「ただいまー」
俺と遠坂が買い物から帰って来ると。靴が一組増えてきた。
この虎印は藤ねぇだな。……て、仕舞った姉さんの説明してなかった!!
俺は藤ねぇと姉さんが居るであろう居間へ急ぎ足で向った。
「お帰り、士郎。いくら自分の家だからって廊下を走るのは感心しないよ」
姉さんの明るい声が俺を迎えてくれる。いや、その前に。
……この状況は何なのだろう、部屋の隅でぽつーんとしている藤ねぇ。
それをオロオロしながらどうしたものかと悩んでいるセイバー。
何事も無かった様にテレビを見ている姉さん。
「……えっと。セイバー説明してくれない?」
「はい、実は。少し前にタイガがやって来まして、アサヒに対しての説明を求めてきたのです……」
「正直に話したらこうなったと言う訳か」
「いえ、それが違うのです」
セイバーの説明にはまだ続きがあった。
◇◆◇少し前・セイバー視点◇◆◇
「やっほー、みんな居るー?」
私とアサヒがゆっくりとお茶を飲んでいるといつもの調子でタイガがやってきた。
タイガにもアサヒの事を説明しなくては。
「……て、誰この人は?」
「タイガ、この人はシロウの本当の姉です。シロウを探してここまで来たそうです」
それを説明すると、小刻みに震えだした。
私は咄嗟に両耳を塞ぎ、アサヒを見る。それに気付いてアサヒも耳を塞ぐ。
「な、なんなのよ、それー!!!!」
Fate ――
We are the bone ( of my ( sword . 〜閑話休憩〜(
くっ、耳を塞いでいたとしてもこの威力ですか。
「一体どう言う事よそれ、シロウのお姉ちゃんは私なんだからねー!!」
駄々っ子の様に腕をぶんぶんと振り回しながら叫んでいる。
「あの、執りあえず一回落ち着きませんか?」
アサヒが落ち着かせようとするがそんなものは焼け石に水でしょう。
「しかも、肌が黒くて銀髪なんて不良みたいな格好したのなんて教師として認めないんですからねー!!」
「なっ、私のどこが不良なのよ!? これは深い家庭事情でこうなってるだけよ。……て言うか、教師!?」
なんだか収集が付かなくなってきましたね。
「いい加減に、なさい!!!!」
私が大声を張り上げると、二人の言い争いも止まる。
「タイガ、いくらタイガが認めなくともこれは事実なのです。
そしてあなたがシロウの姉と言う事も変わりようの無い事実なのですから」
冷静になった二人は自己紹介を始める。
「えっと、士郎の姉、刀崎 紫と言います。
今まで、そしてこれからも士郎がお世話になると思いますがよろしくお願いいたします」
アサヒは三本指を立て丁寧に挨拶をした。
「え、あ、いや。こ、こちらこそお世話になっています。
これからも末永いお付き合いをしていきたいと思います」
タイガも慌てて同じように頭を下げる。
「それで、教師って言うのは?」
一段落付いてタイガとアサヒが対話している。
「私は士郎が行っている私立穂群原学園の英語教師なの」
タイガはエッヘンと胸を張る。
「そうなんですか、士郎は何か部活をしてるんですか?」
「それが、二年までは弓道部に居たんだけど、ある事情でやめちゃったのよね」
それを聞いてアサヒが不思議そうな顔をする。
「そうなの? 私はてっきり剣道かと思ったわ。
あの筋肉の付き方はそうだと思ったんだけど、そっか背中の筋肉は刺突で鍛えた筋肉ではなかったのね」
……私は、アサヒの観察力に感心していた。
士郎はあれでも着やせするタイプだ、体を触った事があるならまだしも見ただけでそれだけの判断をするのは並みの洞察力ではない。
そして、先に言っていた筋肉の付き方を知っているという事はアサヒは少なくとも剣の道か医学に関わりがあると言う事だ。
「……紫さん、剣道やったことあるの?」
「いいえ、剣道は無いですが剣術なら少々」
「そっか、士郎が帰ってくるまで少しあるからちょっと道場行かない?」
そう、この一言がタイガの悲劇の始まりでした。
◇◆◇
二人は竹刀を正眼に構え向かい合っている。
「え〜と、なんでこんな事になってるのかな?」
アサヒは心底不思議そうに聞いてくる。
「大丈夫、私は剣道五段だし。セイバーちゃんはその私に勝ってるし」
それの何処が何で大丈夫なのでしょう?
