Public Enemy No1

 

 

 そこは薄暗い会議室のようなところだった。

いや、会議室そのものといってもいいくらいの部屋だろう。

だが、何処か、違う雰囲気がそこにはあった。

 円形のテーブルの周りには、重々しい雰囲気の初老の男女が座っている。

全部で7、8人。

一様に無言。

何かを思い悩んでいるかのようにただ静かにそこにいる。

薄暗いため彼らの表情までは見て取れないが、眉間には深い皺が刻み込まれているだろう。

カチ、カチ、カチ。

ただ、時が過ぎていく。

だが、そこにいる中の一人、禿頭の男が決心を固めたかのように頷くと、

「・・・皆さん」

声をかける。渋く、堂々としているが、何処か温かみのある声だ。

彼から流れてくる、柔らかな匂いがそう思わせるのかもしれない。

「やはり、このままではいけないと思うのです」

重々しく、だけど静かにその男は言う。

「このままほかって置けば、被害は増える一方でしょう」

「・・・確かにそうだ・・・だが――」他の男が言う。

言葉がにごる。

「だからといって、どうすればいいのだ・・・」

「そうだ、アレは酷く逃げ足が速い、そう簡単に捕まえられるようなものではないぞ」

「そうね、無理かもしれないわね・・・」

「確かに、捕まえるのは無理かもしれんな」

「プロにでも頼めないものだろうか?」

「アレを捕まえるプロなんているものか!」

「いや、聞いたことがあるぞ。確か近くでそいつを見かけたと――」

パンパン。

始めの禿頭の男が、手を叩いた。

会話が止まり、場が静まる。

「皆さんも分かっているとおり、今回の敵は相当手強い」

「ならどうすればいいと言うのだ!」

息も荒く、一人の男が反論した。

反論をする男を、禿頭の男は手で制した。

「なに、落ち着いてください。私たちに全く勝ち目が無いわけではない」

「だが、厳しい状況なのも確かなのでは?」

「ああ、だから今回は特別な助っ人を呼んだ」

おお、と所々から歓声にも似た声が上がった。

禿頭の男が後ろにあるドアを見て言う。

「もうそろそろ着てもいいころなのだが――」

コンコン。

ドアをノックする音。

「噂をすれば――か、どうぞ入ってください」

「――失礼します」

女の声だった。

入って、すぐに一言。

「あら?暗いですね」

ぱち。

「あ」待て。

誰かが何かを言う前にその女はとっとと蛍光灯のスイッチを入れてしまった。

当然、部屋には光が灯る。

「こっちのほうが見やすいですよ」

笑顔をのままに、彼女はそう言った。

「暗くしていたのは、いかにも怪しく見せるための演出だったのですが・・・」

「あら、そうだったんですか。ごめんなさいね」

そう言って、もう一回切ろうとする。

「あ、いや。もうこのままのほうが――」

ぱち。

また部屋に闇が戻った。

「・・・・・・」

「もう一回戻したほうがいいですか?」

「・・・そのままでいいです」

半分泣きかけの声だった。

「ところで、今日は何の御用なんですか?商店街の皆さん」

おい。

「・・・いきなり正体ばらさないでください」

「なにか不都合でもあるんですか?」

彼女は何も分かっていない。

「もう・・・いい」

がくりと膝をついた。

禿頭の親父はかっこいい演出を諦めた。

そう、これは彼にとって昔からの夢だったのだ。

『どこかの怪しい組織のように極秘プロジェクトを進める』ことが、夢だった。

きらりと、頬に涙が伝った。

(じゃあな、俺の夢)

50を越えた男の夢は、儚く散っていった――

 

非常に見苦しいのでしばらくお待ちください

 

――さて。彼が夢を諦めたのならば、わざわざかっこよさを醸し出す必要も無いだろう。

ここは商店街の寄り合い所。

そこに、商店街で店を開いている店長の一部が集まっていた。

もちろん、お茶会のために集まったわけじゃない。ひとつの計画のためだ。

名づけて。

「うぐぅL捕獲作戦だ!!」

ばんと、ホワイトボードを叩きながら禿頭の親父、いや、たい焼き屋の親父が叫んだ。

おおおっ。その迫力におもわず歓声が上がった。

それをたい焼き屋の親父は手で制した。

一旦、場が静まる。

「一つ質問があります」

いや、お構いなしなのが一人。

後ろのほうにいた夢の破壊人。秋子さんが手を挙げる。

「なんだ?」

自分の夢をぼこぼこにされたため少し怒りながらそう答える親父。

「うぐぅLって、なんですか?」問う秋子

「うぐぅLじゃない、うぐぅLだっ」答える親父。

「読んでる人には違いが分からないと思いますよ」

全くだ。

「・・・そうだった。うぐぅL(サーティーン)だ、(じゅうさん)じゃない」

「わかりました」

どうでもいい議論が終る。

秋子さんは微笑んでもう一度問う。

「うぐぅLってなんですか?」

「・・少し説明する必要があるか・・・」

親父はどこからか映写機を持ってくると、壁に向けて一つの絵を映した。

そこに映っているのは、一人の少女。

「まぁ、あゆちゃん・・・」

そう、そこには月宮あゆが映っていた。

「映画デビューしたのかしら?」

「・・・」

無言のままに親父は一人一枚の紙を配る。

「これは、連続食い逃げ魔、通称うぐぅLの調査報告書だ、各自しっかり目を通しておいてくれ」

 

