Kanon

― 白く霞む街で ―

 

 

 夢を見ている。

 それは7年前の、白く霞む街で過ごした日々のこと。

 悲しい出来事が起きてしまったこと。

 『力』を持った少女のこと。

 共に遊んだ少女のこと。

 そして―――

 

『朝〜、朝だよ〜』

『朝ご飯食べて学校行くよ〜』

『朝…』

 カチッ

 脱力するような声の目覚ましに起こされた俺は目覚ましのスイッチを切ると、再び布団にもぐりこんだ。

 眠い。

 俺はそのまま眠りの世界に……

「朝〜、朝だよ〜」

 旅立てなかった。

 バカな。目覚ましはさっき完全に止めたはずだ。

 俺は布団から顔を出し、辺りを見回す。すると一人の少女と目が会う。

「朝ご飯食べて学校行くよ〜」

 名雪本人だった。

 俺は見なかったことにして三度布団にもぐりこんだ。

「わっ、ちょっと祐一」

 ゆさゆさと体を揺すられる。

「これは夢に違いない。俺より早く名雪が起きているなんて……」

「う〜、ひどいよ」

 夢の中の名雪はなぜか不満そうだった。

「起きてよっ。起きないと遅刻するよ」

 夢の中でもうるさいやつだ。

「起きないとあのジャムを食べさせるよ」

 

 !!

 

 マズい。なぜだかは分からないが凄まじく嫌な予感がした。

 俺は布団を跳ね上げ、ガバッと起きる。

「おはよう祐一」

 名雪が爽やかな朝の挨拶をした。

「ああ、おはよう。それにしても名雪が俺より早く起きるなんて奇跡だな」

「ひどいよ〜。わたしだってたまには早く起きるよ」

「たまにはじゃなくて毎日早く起きてくれるといいけどな」

「それは無理だよ」

 まぁ、それもそうだが、笑顔で言うのはやめてほしい。

「それに何年たっても、何十年たっても起こしてくれるって言ったのは祐一だよ」

 確かに、遥か昔にそんな約束(?)をしたような気がしなくもない。

「はて?何の事だか存じませぬな」

 それを聞いた名雪は俺にくるっと背を向け、無言のまま部屋を出た。そして何かを持ってまた俺の部屋に入ってきた。

 おもむろに『それ』のスイッチを入れる。

『名雪。俺には奇跡は起こせないけど………』

「分かった。悪かった。俺が悪かったから止めてくれ」

 名雪は目覚ましを止め、

「わたしが起きれない時は起こしてくれる?」

 笑顔で訊いてきた。

「なるべく前向きに善処します」

 こうでも言っておかなければ後が怖い。

「分かればいいよ。分かれば」

 笑顔のままで言う。

 だめだ、逃げられない。

 何とかこの約束(?)を撤回する方法は無いのだろうか。

『奇跡でも起きれば何とかなりますよ』

 なにやら幻聴が聞こえてきた。

『でも、起きないから、奇跡って言うんですよ』

 絶望的だった。

 

 制服に着替え、下の階に降りる。

 秋子さんが朝食の準備をしていた。

「おはようございます」

「おはようございます祐一さん。パンとコーヒーでいいですか?」

「はい。お願いします」

 俺は挨拶を済ませると椅子に座る。

 横では既に、名雪がイチゴジャムのたっぷり乗ったトーストをかじっていた。

 その横顔を見ていてふと思い出したことがあった。

 今朝の夢のこと。

 昔の記憶。

 7年前起こったこと全て………

 全て思い出した。

 あれは確か……

「どうしたの?祐一」

 名雪の心配そうな声に現実に引き戻された。

「具合でも悪いの?」

 心配そうな名雪の声。

「いや、なんでもない。それよりも名雪」

「何?」

「俺は今日学校休んで出かけようと思う」

 名雪の表情が驚きに変わる。秋子さんも驚いた表情になった。

 まぁ秋子さんの場合、普段とあまり変わらないという説もあるが。

「大事な用事なんだ」

 俺はそう続ける。

「そう…。気をつけてね」

「夕飯までには帰ってきてくださいね」

 理由も聞かず信頼してくれることが嬉しかった。

 

