TALES OF PHANTASIA

〜 すずの鈴 〜

 

 

 これは・・・・夢、しかし、幻想ではなく過去に実際に起こったことだ。

「た、たすけてくれ・・・・!」

 十歳位の少女の前に身なりの良い男が腰を抜かしていた

 少女は口を覆っていた布を外しながら男を冷たい眼差しで睨み付け、口を開いた。

「ゼイブ王、貴方が死ねばこの国は救われます」

 ゼイブと呼ばれた王は、それを聞くと恐怖が顔から消えさった。

「・・・・確かにそうだな、私は今まで多くの民を苦しめ殺してきた・・・・。これは罪滅ぼしかも知れんな・・・・忍びの娘よ」

 ゼイブは優しさと悲しみの微笑で少女を見て言った。

「私を殺せ。そうすれば民は救われるのであろう?」

 少女に忍びには合ってはならない『迷い』が一瞬生まれた。

(・・・・何故この男は微笑んでいられる? く・・・・!)

 迷いを断ち切るように少女はクナイを放ち、それはゼイブの眉間に突き刺さった。

 

 そして・・・・その夢から覚める物がいた。忍びの里の長『すず』

「私が初めて人を殺めた時の記憶・・・・しかし何故今ごろ・・・・」

 すずが思い返していると庭の方から何か、物音が聞こえる。

 ゆっくりと庭へと向かいそこで見たのは幼馴染の『翔』。翔は十歳にもみたぬうちに親を事故で無くしたということになっている。そして実力は、すずと同等もしくはそれ以上かもしれない。

「翔、何してるの? 家の畑で」

 その一言で翔はすずに気が付いた様で、ビクッと振り返り・・・・。

「い、芋掘りをしてま〜す・・・・♪」

 翔は心なしか声が震えている、しかしすずはそのことを気にも止めずに懐に手を入れ・・・・。

「そんなこと聞いてるんじゃ・・・・無い! 雷電ッ!!」

 小刀を放ち、『雷電』という忍術を使った。

「わ!? ば、馬鹿こんなところで・・・・! 鳳仙花ッ!!」

 翔もすずの『雷電』をかき消す為、炎を纏った一閃のくないを放つ。二つはぶつかり合い、相殺した。

 そして、すずは何事も無かったように翔に言った。

「芋位言えばあげたのに・・・・」

 すずは呆れたよう言いながら翔を見た。

「それはこうなる前に言って欲しかった・・・・」

 翔を見ると泥だらけになっていた。どうやらさっきの技のぶつかり合いで泥が飛んだらしい。

 翔はしかたないと言う様なため息をして、芋をくれと言い、芋を貰うと自分に家に向かって行った。翔は小さい頃に親を亡くした為、すずの家にちょくちょく世話になっているのだ。別にすずも嫌ではないし、それが当たり前になっていた。

 そしてある日、皆を集めた集会でのこと・・・・。

 その場で、すずの婚約の話が持ち上がった。

「すずももう十八・・・・。そろそろ婚約を決めたらどうだ?」

 元忍びの里の長である乱蔵が言う。すずは長の血筋の者、早くに子孫を残さなければならないのだが・・・・。

「私はあまり気が進みません。私には早過ぎると思います・・・・」

 うつむいたままで言う。

「しかし頭領、忍びという家業には悲しいですが『死』が何時来てもおかしくない……だから、ねぇ・・・・?」

 道具屋のおばさんがすずを悲しげに見つめながら言った。

 そんな目で見られたすずは何も言えなくなってしまった。

 そのときである。翔が慌てて入ってきたのだ。

「すいません遅くなりました・・・・ってあれ?」

 集会に遅れてきた翔は今の状況が解らずその重苦しい空気に酷く戸惑っていた。

「お前とすずの話をしていたんだ…まぁ座れ」

 乱蔵が翔に今までの話をし、翔はその話を黙って聞いたかと思うと唐突に口を開き・・・・。

「嫌だ! 双方の気持ちも考えないで何が結婚だ!!」

 翔の声は明らかに怒っていた。

「ならば条件を出す。それができなければ即婚礼の儀式を執り行って貰う。文句はあるまい・・・・」

 すずと翔は反対していたが、その条件を飲まなければ無理矢理にでも、と半ば脅されて仕方なく条件を飲んだ。

「期日は十日後。リオアース国のロゼウス王の暗殺」

 リオアースは超軍事国家であり、悪い噂しか聞かない特に王がロゼウスになってからというもの、軍の強化が進んでいると聞く・・・・。

 だが、ロゼウスの父ジェール王は、花と緑の国を目指していた心優しき王だ。しかし、何者かの暗殺によりジェール王は息耐えた(おそらくロゼウスが仕向けたのだろうが・・・・)