「答えになってませ〜ん」
アサヒがちょっと泣きそうだ。
「じゃあ、行くよー」
タイガが竹刀を振り下ろすがアサヒはバックステップをして避ける。
「そっちがその気なら仕方ありません」
アサヒは切っ先を水平にし相手に向ける型をとると、一気に間合いを詰めて袈裟懸けに竹刀を振り下ろす。
タイガは一歩引いて避けるが切っ先の軌跡が変化し切り上げてきた。
さすがのタイガも咄嗟に竹刀を叩きつけるようにしてアサヒの竹刀を押さえつける。
が、アサヒの攻撃はそこで終わった訳ではなかった。
押さえられた竹刀はタイガの竹刀を滑るような形で突きに変化した。
「詰みです」
アサヒの切っ先はタイガの左胸の上で止められていた。
「うぅ〜」
あ、タイガが泣きそうだ。
「うわぁ〜ん!!」
泣いてしまった。
「あ、お〜い。藤村さん〜」
置いてけぼりにされたアサヒはなんとも情けない声を出し、手を空中にさまよわせていた。
「私もアサヒと勝負してみたいですが、今はタイガの事を優先させましょう」
私はアサヒを連れてタイガの後を追った。
◇◆◇士郎視点◇◆◇
「と、言うわけです」
へ〜、姉さんって藤ねぇに勝つほど強かったんだ。
「まあ、藤ねぇはご飯を食べれば治っちゃうよ。さて遠坂、手伝ってくれ」
「えっと、……いいの凛ちゃん?」
「さあ、士郎がいいと言うのなら良いんじゃないですか」
そう言って遠坂も専用のエプロンを付けて食事の準備を手伝ってくれてる。
「おじゃまします」 「おじゃまするよ、衛宮」
と、丁度桜と慎二がやってきたみたいだ。
「今日は夕飯の準備私の番でしたよ……ね?」
桜が居間に入ってきた瞬間固まってしまった。
「どうしたんだ桜? 衛宮と遠坂の事情でも見ちゃったのかい」
そう言って慎二は居間を覗き込んだ。
「……で、僕達にも納得できるように説明してもらえるかい?」
「えっと、昼前に俺の実姉が判明したんだ。あそこに居る人が俺の姉さん」
慎二はどうしたのか、眉間に指を当てて考え込んでしまった。
「……遠坂ちょっと」
「慎二、突然の事で混乱してるのは解るけど今回ばかりは事実よ。ちゃんと確かめたし」
今回ばかりって何だよ。
「桜もボーっとしてないで手伝ってよ」
「あ、はい。遠坂先輩」
桜の手伝いもあって夕飯の仕度は結構早く終わった。
「士郎ー、おかわりー!!」
「早い、早いよ藤ねぇ!?」
てか、セイバーより早いよ。
セイバーも、対抗意識燃やしてペースを早くしなくてもいいから。
「それにしても、士郎のご飯って美味しいわね。姉として負けてられないわ」
姉さんはムンといきり立つ、その姿勢をほんのちょっとでもいいからこの虎に見習ってもらいたいものだ。
「ん? どしたの、士郎」
藤ねぇが俺の視線に気付いて声をかけてくる。
「いんや、なんでもない」
それ以降、会話と言える会話は無くなった。
俺や藤ねぇ、遠坂と間桐兄妹は元々食事中は喋らない。
セイバーに関しては、コクコクと頷いて食べていて会話どころではない。