 秋子さんに用意してもらった朝食を食べ、手早く準備し、玄関に向かう。

「あっ、祐一。ちょっと」

 そこで名雪に呼び止められる。

「どうした?」

「え〜と……今日何の日か知ってる?」

 今日は12月23日。

 もちろん俺は何の日か知っていた。だがまだ言う時じゃない。

「さぁ?明日はクリスマス・イブだが」

 名雪の表情にさっと陰がさす。

「……そう、ごめんね、変なこと聞いて。それじゃあ気をつけて」

「ああ」

 名雪に見送られ、俺は家を出た。

 

「ひどいよ」

 一人しか居なくなった玄関で名雪はそう呟いた。

 

「寒い」

 俺は誰にでもなくそう呟いた。

 もう冬も本番。しかもこの街だ。

 寒くないというやつが居たらそいつは人間辞めて神様か仙人にでもなった方がいいだろう。

 俺は理不尽な程の寒さにむしろ清々しい気分を覚えながら見慣れた道を歩き出した。

 

 やがて商店街が見えてきた。

 俺は手ごろなベンチを見つけ座った。

 辺りを見回すと時間のせいかほとんど人も居なかった。

「祐一。こんなところで何してるの」

 そのまましばらく座っていると不意に声をかけられる。

 舞だった。

「お前こそ何してるんだ?舞」

 舞は一瞬戸惑うような仕草を見せて……

「ここに祐一が居ると思って」

「奇遇だな。俺もここに居れば舞に会えると思った」

 嘘じゃない。ここに来たのは実際、舞に合おうと思ったからだ。なぜここに来れば合えると思ったのか、それは俺にも分からない。なぜかそう思ったのだ。どうやらそれは舞も同じらしい。

 そういえば舞には卒業式以来会っていない。何とか退学は取り消された後も何かと大変だったらしいが俺もその時秋子さんの事故とかで大変だったから会いに行く余裕なんてとうてい無かった。

「元気にしてたか?舞」

「はちみつクマさん」

 帰ってきた返事に俺は思わず苦笑した。おそらくこいつのことだからあれから誰かに質問されるたびに『はちみつクマさん』と『ぽんぽこタヌキさん』の二者択一で答えていたのだろう。

 俺が笑っていると……

「何?」

 舞が真顔で聞いてきた。

「いや、舞は相変わらずだと思ってな」

「?」

 意味が分からなかったのか怪訝そうな顔をする舞。

「そういえば魔物はどうしたんだ?もう倒したのか?」

 魔物―――

 忌み嫌っていた舞自身の『力』そのもの。

「うん。もう倒した」

 悲しい悲劇がもたらした『力』とは決別できたのだろう。

 そう答えた舞の表情は頼もしげに見えた。

 一瞬その表情が夢で見た幼い頃の舞の不安げな表情と重なる。

 だがそこには、

『…魔物がくるのっ』

『一緒に守ってよっ…ふたりの遊び場所だよっ』

『待ってるからっ…ひとりで戦ってるからっ』

 かつてそう言った少女の面影は無かった。

 大丈夫だ。舞は強くなった。もう俺なんかいなくても大丈夫だ。

 俺はそう確信するとベンチから立ち上がった。

「そうか、それならもう安心だな。」

 一回大きく伸びをして、

「じゃあな、舞」

 俺は駆け出した。

「あっ」

 後方で舞の声が聞こえたが振り返らずに走り続けた。

 そのまま俺は学校に向かう。

 そろそろ日も高くなってきた。学校は今昼休みだろう。

 

