレはマグナスソードを構えて飛び掛かった。目標は…とりあえずリッドだ。だが…。

「よ〜しッ!」

 リッドの前に人影が現れる。それはさっきのファラって女の人だった。

「なッ!?」

 思いがけない人の登場に急ブレーキを試みる。が、やはり間に合わなかった。

「獅子戦吼!!」

 彼女の手から何かが飛び出してくる。その何かはとてつもなく大きな獅子の形をしていた……、ような気がした。もう少しきちんと見たかったが、一瞬で視界が真っ白になる。

 次の瞬間には身体が宙を舞っていた。

「うわぁ〜!!」

 身動きもロクに取れないまま、

 ダンッ!!

 後ろに立っていた木に激突。背中を強打する。

「って〜、ったく何て技だ!?」

 …って言うか女だと思って油断したオレも悪いんだけどな…。(←言い訳)

 前を見てみる。ファラはかろうじて視界に写る程度。けっこうな距離を飛んで来たみたいだな。

「お〜い、みんな〜!!」

 急いで元の場所まで戻る。そこではすでに戦いが始まっていた。

「ウィンドカッター!!」

「ぐわッ!!」

 雷牙がこっちへ飛んでくる。

「おい、雷牙! 大丈夫か!?」

「あ、あの野郎〜! もう許せねぇ!!」

 …聞いちゃいねーな…って言うか、オレ達負けてんの!?

「魔神剣!!」

 遠くで声がした。そこにいたのはリッドだ。そしてこっちへ向かって来るのは…。

「うわッ、またさっきの技か!?」

 さっきと同じ真空波がこっちへ迫って来る。それをジャンプで避ける。そこへ…、

「裂空斬!!」

 さらに空中で、身体全体を独楽のように回転させた回転斬りを放ちながらリッドが迫ってくる。は、速い!! 何てスピードだ!? こりゃビットくらい疾いんじゃないか!? 

 スピードで勝つなんて言ってた自分の愚かさを思い知る。

 しかし、普段ビットと色々やりあってるだけに、眼には自信がある。

「そこッ!」

 リッドの回転斬りの一瞬の隙をつき、マグナスソードでリッドを弾き飛ばす。

 とりあえず距離を置こうと思い、リッドを見る。その瞬間、彼と目が合った。

 なるほど、オレの相手はあんたって事か! よ〜し、その挑戦受けてやる!!

「反撃行くぜ!! ファイア・ボール!!」

 オレの得意魔法、ファイア・ボール。右手(左でも可)と目の前にいる敵(自分が敵と認識しているならどこにいようが可)のみに意識を集中させて、その一つ一つの威力が通常ファイアの数倍になる火の玉を一気に五つも放つ(数はもちろん変えれる)という大技だ。クルトが言うには上級の魔法、らしい。

 オレにとったらどーってことのない技のひとつだが、威力はお墨付きというやつ。

 オレは自分が常に認識しているモノ達(目に映るものとか自分の身体とか)の中から、リッドと自分の右手のみを残して、他のモノを消していく。こっちのほうが手っ取り早く出来る。

 そして、手の平で思いっきり空を斬る。

 ゴウッ!! 四つの、大の男の頭一つ分くらいの火球が、オレの手の平より弾き出された。

 しかし…。

「甘い!!」

 あっさり避けられた。ま、あの距離からじゃ当たり前か…。

 外れたファイア・ボールはそのまま一直線に…って、あそこにいるのは…。

「危ない!! 避けろ、ビット!!」

「…ん?」

 ずがーーっん!!

 外れたファイア・ボールはそのまま見事にビットに命中する。

「あちゃ〜…」

「マぁ〜グぅ〜ナぁ〜スぅ〜……。貴様、一体オレに何の恨みがある!?」

 黒焦げになったがビットゾンビのように起き上がり、首をキリキリと回転させオレに話し掛けてくる。

「いや、恨みはそれなりにあるが今のはわざとじゃ…」

「何だと!!」

 ビットがオレに向かって矢を放つ。しかも二本同時に。

 なんでも、ビットの弓は"おーぱーつ"とかいうヤツの特別製で、普通の弓とはかなり外見も性能も違うんだと、物知りクルトが言ってたような…ってそんな場合じゃない!!

