〜 少 女 の 旅 立 ち 〜

 

 

「・・・・本当にありがとう。祐一のことは好きだから・・・・いつまでも、ずっと好きだから・・・・春の日も、夏の日も、秋の日も、冬の日も・・・・ずっと私の思い出が・・・・佐祐理や祐一とともにありますように」

「舞・・・・?」

 すっと目を閉じた瞬間、舞はもう、剣の先を自分に向けて、それを腹部に刺していた。

 一瞬が、やけに長い間に見えた床に倒れ落ちる舞の体を支える自分の動きがイライラするほど、ゆっくりに思えた、腕の中で、舞は見る見る青ざめていく。そして血が床を濡らした。

「お前・・・・どうしてこんな事するんだよ・・・・これから、やっと始まるところだったのに・・・・俺は、お前が、大好きなのに・・・・」

 お前だって、俺を好きでいてくれたんじゃなかったのか?『ありがとう』って俺の言葉を喜んでくれたんじゃなかったのか?

 腕の中の舞は答えてくれない、それどころかしだいに体が冷たくなってくる、

 どうしてだ。こんなの・・・・、こんなの勝手で卑怯じゃないか、舞。舞!!

 

 舞は麦畑に立っていた、ここはあの男の子、祐一と遊んだいつもの場所、一度だけ自分の力を好きになれた場所、今はここに祐一はいない、かわりに一人の少女が立っている。

「どうしたの?」

 少女は聞いてくるが舞は答えることが出来ない。

「道に・・・・迷ったんだね」

「・・・・違う、迷ってない、これは・・・・この道は自分で選んだ道だから」

 自分からこの結末を望んだ、迷惑をかけてもいいと言った祐一。

 私を幸せにすることが、自分にとって一番の幸せと言ってくれた佐祐理。

 しかし・・・・。

「自分から選んだのなら、迷ってないなら何故君は泣いているの?」

 言われてから初めて舞は自分が泣いていることに気が付いた何故自分は泣いているのだろう、決心したはずなのに・・・・。

「やっぱり迷ったんだよ、ううん迷ってるんだよ」

 違う・・・・違う!!!!

「迷っていたとしても私はこの道を選ぶ・・・・、祐一のためにも佐祐理のためにも・・・・」

「本当にそう思うの?・・・・じゃあ、この声は何故こんなにも悲しげなの?何故こんなにも君を呼んでいるの?」

「ま・・・・い、・・・・まい・・・・舞!!」

 祐一・・・・?泣いているの?私のために泣いてくれるの?名前を呼び続けてくれるの。

「舞・・・・」

「・・・・さ・・・・ゆり?・・・・」

 祐一の声とは反対の方向から佐祐理の声が聞こえてくる。

「舞、戻ってきて。また、佐祐理と祐一さんと一緒に同じ時を、同じ思い出を作ろう。だから舞・・・・戻ってきて」

「けど、私のせいで親友を二人も傷つけた、・・・・だから、戻れない」

 佐祐理にも祐一にも私の力のせいで危ない目に合わせてしまった。

「舞・・・・、佐祐理は何度でも言うよ。舞を幸せにすることが佐祐理にとって一番の幸せなんだよ、だから舞、戻ってきて」

「君はもう、見つけたね。大切な人と親友と言う希望を・・・・」

 舞は少しの間沈黙したが、迷いを断ち切るように力強く頷き、そして少女に問い掛ける。

「私は・・・・戻りたい、・・・・戻れるかな?」

 少女はやわらかく、そして無邪気に微笑む。

「君が祈りさえすればその願いは叶うよ・・・・、だって君の力は 祈りを叶える希望の力だから・・・・」

 それを言い残し眩しい光に中に包まれていった、舞はその眩しさに堪えきれず目を閉じさらに腕で覆い隠す。

 じきに光か晴れ、目をあけると、さっきまでの少女の姿は何処にもなく代わりに『まい』が立っていた、自分が魔物として忌み嫌ってきたもの、受け入れられなかったもの・・・・。

「舞は・・・・、『まい』を必要としてくれるの?」

 舞は頷き。

「私は・・・・、祐一や佐祐理のもとへ帰りたい。だから・・・・力を貸してほしい」

 舞は『まい』へ手を差し伸べる、と『まい』はその手をとった。

「うん。・・・・でも、あたし達の力だけじゃダメなの・・・・」

 舞と『まい』は再び一つになったと同時に舞の姿は幼い少女の姿になっていった。

「じゃあ・・・・、どうすればいいの?」

 『まい』に問い掛ける。

(もうすぐその人は来るよ、だから・・・・、始まりには挨拶を・・・・

 そして・・・・、約束を・・・・)

 

「よう」

 祐一は、少女に声をかけた。

 始まりには、挨拶を・・・・。

「・・・・初めまして、かな」

 ううん、と少女は首を横に振った。

 頬を赤くして、心臓の高鳴りをおさえるように、小さな手を胸に当てた。

「あたしは、ずっと待っていたから」

 この人だ。少女は祐一を信じた。

「じゃ、行こうか」

 もう一度、失った時間を取り戻しに。

 祐一は、少女の細い腕をとった。少女は祐一に全身を寄せ。

「今度は何処にも行かない?」

「ああ、行かないよ」

 そして・・・・約束を・・・・。

「ずっと、舞のそばにいるよ」

 

 教室の窓から入る朝日が舞を照らす。それが眩しくて祐一と舞が目を覚ます。

 祐一の目には、まだ少し涙が残っている。

「おかえり・・・・、舞」

 祐一の言葉に答えることが出来なくて・・・・、代わりに祐一の涙を拭き、出来る限りの笑顔を祐一に返した。すると、祐一も笑って返してくれた。

 取り戻そう、あの時間を、三人で・・・・。

 

FIN

 

 

あとがき

 ごめんなさい!!(土下座)舞が好きな人が見たら怒りそうな事ばかり書いてしまった。それでも、それでも、感想が欲しいです。お怒りでも、苦情でも、

素直に思ったことを感想で下されば幸いと存じます。あと、最初舞に語り掛けてくる少女の事は、今執筆中の『Kanon第二章〜運命の出会い?〜』で少し説明されます、それを読んで行く事によって、またこの小説の感想が違ってくると思います。でも、『Kanon第二章〜運命の出会い?』〜を仕上げるのが何時になるやら(爆)

追伸 乱筆乱文をお許しください。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送