 そのロゼウスが建てた城・・・・と言うより軍事基地にたった二人で乗り込めと言うのだから乱蔵も無理なことを言う。

「十日の間、体を休めるなり、心身を鍛えるなり、好きなことをするがいい。今回の仕事は骨が折れるぞ」

 ・・・・などと言われた。

 しかし不思議だ。条件ならもっと危なくないものでも良かったのでは・・・・?などと思い翔は小首をかしげたが、『まいっか』の一言で片付けてしまった。

 そして、すずと翔は別々で修行をした。

 すずの修行は、視覚、聴覚を奪った状態での、八方から放たれる投石を感覚、気配だけで避けるというものだ。幾度も失敗しアザが所々に残る。時々変な所に当たり骨がきしむ。

 しかし、すずは五日でこれを完璧にこなしてしまった。

 そして翔はと言うと秘密の特訓をするのだと言ってどこかへ行ってしまった。が、修行が終わったのか、ボロボロになって帰ってきたのだった。

「すず、あと五日もあるけど、どうする?」

 包帯を腕や頭に巻きつけてぐったりしながら翔が言う。

「こんな状態じゃ何も出来ないでしょ?」

 すずが青アザに薬を塗り直しながら言っている。その姿を見て、翔は今にも(イタそ〜)などと言いそうになったが、すずに言わせれば翔の傷の方が痛々しかった。

「翔。一体どんな事をしていたの?」

 薬を塗り終えたすずは床に横になった。

「行儀悪いぞ、っと言いつつ俺も・・・・。俺は自分独自の術を作ってたんだ。それは強力な技だ・・・・。生み出した俺が言うのもなんだが、この術は危険すぎる。出来れば使いたくない・・・・」

 深刻そうに言う。ここまで言うということは、相当の物なのだと思いながら、すずは体力の回復の為に寝てしまった・・・・。

「あ、寝てやがる! そっちから質問しといてなんだよ! でもまぁ、それだけ信頼されてる、ってことかな?」

 忍者は心から信頼しているものの前でしか眠らないのだ。

 それから二日経ち、すずは翔をトーティス村に連れて行った。

「すずちゃんが友達連れて来るなんて初めだからちょっとビックリしちゃったけど、どしたの今日は?」

 その『精霊の森の魔女、アーチェ・クライン』の口ぶりに、すずがここにちょくちょく来ていたのかな? などと翔は思った。そして、そこには『妖精弓の射手、チェスター・バークライト』もいた。まぁ、彼の家なので当然なのだが・・・・。

 そう、『精霊の森の魔女、アーチェ・クライン』と『妖精弓の射手、チェスター・バークライト』は結婚していたのだ。

 アーチェに質問され少し照れたように。

「すいません・・・・。ただ・・・・、皆さんの顔が見たかっただけなんです」

 と言った。それを聞きアーチェは笑いながら。

「ま、いいんじゃない? あたしはともかく、こいつは何時ポックリ逝くかわかんないもんね♪」

 と言葉をかえす。

(この人、さり気なくひでーこと言ってるよ・・・・)などと翔が思ってるとチェスターが。

「んだとアーチェ! 俺はまだまだ若いぞ!!」

「白髪雑じりで言われてもね〜」

 などとアーチェとチェスターがじゃれあっていると、「かちゃ」っと音がして『時空剣士、クレス・アルベイン』と『一角馬の法術士、ミント・アドネード』が入ってきた。

「あれ? すずちゃん。久しぶり」

「いらしゃい。今お茶入れますね」

 クレスとミントは買い物から帰ってきた所らしく買い物篭を持っていた。翔とすずは軽く会釈した。それからどれ位の時間がたったのだろう。いろいろ話してもらった。『孤高の召喚士、クラース・F・レスター』のこと、『ダオス戦役』のこと『ミッドガルズ王都の事故』のこと。

 『ダオスの戦った理由』。大体はすずに聞いていたがここまで詳しく聞いたのは初めてだった。

 すずと翔はその日のうちに忍びの里に帰っていった。

「良い人達だな。それに、『ダオス』についてあんな詳しく聞いたの初めてで、つい聞き入っちまった」

 そう言った瞬間、すずが顔をうつむかせたのを見逃しはしなかった。すずが自分の親を殺めたのもこの時だった事を翔は思い出した。

「すず、お前知っているかもしれないけどさ、俺も親を自分の手で殺めてる。けど、そのことをいつまでも背負ってるのは良くないと思うぞ? 忍者は非情でなければならない。つっても俺も親の形見なんかをいつまでも持ってるんだけどな」

 翔は懐へ手を入れると、ある物を取り出した。「チリン」と鳴る。それは小さな鈴だった。翔の親は忍者でありながら感情の豊かな人であり、すずも小さい頃はよく世話になっていた。