「ま、待てビット!相手が違うぞ!!」

 一本を避け、一本をマグナスソードで弾いた。

「問答無用!!」

 どうやらかなり怒ってるみたいだ。立て続けに飛んで来るビットの矢を必死で避ける。ってか、当たったら本当に必死だな。

 そうこうしてるうちに、ドンっと背中に何かがぶつかった。

「何だ?」

 オレが慌てて振り向くと、

「誰だ?」

 そこにいたのはクルトだった。

「マグナス、お前戦いの邪魔だ! もっとあっちへ行け!!」

 よく見ると、クルトの前にはさっきの四人の中の、まだ紹介の無い女の子と、青い生物がいた。

 んなことよりも、オレのことを邪魔と言ったな、この男は。

「うるさい! 脇役は脇役らしくもっと端っこで戦え!!」

「誰が脇役だ!! それはお前だろ!! 俺が主人公なんだよ!!」

「何言ってんだ! 主人公はオレだ!!」

「いーや、俺だ!!」

「スプレッド!!」

 女の子が叫ぶ。どうやら彼女は魔法使いの様だ。って事は今のは詠唱が完成したって事で…。

「…え?」

 クルトの表情が固まる。

「まさか…」

 ゴォォ! と言う轟音と共に、オレ達のいる場所のちょうど真下の地面から水柱が立ち…。

「そんなバカな〜!!」

 オレはその水圧によって飛ばされた。

「こなくそ〜!!」

 空中で体勢を直す。そして、

 スタッ!!

 着地、そして決めポーズ。ふっ…決まったな。

「…あ、あり?クルトは……」

 しかし、そこには誰もいなかった。どうやらまたはぐれてしまったらしい。

「くそ、ここどこだよ!? あいつら押されてたからな、早く合流しないと…」

 ザッ……。

 ん?…人の気配?

 今まで何があっても決して手放さなかったマグナスソードを構え直す。

 その剣先に誰かのシルエットが重なる。

 リッドだった。周りには誰もいない。

「まかさ…一対一…? あの人と…?」

 それってもしかしてかなりのピンチなんじゃ…?

「えっと…あの…」

「やっと追い詰めたぜ! オムレツの恨み、今こそ晴らしてやる!」

 お、怒ってる? どうやら言い訳をしてこの戦いを避ける事は出来そうになかった。

「行くぜ!!」

 真正面から突っ込んで来る。…さて、どうしたもんか? 真っ向勝負であんな強い人と戦って勝てる訳ないじゃん! ビットの速さに雷牙のパワー…例えると、雷牙がビット位の速さで攻撃してくるようなもんだからな…こ、怖すぎる。

 ええぃ、うだうだ考えても始まらない!! 避けるのも受けるのも無理なら、攻撃有るのみじゃないか!! それがオレの戦い方だ!!

「うおぉぉ!!」

 リッドが、剣を下段から上段へと振り上げ、斬りかかって来た。

「食らえ、青眼剣!!」

 それに対して、オレは青眼剣を放つ。

 青眼剣とは、ガレット先生から教わった技で、力任せに剣を振り落とすという技だ。簡単なようで難しい、オレの必殺技だ。

 相手の下からの攻撃に対して上から押さえつける感じで、振り下ろす。

 ガチンッ、と言う金属同士のぶつかる音が響き渡る。結果は…。

「ご、互角!?」

 バカな、オレの青眼剣が…。

 そう思った瞬間、目の前にいたリッドって人の姿を見失う。速い!!

「しまっ…」

「虎牙破斬!!」

 声が……上か!?