 俺は学校に付くとそのまま中庭に向かう。

 制服を着ていたので不審者扱いされることは無かった。

 中庭に着くと見知った顔を見つけた。

 香里と栞である。

「こんにちは、祐一さん」

 俺を見つけた栞が挨拶をした。

「ちょっと相沢君、学校休んだのにこんなところに来て。名雪も心配していたわよ」

 香里が呆れたような視線を俺に向ける。

 まぁ実際呆れられているんだろうが……。

「ところで香里、名雪は?」

「学食でまだ並んでる」

 あいつの要領の悪さは相変わらずのようだ。

「で?相沢君」

「何だ?」

「何しに来たの?」

 香里は真顔で俺に問う。栞も興味があるのか俺の方をじっと見ている。

「栞の顔を見に来た」

 一瞬香里の顔がぴくっと引きつった

「ふーん」

 香里がこめかみを引きつらせながらも冷静に反応する。

「そういえば栞、最近体の調子はどうだ?」

 とりあえず何か言いたげな香里を無視して俺は切り出す。

 栞は一瞬きょとんとしてから、

「ええ、最近は調子が良くて……。『次の誕生日まで……』と言われていたのが嘘の様です」

「そうか…」

 栞は医者に『次の誕生日までは生きられない』と告げられていた。だが彼女はそれを乗り越えた。

 完全に昏睡状態に陥ったその日、栞は夢を見たという。

 女の子の夢。

 羽の生えたリュックを背負っている女の子の夢。

 その少女は笑顔でこう言った。

「もう大丈夫だから……。心配しないで」と。

 不思議な夢だった。

 そして栞は夢から……いや、昏睡状態から目覚めた。

 誰もがもう目を覚まさないだろうと思っていたのに……。

 それどころかその日から栞は順調に回復していった。

 それは偶然だったのだろうか、それとも夢にまどろむ少女の奇跡だったのだろうか。

「あの女の子は誰だったのでしょう?会ったような気がするんですけど、どうしても思い出せないんです」

 栞が寂しそうに言う。

 思い出せないのも無理はないのかも知れない。だって彼女は……

 キーンコーンカーンコーン

 その時予鈴が鳴り響いた。

 香里は立ち上がると、

「で、相沢君。これからどうするの?制服着てるんだから午後の授業受けていったら?」

「いや、これから用事がある。名雪にはよろしく言っといてくれ」

 そういえば名雪は来なかったな。そんなに時間がかかっているのだろうか?

「分かったわ。でも明日からはちゃんと学校に来るのよ」

「分かってるって」

 俺は苦笑しながら答え、

「それじゃあまた明日な」

 と言って、駆け出した。

 生徒や教師の視線から逃れながら俺は校外に出る。

「さてっ、と」

 誰にでもなくそう呟いて俺は再び商店街に向かった。

 

 朝もそうだったが中途半端な時間のせいか商店街の人通りはまばらだった。

 とりあえず俺は時間をつぶすためコンビニに入り雑誌を読む。

 こんな時間学生服でうろついているせいか店員に不審な目で見られたが、とりあえず無視し、雑誌を一冊買ってからコンビニを出る。

 ベンチを見つけ座り、俺は今買った漫画雑誌を読み始めた。

 

 やがて日も傾いてきた。学校も終わっていたので商店街には学生の姿も見え始める。

 そろそろ虚しくなってきた。

 商店街に居ても……。こんなことをしていても何の意味も無い。

 だって……。彼女はもう居ないのだから。

 思い出すのが遅すぎた。

 7年前の……、自分の街に帰る日の前日、何が起こったのかを……。何故あの時自分は絶望し、全てを拒絶していたのかを。

「ちょっと、にいちゃん」

 …………………

「お〜い、生きてるか〜?」

 いきなり声を掛けられ、我に返る。声の主は人の良さそうな中年のおやじだった。そして俺はそのおやじの顔に見覚えがあった。

「こんな所でぼ〜っとして、どうかしたのか?」

 それはたい焼き屋のおやじだった。

「いえ、別になんでもないです」

 俺は極力平静を装って答えた。

 ぐううぅぅぅぅぅぅぅ………

 そのとき俺の腹の音が盛大に鳴り響いた。

 しまった。そういえば朝から何も食べていない。

「なんだ、腹が減ってたのか。どうだい?うちのたい焼きでも」

 おやじはにこやかな営業スマイルを浮かべた。

 

