わらしべ往人

 

 

 太陽が元気に輝いていた。

蝉もその雰囲気を損なわぬようにと、力の限り鳴く。五月蝿いことこの上ない。

加えて、容赦のない真夏の日差しが頭上から降り注ぐ。

その日差しを受ける額からは、汗がぽたりと滴り落ちた。

まるで、俺のみを狙ったかのように、見事なほど日差しが強い。

ここまで日差しが強ければ、当然のように気温もすごく高い。

ここまで暑ければ、夏なのに黒いシャツなんかを装備している俺は人の倍暑いわけで。

男。国崎往人。年齢不詳。

只今非常に厳しい状態。

しかもこのままだと、もれなく路上で倒れると言う特典まで付いてくる。

あまりの暑さのあまり路上に倒れる一人の成人男性。

その光景は想像するにも情けなさ過ぎた。

「・・・断じて倒れるわけにはいかん」

だが、じんわりとした暑さが意識を虚ろなものへと変えていく。

厄介になっている神尾家に少しでも還元するために稼ぎに出たと言う現実すら忘れそうになる。

そのとき、ふと頭に浮かんだ光景。

新聞の一面。職なし成人男性。金を求めて暑さのあまり路上転倒。

恐ろしい光景だった。そんなことになったら末代までの恥決定。

もっとも、俺が末代の可能性もなきにしもあらずなのだが・・・。

 どちらにせよ稼ぎゼロというのは、非常にマズイ。

下手したら、今日は御飯を食べられなくなるかもしれない。

それだけは何が何でも避けなければならないゆゆしき問題だ。

何とかして金を手に入れなくてはならない。

 とりあえずは堤防沿いを歩いてみる。

海からむぁっと湿気を帯びた風が吹いて、熱気がよけいに増す。

「あぢぃ・・・」

すると目の端に何かが映った。

それはキラリと金属の光を発している。

金属=金=納める=飯にありつける+この街を出る資金。

俺はキュピーンと目を光らせながら、その物の下まで全力で走りよる。

頭から滑り込むというダイナミックなアクションを披露しながら、がしっとキーアイテムをゲットする。

そのまま天高く腕を振り上げ、

「よっしゃあーーっ」

その場のノリで叫んでみる。

「ぴこっ?」

「・・・ぴこっ??」

すぐ横には首をかしげるポテトが座っていた。

「・・・・・・」

その場のノリはすごく恥ずかしかった。これこそ末代までの恥だろう。

末代までの恥を阻止するにはどうすればいいか。

とりあえず、目撃者は抹殺せねばならない。

「おい、ポテト。人形劇を見せてやろう。子供は無料。大人は200円だ」

「ぴこっ?」

「大丈夫。犬はペットだから無料だ」

「ぴこぴこっ」

何気に会話が通じているのが非常に悲しい。

だが、一瞬の油断が命取りだ。

俺はポテトに向かってぐうっと手を伸ばす。

ぴこぴことよってきたポテトの首根っこをつまむとぴこと鳴く。

だが、そんなぴこぴことした抵抗はぴこな俺には断じてぴこぴこだ。

青く輝く海へと、俺はくるりと向きを変える。

「目撃者は抹殺するのが里の掟だ。悪く思うな」

「ぴっぴこぴこっ!?」

「ちなみに賄賂は受け付けない」

「ぴこ〜・・・」

残念そうに骨を後ろに隠す。どこから出したのかはきわめて謎だが。

「達者でな」

目標ロックオン。角度48度。距離200メートル。目標物、海。

俺はポテトをつまんだ腕をぐうっと後ろにそらすと

「海の藻屑となれ――――っ」思いっきりぶん投げた。

「ぴこ――――っ」響く悲鳴。

白い謎の毛玉生物は見事なまでの放物線を描いて、海へと落ちた。

ポテト投げ世界新記録も夢ではない飛距離だった。

おそらく明日には、世界中から引っ張りだこで貧乏暇無しの状態になるだろう。

だがそれは明日から、今日の戦利品を確認しなくてはならない。

俺は例の物を握っている手のひらを開いた。

すると、太陽の光を反射して輝く。

ビーダマがあった。

――なんでやねん。

俺は大地にひれ伏した。

 

 

 ――っきろーーっ。

声が聞こえてくる。

ものすごく五月蝿いのだが、内容が聞き取れない。

ていうか、内容などどうでもいい、なんか意識がはっきりしない。

「おきろーーっ。国崎往人ーーーーっ」

はぁ?起きろ?