 オレは、考えるよりも先にそのまま後ろへ飛んだ。

 その瞬間、何かがオレの胸あたりをかする。

「うわッ!!」

 着ていた鎧に切り傷が付く。危ねー、いくら油断したからって鎧着てなかったら怪我じゃすまなかったな。それにしても、オレの最強技、青眼剣が効かないなんて……それって勝ち目がないって事じゃん!

「魔神剣!!」

 あぁ、くそ! 何発打てば気が済むんだ!? せめてあの技だけでもどうにかしないと…ん? 待てよ? さっきからあの真空波は地面を這うように走ってきてるよな?…って事は…そうだ!

「よ〜し、ガイア!!」

 オレは大地系属性の魔法、ガイアを放った。

 これは、原理はよーわからんが、何でも物知りクルトが言うには『大地に流れている気に、自分の気を流し、大地の気を自分の気に同調させ、大地をある程度の範囲(自分の気が届く範囲)だけ、好きな形に変えれる』という、とーっても便利な技だ。

 それを使い自分の目の前に岩壁を作った。

 真空波は岩壁にぶつかり、消滅した。…思った通りだ!

「何!?」

 リッドが慌てふためくのが見えた。

 ニヤリ。チャ〜ンス!

 リッドが一瞬驚いたのを、オレは見逃さなかった。

 オレは剣を上段に構えたまま目を閉じた。

「……」

 上段に構えたまま、二、三歩前へと歩みでて、

「くらえ!」

 目を見開くと気合いと共に、

「スプラッシュ!!」

 振り下ろした。

 剣先が触れた空間が、水面に石を落とした時に出来る波紋のように大きく波打ち、歪んでいく。

「いっけェーーッ!!」

 オレは振り下ろした剣先を素早く返して、重心を右足に置きつつ振り上げた。

 ゴウッ! という轟音が聞こえたかと思うと、歪んだ空間からものすごい勢いで鉄砲水がリッドに襲いかかった。

 水だって、時には鉄をも砕くくらいだからな。かなりの威力に違いない。

「ッ!!」

 鉄砲水は、物凄いスピードでリッドへ迫って行く。

 よし、タイミングピッタリ! さすがにあそこからあれを避ける事は出来ないだろう。

「フレイムウォール!!」

 横からの声。

 その方向に、さっきオレの事をバカにしやがったキールって名前の人が見えた。と、思った次の瞬間、

 ゴォォォ!

 と言う音と共に、リッドの前の地面から炎が沸いて出た。そしてその炎がリッドとオレの放った鉄砲水のあいだを壁のように阻んだ。文字通り炎の壁、フレイムウォールとスプラッシュが衝突、そのまま鉄砲水はその炎の壁で蒸発、相殺されてしまった。

「ウ、ウソ…」

 何だよあれ、そんなのありか! 反則だ、レッドカードだ、退場だぁ〜!!

「やい、この優男、オレとその人との戦いを邪魔するなよ!」

 一言文句を言ってやる。

「大丈夫か、リッド?」

「あぁ、助かったぜ、キール」

 だ〜、何を勝手に友情してんだ! ってそれよりも、

「無視すな〜!!」

「お〜い、マグナ〜ス!!」

 誰かに呼ばれたような気がする。その方向から雷牙が走ってきた。

「一人こっちへ向かったと思ったけど…大丈夫か?」

「おう、大丈夫って言えば大丈夫だ」

 でも、もう少しだったのにな〜。ま、チャンスはいくらでもあるってか? 雷牙も来た事だし、次は当ててみせる!

「よ〜し、行くぜ、キール! 足引っぱんなよ」

「うるさい!!」

 向こうのやる気も満々のようだった。

「よっしゃ、こっちも行くぜ、マグナス!!」

「おう…って」

 ちょっと待てよ? これってもしかして二対二? オレと雷牙対あの二人?

「同じ手は二度と通用しないぜ!!」

 オレと雷牙でタッグ戦? それって大ピンチじゃん!?

 

To Be Continued

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送