「5つ下さい」

 結局俺はおやじに押し切られ、たい焼きを買うことになった。甘いものはあまり好きではないのだがこの際仕方が無い。

 おやじは「あいよ〜」と返事し袋にたいやきを詰め始めた。

「にいちゃん、たしかあの羽リュックの女の子と知り合いだろ?」

 おやじがいきなり切り出す。

 しまった。まだ食い逃げされたことを覚えていたのか。ひょっとしたら知り合いということで金品を巻き上げ………もとい、慰謝料を不任意に請求されるかも知れない。

「彼女、最近見ないけど何処にいったんだい?」

 もはやこれは質問ではなく『尋問』なのかも知れない。だが真実を語ったところで信じてくれるはずも無いだろう。

「あゆは……、彼女は自分の街へ帰りました」

 俺はとりあえずそう答えた。しかし―――

「そう……か。残念だな。もうあの嬉しそうな顔は見れないかも知れないな」

 おやじの言った言葉は俺の予想したものとは大きく違っていた。

「嬉しそうな顔?」

 俺は思わず聞き返していた。

「ああ、この辺りを通りかかったとき偶然見たんだよ。一緒にたい焼きを食べているあんたとあの女の子をな。あの子は本当に嬉しそうに笑っていた。あんたと一緒にたい焼きを食べるのがよほど嬉しかったんだろうな。まぁ、お代はちゃんと払ってもらいたかったがね」

 それを聞いて俺はふと思い出す。

 あゆの笑顔。

 本当に何の屈折もなく笑っていた。見ているこっちまで楽しくなったのを覚えている。だがもうその笑顔は届かないところにある。一緒に過ごしたあの思い出さえも儚い夢だったのだろうか。

「ホラッ、出来たぞ」

 たいやきの入った紙袋を渡される。中を見ると、そこには出来たてのおいしそうなたいやきが沢山入っていた。

 明らかに5つどころではない。

「おじさん、これは」

「ああ、サービスだと思ってくれ。お代も5匹分しかいらんよ。持っていきな」

 おやじは5匹分のお金を俺から受け取ると、そのまま去って行った。

 カ、カッコイイ

 不覚にもそう思ってしまった。

 …………ってちょっと待て!『そのまま去って行った』って、屋台の方は大丈夫なのか!?おい!おやじ、おやじぃぃぃ!………。

 行ってしまった………。

 ま、まぁいいか。

 

 適当なベンチに座って、たい焼きを食べる。

 なんか今日はよくベンチに座る日だな。とそんなことを思う。

『やっぱりたい焼きは焼きたてが一番だね』

 ふと、そう言っていた少女のことを思い出す。あの時はそうでもなかったが今はそう思う。たい焼きは焼きたてが旨い、と。

 何個かのたい焼きを腹に収め、紙袋の口を閉じた。

 今日はこれ以上腹を膨らますわけにはいかない。なにせ今日は御馳走だろうからな。

 俺はたい焼きの入った袋を小脇に抱え、歩き出した。

「祐一君」

 その時不意に声をかけられた。

「なんだ、あゆか」

 声の主はあゆだった。だがこいつは俺の希望的観測から生まれた幻なのだろう。だって……。あゆはもうこの世にはいないのだから。

「何?その袋」

「これか?これは紙袋だ」

「うぐぅ、そんなことは分かってるよ。中身が何って訊いてるんだよ」

「たい焼きだ」

「え!?」

「親切なたい焼き屋のおやじにサービスしてもらったんだ」

 そこで俺は少し遠い目をする。

 だがあゆはまったく聞いていないようだ。たい焼きの入った袋をじーっと見つめている。

 俺はため息一つして……

「食べるか?」

 と訊いた。

「おいしいよ、祐一君」

 というかもう食ってた。

 あゆの手にはしっかりとたい焼きと紙袋が握られていた。

 いつの間に盗ったんだろう?

 まぁそれはいいとして。

「あゆ、約束守れなくてゴメンな」

 たい焼きを食べていたあゆの手が止まる。

「いいよ、またこうして逢えたんだし………、それにまだ守れないと決まったわけじゃないよ」

 約束―――

『今度会うときは学校で』

 そんななんでもない約束を俺は守ることが出来なかった。

 あの時―――

 全てを拒絶し、絶望していた俺には悲しい思い出が眠る『学校』なんていらなかった。

「ボクは思い出してくれただけでも十分だよ」

 そう言って笑うあゆ。

 だが俺はそんな自分をどうしても許すことが出来なかった。

 だからせめて―――、せめてもう一度……

「それならもう一度約束しよう。今度……、また会うことが出来たなら、次は俺達の学校で……」

 ただの自己満足だった。目の前のあゆはただの幻なのだ。

 もうあゆはいない。だからこの約束を守ることなんて出来るはずが無い。

「うん…約束、だよ」

 そう言うあゆの顔を見て俺は既視感を覚えた。

「指切り……、当然するよな?」

「もちろんだよ」

 愚問だったな。

 鮮やかな夕焼けの中、俺とあゆはお互いの小指を絡ませた。

 