国崎往人は俺で、その国崎往人は起きなければならないようだが、俺は既に起きている。

その証拠に目の前は真っ暗だ。

――はて、真っ暗という事はすなわち目をつぶっている可能性が無きにしも非ず。

結論。めんどくさいので無視。

「むうーーーーっ」

無視。

たったったったったっ。

無視無視。

ぴたっ。ダダダダダダダダッ。そして、音が消えた。

無視無視む――「とりゃああーーーっ」

飛び蹴りが鳩尾にジャストミート。重力までも味方に加えた会心の一撃。

「ぐぼあっ」かっこよく叫ぶ俺。そして、そのまま地面を転がっていく。

しばらくは、腹を抱えてうずくまった。

その腹を突き抜けるような鈍い痛みでようやく意識が覚醒してくる。

目を開けると、手からころりとビーダマが転げ落ちた。

見るのも虚しい、過ぎ去った過去だった。

過ぎ去った過去をとりあえずポケットに入れると、先ほど見事な蹴りを入れてくれたやつを見る。

腰ほどにまで下がったツインテールの髪。

「なんと、セーラー○ーンがそこにいた」

「だれがだーーっ」

ずごっ。

再び鳩尾に蹴りが炸裂する。

しばらく俺は地面にうずくまると、無言でセー○ームーン・・・もとい、みちるに近づく。

「な、なによーーっ」

ぶわんと、唸りを上げて飛んでくる回し蹴りを避けると、みちるの後頭部めがけて腕を振り下ろす。

どごっ。

「うにょばあっ」

能天気そうな悲鳴があたりに響き渡った。

「ううっ。星が見えるぅ・・・」

「やったな、今のうちに願い事を言えば叶うぞ」

「えっと、願い事願い事――って、そんなわけあるかぁーーっ。バカ往人――っ」

また、俊敏な蹴りが飛んでくる。だが早々何度も喰らうような俺ではない。

「ふっ、おまえの動きは見切ったぜ」

「・・・果し合い?」

突如としてその声。

あきらかにみちるのものではない。

「あーーっ。美凪だあっ」

どこからともなく現れた美凪は俺達に向かってぺこりと一礼する。

「・・・どうも・・・遠野美凪です」

いまさら、何故に自己紹介をする?

そして、あっと気づいたように一言付け加える。

「・・・ちなみに独身です」

誰もそんなことは聞いていない。

依然として遠野ワールドは健在のようだ。

「ところで・・・」

遠野が不思議そうに俺達を見渡すと、

「・・・決闘?」

「違う」

「・・・・・・」考える。

「決闘でも果し合いでも雪辱戦でもなんでも無いぞ」

「・・・残念、がっくし」

棒読みで「がっくし」とか言わないで欲しい。

「こらーーっ。バカ往人―――っ。美凪をいじめるな――っ」

どげしっ。

後ろから蹴りを入れられる。

俺は自然の摂理のままに地面に倒れた。その拍子にポケットからビーダマが転がり落ちる。

それは、そのままころころと転がって、みちるの前で止まる。

「うに?」

みちるは足下に転がるビーダマを拾い上げる。輝く瞳。好奇心に満ちた目だ。

蹴りの余韻から復活した俺は、背中にぞくりとした寒さを感じた。

過ぎ去った過去の産物でも、大事な戦利品。それを―――まさかっ。

やめろ――――っ。言葉に出るより早く。

「じゃあねーーーっ。美凪ーーーーっ」

「待て―――っ」

だが、俺の叫びも虚しく、数秒後にはみちるは目の前から消えていた。

エイトマンもビックリな速さだった。

俺は大地に手をついて、己の不覚さを悔いた。

「・・・あ、落ちこんでる」

「・・・・・・」喋る気にもならない。

がさがさがさ。

制服のポケット を漁りだす遠野美凪。

「・・・発見」

前にもあったようなフレーズだった。

「・・・これ・・・残念賞です」

それは、やっぱり白い封筒だった。

「悪いが、いつもと同じやつなら要らないぞ」

ぷるぷるぷる。動く首に合わせてさらさらと髪がなびく。

「・・・いつもと・・・違います」

「どこがだ?」

「・・・ここです」

そういって、白い封筒の表側を指差す。

白い封筒の文字は「進呈」から「残念賞」に変わっていた。

はっきり言ってどうでもいいような変化だった。

「・・・これだけか?」

ふるふるふるふる。前より一回多く否定した。

「・・・今回は・・・中身も特別・・・」

その言葉を聞くやいなや、俺は光のごとき素早さで白い封筒を受け取っていた。

「おめでとうございます・・・ぱちぱちぱちぱち」

「ああ、ありがとうな」

すると、俺に向かって深々と一礼をして、

「・・・みちるを追いかけなくてはなりません」

「ん?そうか」

すると、美凪はこくりと頷く。

「・・・あのビーダマ・・・欲しいから」

理由はソレですか?