姉さんも食事中に喋らないタイプなのか別に気にした風は無かった。
「じゃあな、衛宮今日もご馳走になったよ」
「では、先輩方お邪魔しました」
「じゃあ、私も帰るね〜」
慎二、桜、藤ねぇの順に挨拶をしていき帰って行った。
「士郎の家っていつもこんな大所帯なの?」
「ああ、慎二はこの夏休みだけだけど桜や藤ねぇは殆ど毎日だな」
「そうね、桜は一時期慎二の看病であまり来なかったけど今じゃ殆ど来てるわね」
慎二は聖杯戦争の件で三ヶ月以上入院し、それからもリハビリをしながらやっと普通に生活するのに支障が無い程度まで回復した。
「そうなの、遠坂さんも大変ね」
「えっ、あっと……。けど、楽しいですよ」
暗がりで見えないが遠坂の顔は赤くなっているのだろう。
姉さんが来てから俺の知らない遠坂を少しずつ知っていくのが嬉しいと同時に少し悔しかったりする。
俺ってやっぱり独占欲強いのかなぁ?
「どうしたの士郎?」
考え込んでいると遠坂が顔を覗き込んできた。
「いや、なんでもないよ。じゃあ、ちょっとしたら遠坂の部屋に行くから」
そう言って家の中へ入る後ろで、またも姉さんにからかわれている遠坂が俺に文句を言っている。
◇◆◇
「まったく、あんな言い方したら誤解してくれって言ってるようなもんじゃない」
俺が遠坂の部屋で魔術の鍛錬を見てもらうのを姉さんは勘違いをしたらしい。
「で、出来たの?」
俺が今見てもらっているのは『ルーン魔術』である。
基礎をぶっ飛ばして究極の一である『固有結界』にたどり着いている俺は普通の魔術師とは逆に基礎を固めなくてはならない。
そして今やっているのはナイフに火のルーン『
CEN> 』を書き込み魔力を込め、それ自体に力を持たせようと言うものだ。( これが上手くいけば『
SIGIL 』のルーンなどで治療魔術も出来るようになる。( ただ、俺の場合パスを通すのもまず『剣』を通さねばならない。
だから、面倒なのは百も承知だが『剣』から繋がりで『炉火』の意味を持つ『CEN』にパスを通す。
これをものにすれば『CEN』から『太陽』や『熱』『創造』などの意味を持つ『SIGIL』につながる。
そこから『SIGIL』に含まれた『生命力』や『健康』などの意味を持ってくれば治療魔術も出来るようになる。
「ああ、少しだけどちゃんとルーンにも魔力が通ってる」
「……本当に少しね、ルーンが苦手な私だってもう少し出来るわよ。まさに士郎の場合付け焼刃よね」
ぬう、酷い言われ様だ。あながち間違いじゃないから言い返せないんだけど。
「でも、ルーンが苦手な遠坂に習ってるんだから俺だって苦手なのは当然のような気がするんだが」
「それもそうなんだけどね、私の場合どちらかと言うと相性が悪いのよ。
元々私が得意とするのは流動と変換の鉱物系、ルーンも流動と変換だけど文字は私と相性が悪いのよ。
その点、士郎の場合はそこら辺が関係ないから私よりは相性がいいはずなんだけど」
む、そうなのか?
