〜 序 章 ・ 旅 立 ち 〜

 

 

『朝〜、朝だよ〜、朝ご飯食べて学校行くよ〜』

 いつも鳴る目覚ましを止めベッドから起き、思いっきり伸びをしてからカーテンをいっぱいに広げると、朝の気持ちのいい光が差し込んでくる。

「さて、あいつを起こしに行くか・・・」

 これはもう日課になっている・・・・嫌な日課だ。まずは無難にノックをしてみる、が起きるはずが無い。

「名雪〜、勝手に入るぞ〜」

 普通イトコ同士だとしても、勝手に女性の部屋に入るのは気が引けるはずなのだが、こいつの場合は別だ、部屋の外から起こすのは無理無謀な事なのだ。

「ジリリリリ「ピピピピピピピ「コケコケコケ「お前はもう「うぐぅ、うぐぅ・・・・

 ・・・・毎度毎度思うのだが、なぜこの大音響の目覚し時計(最後の二つはどうかと思ったが)の中でこんなにぐっすり寝ていられるんだ?そしてこの目覚ましを止めないと俺の声さえ聞こえない。

☆・・・・しばらくお待ちください・・・・☆

「よし、これで最後だな、まったく・・・よくもこの中で寝ていられるな、しかも目覚ましの数は日に日に増えていってるし」

 そして俺は名雪を起こしにかかった、があらゆる手段を尽くしたがあの目覚ましの中で熟睡していた名雪をそう簡単に起こせるわけが無かった。

  ・ 尽くした手段その壱、足の裏をくすぐる。結果・顔面を蹴られ3mほどふっ飛びその後約五分間思考停止。

  ・ 尽くした手段その弐、鼻をつまむ。結果・アッパーを食らいダウン。

「く、くそ〜、いい拳と蹴りを持ってやがる、それならこっちも最後の手段だ、

 名雪、起きないとあの秋子さん特性ジャムを食べさせるぞ」

 バッ、と名雪がベッドから飛び起き部屋の隅で怯えて震えている。

「ひ、酷いよ祐一、冗談でも言っていい事と悪いことがあるよ、それにまだ6時半だよ、学校には早すぎるよ?」

 俺はこいつに言いたい、6時から起こしていた事を・・・・、まあ、それは我慢して、本当に忘れているな?こいつ。

「今日は卒業式だぞ、早く起きて和服着るって言っていたじゃないか」

 名雪は本当に今気づいたらしく秋子さんを呼びながら下へ降りていった。

 俺も朝食をとるため下に行こうとしたが名雪の着替えに遭遇するといけないので、歯を磨いてから自分の部屋で引越しの準備の続きをしていた。俺は水瀬家を出ることにしていた、あの二人と暮らすという約束を果たすため、しかし、これを話したときは名雪に猛反対され、秋子さんもさすがに二つ返事という訳には行かなかった、が俺や舞、佐祐理さんの説得によりやっとの事了承されたのだ。

「祐一〜、着替え終わったよ〜、朝ご飯食べて学校行こう〜」

 と名雪のゆったりとした声が聞こえてくる、しかし時計を見ればすでに・・・・。

「な・・・っ、早く起きてもこうなるのか!?」

 いや、早き起きたからこそまだこんな物ですんだのか?などと思っている暇もなく、名雪と一緒に家を出た。

「祐一〜待ってよ〜、眠いよ〜、走りにくいよ〜」

 名雪がなさせない声を出して俺の後ろを追いかけてくる、いつもなら名雪が俺のペースに合わせてくれるのだが、今日の名雪は寝不足な上に和服まで着ているのでとても走りにくそうだ。

「ほらがんばれ、あと少しだぞ」

 後ろの名雪を応援しながら校舎入った。

「まったく、こんな時まで遅刻ギリギリなんて」「まったく、お前達らしいよ」

 名雪より一足先に校門に入った俺を待っていたのは香里と北川だった。

「おお、香里、今日は着物が似合って一段と綺麗だな」

「お、おい、人の彼女を勝手に口説くなよ」

 北川と香里は、俺や名雪が知らないうちに付き合っていたのだ,しかもそれを知ったのは偶然隣町で腕を組んでいる香里と北川を見たのがきっかけだった。

「ありがとう相沢君、栞やお母さんもそう言ってくれたんだけど、潤は何も言ってくれ無かったわよねぇ」

「な、そ、そんなこと恥ずかしくて言えねぇよ」

 北川お前って意外とウブなんだな。

「祐一も私に一言も言ってくれなかった」

 いつの間に来ていたのか名雪が俺の事を恨めしそうにみている。

「な、名雪!!いつからそこに!?」

「えっと、香里の、潤は何も言ってくれ無かったわよねぇ、ってあたりから」

 気配すら感じなかった、などとふざけ合っていると、予鈴が鳴り響き周りの人が誰もいなくなっているのに気が付き四人で一斉に走り出す、俺も名雪も、香里も北川もこんな風に出来るのは最後だと知っている。

「やっぱりこうなるんだな俺達」

「私達、大学へ行ってもこんな事しているのかな」

「・・・・でしょうね」

 しかし最後ではない、皆同じ大学を合格し、四月からはまたこんな生活を送っているのだろう、遅刻しそうになって走ったり、ふざけ合って笑いあったり出来るのだろう・・・・・。