「それでは・・・さようなら」

「ああ、じゃあな」

「・・・食べすぎはいけませんよ」

「心がけておこう」

「・・・それでは」

そういって、夏の空気の中へと消えていった。

「さて・・・」

さっそく、封筒の中身を拝見するとしよう。封筒を逆さにしてぱっぱっと振る。

すると、封筒の中からはらりと何かが零れ落ちた。

それをぱしりと掴む、期待に満ちた心。物を掴んだ手を開く。

それは一枚の紙切れだった。

お米券だった。

しかもいつもは20kgのところが30kg。

確かに特別だった。

「――なんでやねん。」

だが俺のつっ込みは虚しく、夏の空気を切り裂くだけだった。

 

 

 男。国崎往人。只今米屋に向かって進行中。

目標、米。

目的、米の捕獲。

理由、神尾家に献上するため。

つまりはそういうわけだった。

そして、今は商店街のほぼ中腹に差し掛かっている・・・のだが――

俺の中にあった強い意思は、だいぶ薄れてきてしまっている。

現在、およそ2時。

太陽が真上でギラリと輝いている。朝よりも気温はだいぶ上昇している。

それゆえに、非常に暑かった。

実に耐えがたい暑さだ、お米券―30kg―を掴む手も汗ばんでくる。

お米屋まであと少し、そして真横にはスーパー。

スーパー・・・ク―ラ―が効いていて、中は実に涼しいだろう。

迷う必要などなかった。

俺は90度方向転換すると、スーパーに向けて歩き始めた。

「人間。たまには休息も必要だ」

がーーっ。自動ドアが開く。

それと同時に人が出てくる、俺は入ろうとする。

さすればぶつかるというのが、世の中の摂理というものだろう。

どごっ。

見事にぶつかる。

だが、体格の違いだろうか。相手だけがすてんとしりもちをついて転んだ。

もちろん、俺は無傷だ。

「すまん」

俺は一言いって立ち去ろうとすると、

「あっ、往人くんだぁ」

「おうっ、往人くんだ――って、誰だ?」

気になって振り返ると、そこには佳乃がいた。手にはビニール袋をぶら下げている。

スーパーの床に座り込んでいるのはおそらく俺がぶつかったせいだろう。

「ああ、佳乃か。すまん。悪かったな」

特に急ぐ必要も無いので手を貸す。

というか、もともとスーパーに居座るのが目的だから口実が増えるのは実によいことだった。

「ありがとっ」

「いや、俺がぶつかったんだしな」

「そんなことないよぉ、感謝感激大売出しだよぉ」

大売出しって何だ?大売出しって。

「佳乃は買い物か?」

「うん、佳乃はお手伝いさん1号なんだよぉ」

「そら、えらいな」

「それで、ポテトはお手伝いさん2号っ!!」

「ぴこ〜」

ポテトはいつの間にやら復活していた。海の藻屑とはならなかったらしい。

俺はこれでも、正義と平和を愛する模範的な善良たる一市民であると自負している。

ここはやはり祝福の言葉をかけなければならないな。

「ぶじだったか、ポテト」俺は小声で話す。

「ぴっぴこ〜・・・」

「ちなみに、ばらしたら佳乃の料理を腹いっぱい食わしてそのまま身動きがとれんようにしてやる」

「ぴっぴこぴこぴこ〜〜〜」

首を振って、力いっぱい否定をするポテト。

佳乃の料理はそれほど恐怖の対象になっているようだ。

「そういえば、何を買ったんだ?」

佳乃の持っているス―パーの袋はいびつな形に膨らんでいる。固い物なのだろう。

「えっとねぇ、さつま芋を買ったんだよぉ」

見れば、確かに紫色の物体がひょこりとはみ出している。

「それで焼き芋をするんだよぉ〜」

「焼き芋?」

一応言っておこう。今は夏も夏、夏以外はありえない季節だ。

「この暑い中焼き芋か?」

「おいしいんだよぉ、焼き芋っ」

「そら。おいしいわな」季節が間違ってると思うが。

だけど、佳乃はそんなことはお構い無しだった。満面の笑みがそれを証明している。