「それは、翔のお母上がお父上に貰った物・・・・」

 すずはいつも翔の母親が鈴を付けているのは何故? と聞いたことがあったから知っている。それは翔の母親にとって命と同じくらい大切な物。だからこそ翔に渡したのも頷ける。そんな話をしているうちに忍びの里につき、三日がたった。

「さて、行くかすず」

 翔は伸びをしながら言った。すずはこの男には不安とゆうのは無いのか、などと思いつつ深く頷いた。

 そして夜を迎え、忍びの時がきた。

「しかし、本当に軍事基地だな、この壁五、六メートルは有るぞ・・・・。 まぁ俺達には楽に飛び越せるけどな」

 近くの茂みから翔がすずに聞こえるか聞こえないか位の声で言った。

「でも、気を付けたほうがいいと思う」

 そう、何時、何が起きてもおかしくない状況なのだ。翔はすずと目を合わせ頷いて合図し走っていった・・・・。数分後、何かの爆発音がし、すずはこれを待っていたかのように塀を乗り越え城のほうへ走っていった。ロゼウスに雇われた兵士達は爆発音のした方へ向って行ったから易々と城へ入り込めたのだ、向って行った兵士達は今翔と戦っているはずだ・・・・。気の毒に・・・・。

 すずは奥のロゼウスの居る寝室に向った。

「待て! ここから先にはこの『バース』が行かせはしない!」

 そのバース名乗った青年はバンダナを頭にはちまきの様に巻いているのが印象的だった。

「退いて下さい、貴方に危害を加えるつもりはありません」

 しかし、男は忠告を無視して剣を抜き、下段に構えた。

「くらえぇ! アルベイン流・奥義、魔神双破斬ッ!!」

 これには流石のすずも驚いた。『魔神双破斬』はクレスも多様していた技だ。これほどの使い手はそうは居ない、などと考えているうちに第一波の剣気を込めた一撃が衝撃波となってすずに襲い掛かって来た。すずは、第一波は避けたが第二波の素早い上下からのコンビネーションを交わす事が出来そうも無かった。その時である、炎を纏った一閃のクナイがバースの頬をかすめた。