 そして式は終わり、俺達は卒業した。卒業生は在校生から花を贈られる。

「「はい、祐一先輩、名雪先輩」」

 俺達には二人の在校生が花を持ってきてくれた。

「おう、ありがと。美汐、栞」「ありがとう。天野さん、栞ちゃん」

 俺は少し二人と話してから(名雪は陸上部の子達から花を受け取っていた)、

 二つの見覚えがある影を見つけた、その二つの影も俺を見つけたらしく。

「あ、祐一さん御卒業おめでとうごさいます」「・・・・おめでとう」

「ありがとう、佐祐理さん」

 俺は、佐祐理さんのに笑いながら少し話していると“ポカッ”と無言のツッコミが頭に入る、が無視をして佐祐理さんと話をしている“ポカッ、ポカポカポカポカポカポカポカ・・・。無視されたのに腹を立て今度は連続でツッコミを入れてきた、が俺はまたもや無視をし続ける。そしてツッコミが終わり“おやっ?”と思っていると、佐祐理さんが俺の後ろを指差し。

「あ、あの〜、祐一さん、あれ・・・・」

 佐祐理さんが指した先には舞がしゃがみ込んで、のの字を書きいじけてしまっていた。いつもは無愛想な舞がいじけているのは少し可愛いかった、がここは慰めねばなるまい、俺が原因だし。

「悪かったよ舞、許してくれよ、な」

「イチゴサンデー」

 舞が発した言葉を聞き、俺は思いっきりコケた、しかも頭からモロに・・・・・・・。

 

「お前は名雪かぁーーーーっ!?」

 俺は体を起こして叫ぶとそこには名雪がいた。

「うん、そうだよ」

 俺は気がつくと白いベッドの上に寝かされている、周りを見渡すとそこは紛れも無い保健室だ、どうして俺はこんな所に居るんだ?舞や佐祐理さんは?

「俺はなぜこんな所に居るんだ?」

「祐一が頭を打って気絶したから」

「なぜ頭を打ったんだ?」

「コケたかららしいよ」

「なぜコケたんだ?」

「私に聞かれても」

「なぜ名雪に聞いてはいけないんだ?」

「そ、そんなこと言われても」

 ポカッ。誰かが俺の頭に無言のツッコミが入る、が無視する、と今度も連続でツッコミを入れてくる、がまたも無視する、今度は後ろの方で“チャキッ”という音がし、俺は背中に冷たいものを感じ振り返ると、舞は剣を大上段に構えて今にも振り下ろそうとしていた。

「や、やめろー!!剣捨てろと言っただろうがぁ〜!!」

「剣がないと私は本当に弱いから・・・・祐一に迷惑を掛けてしまう」

「舞、それはもういいから」

 あれはもう思い出だ・・・・二人だけの・・・・。

「・・・・祐一がコケて頭を打ったからここに居る」

 前触れも無く舞がそんなことを言うので俺はまたもやコケそうになった。

「何でお前は前振りも無く、突然言うんだ?」

「・・・・祐一腰が弱い」

 そうじゃなくて〜、何故お前は・・・・。

「まあまあ、祐一さんそれが舞の可愛さじゃないですか〜」

 ・・・・か、可愛さなのだろうか。って!?

「佐祐理さん!!ああ!!みんなも!!どうして!?」

 俺がこの状態で驚いていると香里が冷ややかな目で見ながら。

「相沢君が言ったんじゃないの、思い出作りにみんなで旅行に行こうって」

 そういえばそんな事を言った気がする、だが、しかーし!

「今からか!?しかもこの人数で!?」

 今居るのは、俺、舞、佐祐理さん、名雪、秋子さん、香里、北川、あゆ、の八名である、しかもみんなはもう荷物まで持っている。

「そうですよ、はいこれ、祐一さんの荷物です」

 ははははは・・・・、準備OKってことですか秋子さん。

「解りました。行きましょう、言い出したのは俺だし・・・・でも、何処へ行くんですか?俺はまだそこまで提案はしていなかったんですが」

「海の近い温泉宿、『天空旅館』です」

 ・・・・、物凄いネーミングセンスだな、天空って一体?

「ねぇ、もうそろそろ駅に行かなくていいの?」

 そのあゆの声が引き金となりみんなで一斉に走り出した。

「なあ香里、俺達って出てくるごとに走ってないか?」

「文句言わないの、私はともかく潤は出られるだけ感謝しないと、ねぇ、あ・い・ざ・わ・君」

 う、後ろから脇役の叫びが聞こえてくる〜(泣)

 

to be next

 

 

あとがき

 

終りました、終りましたよ。いや〜こんなに楽しんで書けたのは久しぶりです、いつも『テイルズ系』でしたが、一風変わって『Kanon』の小説です。

『テイルズ系』は暗かったり、人が死んだりしていましたが、今回は違います!!

思いっきりギャグです!!しかしKanonをやっていない人にはこれはわからないと思います、(特に舞とあゆのEND)と言っても俺もあゆはクリアしていません(ダメじゃん!)Kanon・AIRをやっていない人は今すぐプレイだ!!

PC、DCで好評発売中!!注意・keyの回し者ではありません、セガの回し者です(笑)

 

次回予告

旅立った祐一達はどうなるのか?秋子さんの陰謀とは?

次回Kanonn、第二章〜運命の出会い?〜

次回のKanonnは何かが起きる!!

「が、がお・・・コレって次回予告になってるのかな・・・?」

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