「ぴこぴこ〜」くいっくいっ

「どうしたのぉ、ポテト?」

「ぴっぴこぴこ」お腹をおさえている。

「そっかあ、お腹ぺこぺこのぽこぽこなんだぁ〜」

「ぴっこり」こくん

「それじゃあ、いこっ、ポテト」

佳乃は俺のほうを向いてにこぉととろけそうな笑顔をすると、

「またねっ、往人くんっ」

「ああ、またな」

「帰ったらポテトに焼き芋御飯作ってあげるよぉ〜」

「ぴっぴこっ!!?」

「でっぱ〜つ」

「ぴこ〜〜〜」

俺は白い謎の毛玉動物の冥福を祈ると、手にあるお米券―30kg―を握り・・・――

・・・ないぞ。お米券。

考えられるは、さっきぶつかったとき。とすると入り口かっ!

スーパーの入り口に落ちるはひらりとした紙切れ一枚。

おそらくは俺のお米券だろう。それをかがんで拾う。

「・・・福引券?」

お米券は福引券へと変わっていた。

なるほど、時間がたつとお米券から福引券になるようにつくられていたのか。

さすがは美凪だ。遠野ワールドの創生者だけのことはある。

「――ってんなわけあるかっ!!」

周りを見渡すが、お米券らしきものどころか塵一つ落ちていない。

スーパーの掃除は行き届いているようだ。

俺の手に残ったのは、福引券一枚。

誰の目から見ても明らかなランクダウンだった。

 

 

 人々の欲望と混乱。期待と不安が入り混じるこの場所。

商店街、福引券引換所。

俺はその地へと至っていた。もちろん、手には福引券がある。

そう、福引による一角千金目指してやってきたのは言うまでも無い。

 福引。今までやって、5等以上が出たためしがない。

だが、勝算もなしにやってくるほど俺もバカではない。ちゃんと秘策はある。

法術を使って玉を落とす。かつて無いほど完璧な作戦だ。

これも全ては神尾家(+俺)のため、使っても罰は当たるまい。

となれば、高そうな景品。つまり一等を狙うに越したことは無い。

一等は金色。7等(別名残念賞)は赤色。

いつもならばその赤を確実と言うほどに引く俺だか、今日の俺は一味違う。

「ふっふっふ。福引所敗れたりっ」

俺は高らかに宣言すると、福引マシーン(通称ガラガラ)の取っ手を掴んだ。

「一枚だ」

「はいよ、一回ね」

狙うは金の玉。つまりは一等だ。金の玉に全ての意識を集中する。

「・・・・・・」

「兄さん、まだかい」

「・・・・・・」

「兄さん?」

・・・金の玉ってどれだ?

当然のように外から見れるわけは無かった。

「ぐはっ・・・国崎往人敗れたり」

見事なまでに完敗だった。再戦の余地も無い。

「早くやっておくれ」福引所の人がせかす。

・・・適当に回してしまおう。

がらがらがら。回る音も、どこかやる気が無かった。

回す俺も、はっきりいってやる気はゼロ。ナマケモノ並のやる気の無さだ。

ころり。

赤い玉が落ちた。7等か。

「2等大当たり〜〜〜〜っ」

「はあっ?」

赤色は七等のはずではないか?

「地獄温泉旅行二泊三日の旅〜〜〜4名様まで〜〜〜」

からんからんと鈴の音が鳴り響く中。

「よかったな、あんちゃん」

「うんがいいわねぇ、羨ましいわぁ」

「いいな〜お兄ちゃん」

俺だけが状況を把握してなかった。

「赤は7等じゃないのか?」

「いや、7等はカーマインだ」

ちなみに2等はワインレッドだとか。

紛らわしいことこの上なかった。

商品の「地獄温泉旅行二泊三日の旅」をかっさらうと、とっとと福引所から離れた。

もはやこんな所に用はない。

それにしても2等か。1等で無かったのがおしいところだ。

1等の景品を見てみる。

それは、福引所の中心に壮大な威厳を持って鎮座していた。

 

* 1等 何をモチーフにしたのか分からない巨大なぬいぐるみ 定価50万 一名様

 