―――コンコン
と、遠坂の魔術講座が一段落つくとノックの音が聞こえてきた。
「凛、士郎お風呂の準備が出来ました」
そう言って下がって行くセイバーに、礼を言いながらも少し考え込んでいる遠坂。
「どうしたのさ?」
「いえ、英国の『かつての、そしてこれからの王』に風呂焚きをやらせている私達って一体……」
英国人や円卓の騎士が聞いたら卒倒するかもしれないな。
「じゃあ、私入ってくるから。……覗かないでよ」
「覗くかッ!!」
まったく、遠坂の奴も人が悪い。俺がそういったからかわれ方苦手だっていうの知っててやるんだからなぁ。
「あ、シロウ」
居間に着くと姉さんとセイバーが仲良くテレビを見ていた。
「士郎、セイバーちゃんに聞いたけど剣を習ってるんだって?」
「ああ、まあね。まだまだだけど」
「私も一寸かじってるのよ。やってみない?」
ちょっとって、藤ねぇに勝っている人の言うことか?
「そうですね、私とばかりでは駄目だと思っていた所です。シロウ、やってみるべきです」
「そうだな、風呂に入る前に一汗流すのもいいかな」
「それじゃあ、行きましょうか」
◇◆◇
姉さんに一撃の下に倒された俺は道場に大の字で倒れている。
ああ、何で俺はあの申し出を受けてしまったのだろう。
「士郎、大丈夫?」
苦笑交じりに姉さんが聞いてくる。
「ああ、大丈夫。けど、凄いな姉さんは、俺じゃまったく歯が立たなかった」
姉さんは俺の攻撃を流したりかわしたりしながら俺の隙を見て攻撃してきたのだ。
「士郎はねぇ、どっちかに決めたほうがいいよ。
力で押していくタイプつまり剛の剣、技で流し避け隙をつくタイプつまり柔の剣。
私的には士郎は後者の方だと思うんだけど?」
つまり、バーサーカータイプかアサシンタイプかのどちらかを伸ばせと言いたいらしい。
俺の剣の型はあの赤い弓兵の物を参考にしてる。
そう言えば、ランサーとの戦いの時はあの音速の刺突を干将莫耶で流していた、それもふまえてやはり俺は柔の剣なんだろうな。
「そうですね、士郎の筋肉は筋骨隆々と言うより鞭の様な筋肉だ。力強いと言うより、収縮性を重視した動きがあっているのでしょう」
セイバーも姉さんの意見に賛成らしい。
「しかし、そうなった場合困ったことがあります。
私の型はどちらかと言うと剛の剣だ、これでは士郎の手本になる事が出来ない」
「ふふふ、大丈夫。柔の剣は元々力がそんなに強くない者でも剛の剣に勝てる様に編み出された物よ。
セイバーちゃんが剛の剣ならこれを幸いに剛の剣を受け流す訓練を重点的に出来るじゃない」
「ああ、そうだな。だからこれからもセイバーには俺の剣を見てもらわないと困る」
そう言うとセイバーが少し照れながら頷いた。
「さて、じゃあ二人とも風呂に入ってきてよ俺は二人の後でいいから」
「いいの? じゃあ、先入るね」
姉さんはお風呂好きなのか嬉しそうに風呂に向った。
「アサヒは、士郎に似ていますね。太刀筋も何処か似ている所がある」
「そうかな? 太刀筋は俺は二刀流だし姉さんは一刀だ、それなのに似てる?」
「ええ、似ています。特に真っ直ぐな所が」
……嬉しいのかな。姉さんと似ていると言われた事が。
to be next
・ライガー(雷牙)道場もとい、あとがき
イリヤ(以下イ)「何事も無いわね」
雷牙(以下雷)「そうだな〜。ほのぼのって感じだ」
イ「何なのよこの話は」
雷「……閑話休憩かな?」
イ「で、次は何があるのよ」
雷「流されたッ!? まあ、とんでもない事が起こりそうな、よ・か・ん」
イ・バ「……」
雷「ごめん、冗談だから無言でバーサーカー出して睨むのやめて」
イ「はぁ、いいわ。続きを早く書きなさいそうしたら許してあげる」
雷「師範代なのに蔑ろに去れているよ〜」(泣
イ「じゃあ、そうされたくなかったらいい作品を書きなさい」
雷「努力し、善処します」
・最後に乱文乱筆をお許しください
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