「今日はありがとう、祐一君」

「なんだ?改まって」

「うん、なんとなく言いたかったんだ」

 なにやら真剣な雰囲気が漂っているが、依然たい焼きの袋はあゆの手によってしっかりと握られている。

 いつの間にこいつの所有物になってしまったのだろう?

 でもまぁ、こいつが食うならたい焼き屋のおやじも本望だろう。

 だから安心して成仏してくれよ、頼むから。

「何にやにやしてるの?」

 顔に出ていたらしい。

「いや、別になんでもない」

「?」

 怪訝そうな顔をするあゆ。

 まあ無理も無い。俺だって真剣な話をしている時に相手が突然にやにやしだしたらちょっと引くぞ。

「あ、ボクこっちだから」

 いつの間にやらこんなところまで来ていたらしい。

「一人で帰れるか?もう辺りは真っ暗だぞ」

「うぐぅ、帰れるもん」

「そうか、じゃあな。あゆ」

 俺は別れを告げて歩き出す。

「……うん、またね。祐一君」

 その声を聞き、俺がもう一度振り返った時にはもうあゆの姿はなかった。

 代わりにさっきまであゆがいた位置にたい焼きの袋が落ちていた。その横には先程あゆが食べていた、食べかけのたい焼きも落ちている。

 幻ではなかった。

 それはその人物がそこに存在していたという確かな証拠だった。

 俺は空を見上げ……

「約束だぞ、あゆ」

 そう呟いた。

 もうそろそろ日も暮れる。

 

「ただいま」

「お帰りなさい、祐一さん。今食事の準備が出来たところですよ」

 笑顔の秋子さんに迎えられる。

 やっぱり俺の帰る場所はここなんだなぁ、としみじみ思う。

 というかここ以外に俺が帰る場所なんてあっただろうか?

 ……………

 やめよう。考えても虚しくなるだけだ。

 俺が部屋に入ったときにはテーブルの上に料理が所狭しと並んでいた。

「おかえり〜、祐一」

 名雪は既に椅子に座っていた。だが料理には手をつけていない。俺を待っていてくれたのだろう。

「ああ、ただいま。それにしても―――」

 俺は大げさにテーブルの上の料理を見回し、

「凄い御馳走ですね」

 と正直な感想を漏らす。

「それはそうですよ、だって今日は―――」

「ストップ!」

 俺は続きを言おうとする秋子さんをすんでのところで止めた。

 

 夢を見ていた。

 それは7年前の、白く霞む街で過ごした日々のこと。

 悲しい出来事が起きてしまったこと。

『力』を持った少女のこと。

 共に遊んだ少女のこと。

 そして―――

 そして、絶望する俺に雪うさぎを作ってくれた心優しい少女のこと。

 今日という日にこの夢を見たのはただの偶然だったのかも知れない。

 だが確かに今日、俺はその夢を見た。

 それも一つの奇跡だったのだろう。

 そして、今日が特別な日であったことを感謝して―――

 心優しき一人の少女の幸せを願って―――

 俺は言った。

 

『名雪、誕生日おめでとう』

 

 

 

 あとがき

 申し訳ございません。全て私が悪い!

 やっぱりKanonの小説なんて初めて書いたからなぁ。大体12月23日に仕上げるはずがどうしてこんなことになったんだろう?

 そして真琴ファンの方、ごめんなさい。彼女は話の都合上登場させることは出来ませんでした。

 さて懺悔はこのくらいにしておいて(反省しろよ!)作品の解説をしましょう。

 題材は言わずと知れたKanon、そして名雪のグットエンド後の名雪の誕生日という設定です。

 ちなみに作中で12月23日はもう冬休みじゃないの?とかいう質問については一切答えることが出来ませんのであしからず。

 あ、もうこんな時間、それでは!(逃)

 

 追伸 感想ください。このさい苦情でもいいっす。

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