――いや、2等であることを誇りに思おう。

「地獄温泉旅行二泊三日の旅」これを片手に帰還すれば、おそらく今日はご馳走になるだろう。

チャーハンセット(大盛り)も夢ではないかもしれない。

しかも、温泉までついていけば豪華な料理が食べ放題で、しかもこの街から出れる。

実に壮大な作戦だった。

「ウッハウハだな・・・」

神尾家まで帰還しようと炎天下にして灼熱の商店街に第一歩を繰り出そうとした、そのとき――

ブロロロロロロロ。

背後から赤いモンスターの気配が近づいてくる。

おそらくは神尾家の主。神尾晴子、その人だろう。

ついている。どうやら今日の俺の運勢は最高のようだ。

そのまま家まで乗せていってもらえれば暑くなくてウハウハだ。

キラリと、白く歯を光らせ親指を立てる。

「へーい。タクシーッ。ちょっと神尾家ま――」

ずどっ。衝突。

俺は華麗に大空を舞った、その姿はまるで鳥のように――

「ん、なんか今引いてしもうたか?」

くるくると宙を舞うと、どさり。固い地面に俺の体は落ちた。

「ま、ええか。どうせしょうもないもんやろ」

俺は所詮そんな存在なのか?

「あっ、あかん。早よせなあかんのやった」

「・・・おい」

ブロロロロロロロロ。

バイクの排気ガスと風がその跡を残す。

その風で舞うように飛んだ一枚の封筒。「地獄温泉旅行二泊三日の旅」。

ぶつかった瞬間にポケットから落ちたらしいそれは、ひらひらと宙を舞って。

じゅぼっ。

焚き火の中に落ちた。

当然、「地獄温泉旅行二泊三日の旅」は綺麗に燃え尽きる。

「――って、何で焚き火やねん」

「おや、元気が無いな国崎君。腹でも減ったのか?」

俺の気など知らない悪どいやぶ医者は、片手にホクホクとした焼き芋を持っている。

「だれが、やぶ医者だ」

つくづく思うが、こいつは本当はエスパーではないだろうか。

「・・・ちなみに、別に腹は減っていないが――」

「焼き芋はやらんぞ」

俺は問答無用で手を差し出した。

「貴様のせいで俺の大事な金づるが燃え尽きた。それ相応の賠償をマネーで払え」

シャキン。

4本のメス。同時スタンバイ。

「ごめんなさい、冗談です」

――って冗談じゃないぞ。事実を言っただけなのに、何故だっ。

説明しよう。

国崎往人の中ではもはやこのボケがパターン化してしまっていた。

これはそのための条件反射といえよう。

衝撃の事実に俺は固き地面に両膝をついた。それを聖は哀れむような目つきで見る。

「しかたないな。君の望みどおりの物をあげよう」

「マジか?」

「もちろん本当だ・・・ほらっ」

ころっ・・・ころっ・・・。

足下まで焼き芋が転がってきた。なかなか大きい。

「――って焼き芋とちゃうわっ」

「焼き芋じゃなかったのか?」

「誰が焼き芋なんか欲しがるかっ!金をだせっ」

シャキン。

「いらないのか?」

「すいません。ありがたく頂戴いたします」

「よろしい」

そういって、聖は診察所の中へと帰っていった。

手に残るは焼き芋一つ。

日はもう落ちかけ、夕暮れ時になりつつあった。

カァーカァーと鳴くカラスの声も、「アホ―アホ―」と聞こえてしまう。

「・・・・・・」

虚しかった。それと同時に己の不幸をひたすらに呪う。

温泉旅行が焼き芋に。これ以上はない不幸。手に残った焼き芋が唯一の救いかもしれない。

「焼き芋に救われる男。国崎往人」

それはそれでかなり嫌だった。

「――なんでやねん」

ぼそりとしたか弱いつっこみは夕暮れの時の中に掻き消えた――

びしっ。なぜか人に当たる。

「・・・あ・・・切れ味抜群・・・」

――でもなかった。

 

END

 

 

あとがき

 どうも、久々の駄作を読んで頂いて真にありがとうございます。て感じの霧月です。

今回、わらしべ長者を思って書いたんですけど・・・思いっきり馬鹿な方向へ話が進みましたねぇ。

これはぎゃぐか?笑えないギャグか?・・・って、笑えないギャグってギャグじゃないな。むぅ

 しかも。なんか、今回の小説は久しぶりに書いたせいか駄目駄目ですね。

だらだらと長いし。いまいちキャラつかめてないし。観鈴出してないし・・・。

・・・むぅ。本当に駄目駄目だな。

霧月ちん、とりぷるぴんち。

――ごめんなさい。冗談です。怒らないで・・・石投げないで・・・。

あ、それと、感想もしくは苦情でなければ抗議文。

できればください。嬉しいです。まぢで。

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