――うぐぅL

本名 月宮あゆ。 哺乳類 幼人目 うぐ科

主に朝8時ごろから日が暮れるころにかけて出没する。

夜に現れたことは無い、暗闇が苦手と判断。

主食は食べ物全般。主にたい焼きを好んで食べる。

鳴き声はうぐぅ。

 

備考

うぐぅLと呼ばれる由来は外見が13歳ぐらいに見えることと「うぐぅ」と泣くことのもよう。

ある、特定人物を見ると襲い掛かるという証言も入っている。

 

前科

たい焼き 23個食い逃げ

イチゴサンデ― 6個食い逃げ

たこ焼き 3箱食い逃げ・・・etc...

 

・・・・もう一つ質問があります」

しばらくじっとその紙を見ていた秋子さんが顔を上げていった。

いたって真面目な顔で、

「ロリコンですか?」

その場の空気が一瞬にして凍りついた。

時が止まる。

息をすることさえ苦しくなるその空気。

「あるいはストーカーとか」

場の空気を察しない秋子さんが追い討ちをかける。

時が、空気が北極並に下がりきった。

しばしの沈黙。

「わしにそんな趣味は無い」

「そうですよね・・・」

納得したかのような笑みを浮かべる秋子さん。

「ちょっと、そんな気がして・・・」

「・・・・・・」

親父はすんなり無視して高らかに叫んだ。

「このようにっ。うぐぅLは多大な被害を我々に及ぼしているっ!

 そろそろ、何か対策を打たねば我々の未来が危ういというものだっ」

「確かにそうだっ!」他の男が言う。

「そうね、ちょっとしからないとね」別の女が言う。

「いまこそっ、我々は立ち上がるべきなのだ―――ッ」

「「「「「「おおオッ―――――ッ」」」」」」

商店街の寄り合い所に大きな歓声があがった。

その声に驚いて、近くで寝ていた犬がびくりと起きてどこぞへと逃げていった。

大きな歓声が上がる中、秋子さんは窓から空を見ていた。

どう考えても、助っ人としての役割を果していない。

もちろん、今秋子さんが考えていることは周りの歓声とはまったく関係の無いことだった。

(KANONって一体どういう意味なのかしら・・・)

本当に関係ないことだった。

そして思い出す。

「夕御飯の材料。まだ買ってなかったわね」

そう呟く後ろでは、ようやく歓声が収まり始めていた。

「よし・・・詳しい計画について話すぞ」

「じゃあ、私はこれで」

「まず第一段階として―――え?」

ばたん。

扉が閉まった。

秋子さんは一陣の風のように去っていった。

何のために呼んだのだろう。

それはたい焼き屋の親父にも分からなかった。

 

一方、そんな計画が動いてることなど知らぬうぐぅLは、

「うぐ?」

たい焼きを食って――はて、たい焼き屋の親父はあそこにいるはずなのに。

・・・なぁ、どうやってたい焼きを手に入れたんだ?

「うぐ?たい焼き?おちてたんだよ」

・・・何処にですか?

「屋台のなかっ」

幸せそうに宣言するあゆことうぐぅL。

「うぐうぐ、おいしい」

・・・。

「たい焼きおすそ分け〜」

いや、結構です。

「こしあんでおいしいのに・・・」

そ〜ゆ〜問題じゃあないと思うぞ。

「うぐうぐ(はーと)」

前科に追記。

たい焼き5個窃盗。

うぐぅLの罪がまた一つ増えた。

そして、こうしている間にも「うぐぅL捕獲作戦」は進んでいく。

北方の町の、一つの商店街。

そこを中心に巻き起こる一つの騒乱。

伝説とまでなるその物語の始まりに向かって人々は明日へと向かう。

それぞれのうぐぅを胸に。

「――おい、うぐぅって何だ?」

・・・気にするな。

 

To Be Continued♪

 

 

あとがき?

 とりあえずごめんなさい。石投げないで下さい。切実にお願いします。

どうも最近ちょうしがわるいんですよね〜。なんでだろね〜。

ってか、これ続くのか?

こんなんが続いてしまっていいのか?そこんとこどーよ俺。

「まぁいいんじゃないの」

「そうだな」

「「はっはっはっは」」

――ごめんなさい。調子に乗りすぎました。

 次はまともなやつを仕上げてみます。多分。多分・・・多分。努力はします。

感想とか、あったら下さい。意見も苦情も善処します。⇒m-nono@mud.biglobe.ne.jp

ではでは。

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