 これは・・・・『鳳仙花』、考えるまでも無く翔がきたのだ。その瞬間、鳳仙花に驚いたバースが空中でバランスを崩し床に転倒した。

「くっ、誰だ俺の邪魔をするのは!?」

 バースの目がクナイの飛んできた方向を向く。これをチャンスとばかりにすずはロゼウスの部屋へ駆けて行く。

「くそ、ますはお前からだ! アルベイン流・秋沙雨ッ!!」

 バースは翔への間合いを一気に詰め。ざあっ、と剣が分身したようにも見える高速の連続突きを放ってきた。

「すずと違って俺は優しくねぇぞ! 死ね! 雷電ッ!!」

 翔は後ろに飛びながらバースの足元に小刀を投げた。剣がバチッ、っと鳴ったのに気づいたバースが素早く後ろに飛ぶ。その瞬間、雷が小刀の上に突き刺さった。

「あぶねー。こんな所で大技使いやがって」

 雷の影響で周りの空気が青くなり独特の生臭さが鼻を突く。バースは剣を構え集中した、額に汗が流れる。

「わが魂の輝き蒼き刃に変え、我が前の敵を滅ぼせ」

 バースの前に蒼白い光が集まり・・・・。

「我流・蒼牙光滅破! でりゃぁーーーーッ!!」

 バースは、力を一気に解放した。形はクレスの虚空蒼破斬に近いが、翔には通用しない。

「ふん、そんな技で・・・・、身の程を知れ!!」

 翔は忍び刀を抜き、バースの放った『蒼牙光滅破』を切り裂いた。そして

 バースの懐に潜り込むと、一気に。

「曼珠沙華・斬、燃えろぉーーーッ!!」

「!!」

 バースは、うめき声を上げる間も無く灰も残らず空気となってしまった。

 その頃すずはと言うと、ロゼウスの部屋の前にいる兵士を『眠り火』を使い難無くロゼウスの寝室に入り込んだところだった。そこに待ち受けるは一つの影・・・・。

「やあ、私を殺しに来た者よ、だが、私も易々と殺されたくない無いのでね、抵抗させてもらうよ。これでね」

 ロゼウスが言ったと同時、突然何か音がして、すずの額をめがけて飛んできた。そして『それ』は、すずの額を貫き、すずはゆっくり背中から倒れこんだ・・・・はずだった。

「ロゼウス王、その命貰います」

 その声の先には先ほど『銃』と言う武器で額を貫かれたはずの忍びの姿があった。ロゼウスは驚きバランスを崩しながらベットの上へ座り込んだ。

 すずがゆっくりロゼウスに向って行く、その時。

「それ以上私に近付くな! それ以上来るとこれを発動させる・・・・、ま、魔科学兵器だ! これの恐ろしさを知らぬわけではなかろう!!?」

 ロゼウスは何かのボタンを持っていた。おそらく発動ボタンだろう。魔科学兵器の恐ろしさは、『時空の六勇者』であるすずが一番知っている。

「だ、駄目ッ!! あの悲劇をまた繰り返すつもりですかッ!?」

 すずが叫んだ瞬間、ボタンを持っていたロゼウスの腕が無くなった。いや、斬り落とされた。ロゼウスは何が起きたかわからぬまま、腕の激痛に声無き悲鳴を上げていた。

「魔科学兵器の動力部は破壊させてもらった。もう発動はしない」

「な、なに!? どうゆう事だ!? ここで魔科学兵器の開発をしている事は最重要機密のはず! 何故忍び風情が動力部の場所まで知っているのだ!?」

 翔は困ったように頬を掻きながら。

「俺、アンタの部屋知らなくて手当たり次第に部屋を開けていったら偶然にもあったから・・・・これはヤバそうだな、っと思って・・・・ぶっ壊した」

 ・・・・その瞬間この窓が開いていない部屋に冷たい風が通った気がした・・・・。

「な、何だよその間は!? 俺なんか悪い事したか!!?」

(ロゼウスにとっては、物凄く悪い事した気がするけど、あの状態じゃぁね)

「ひゃ、百億ガルドが、い、今までの・・・・」

 とりあえずロゼウスをこのままにしておけないし、黙らせると言う意味をこめて翔はロゼウスの口に布を当て、一気に首の骨をへし折った。

「さて、仕事も終わったわけだし、帰るとするか」

 すずはこれを聞いてつくづく翔に緊張感という物が無いのを思い知らされる。

 これからが大変だと言うことは翔も知っているはずなのに普通に家に帰るように言われてしまってはやる気も失せてくると言う物。

「無駄口叩いてないで早く行くよ」

 これから死闘が始まるかも知れないと言うのに、という翔への苛立ちはあまり見せなかったが、明らかに怒っている様子が感じ取れた。

 そして、難無く城の外に出たが、そこには目を見張るものがあった。

 ガルフビーストが五体放し飼いになっている。すず達は一度草陰に隠れどうするかを読唇術で声無き会話をしていた。

「これじゃ身動きとれねぇな・・・・どうするすず?」

「・・・・私が劣りになって、敵の注意を引き付ける。その内に翔は脱出を」

 しかし翔は怒鳴るように。

「頭領にそんな事させられるかよ! ここは俺にまかせな!!」

 しかしすずも引かず。

「頭領だからこそ、翔を行かせるわけにはいかない」

「ワガママ言うな! 俺の命でお前の生きる未来を作る! お前は生きてみんなの未来を作れ! それでも・・・・俺が死に損なった時は俺と婚礼の儀をあげてくれないか?」

「え? えぇ!? 急に言われても・・・・!!」

 すずは危うく声を上げそうになったがなんとかかみ殺した。

「里に帰ってから返事を聞かせてもらう。この鈴、御守り代わりだ」

 翔が懐から母親の形見である鈴を取り出した。

「こんな大事なもの受け取れない。それに御守りなら翔が持っていた方が・・・・」

「いいから持ってろ。告白って意味を込めてな」

 その言葉を言ったすぐ後に翔は飛び出して行った。

 その後翔がどうなったのかは解らない。しかし私は生きていると信じている。そして、翔と一緒に未来を作ろう、生きる未来を。

 

END

 

 

 あとがき

 い〜や〜終わりました、五月から書き初めてやっと終わりました、

 さて、この話いろんな小説から参考にさせて貰いました。戦闘の表現なんて、なりきりダンジョン思いっきり参考にさせて貰いました。

 そして、翔はどうなったか?なのですが・・・、ご想像にお任せします。

 ああ、石を投げんでください。だって書いている自分でも思い付かないんです。

 このあと翔が帰って来て翔と一緒に暮らしてもいいし、翔は帰ってこずにすずは、悲しくも翔の言葉を胸に強く頭領として生きて行くのもいいなと思っているんです。

 あと、すずらしくないと思った人に説明しておくと、すずは翔には敬語を使わないんです、何故ならいつも自分と同等の立場に居て欲しい。という事が込められているんです。でもやっぱりすずっぽくないですよね・・・・反省。

 付け加えておくと、翔のオリジナル忍法は出しませんでした、書いてはみたんですが気に入らなくてカットしました。

 ついでですが第二部も書こうと思っています。題名は『〜鈴の音の哀しみ〜』

 これで翔が帰ってきます、しかしこの話は『〜悪夢の鈴〜』にしようと思ったぐらいの

 悲しい話です(多分)。では次回作をおたのしみに〜☆

 

 

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