テレフォン

 

 

 

 居間にいると、突然電話が鳴り響いた。

 もう名雪は寝たらしいし、秋子さんは風呂に入っているようだ。

 しぶしぶ立ち上がって電話を取る。

 

「はい、もしもし」

 

 が、受話器からは何も聞こえてこない。

 切ろうとしたところで聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「……ゆういち」

 

 頭が一瞬で覚醒した。

 受話器から聞こえてきた切羽詰まった声の主は、間違えようもない。

 

「どうしたんだ、舞!」

 

「祐一……たすけて」

 その弱々しい声が、いつかの景色と重なる。

「ああ、分かった」

 

 全く訳が分からないのに、俺は反射的に答えていた。

 

 舞の言葉を聞こうと、受話器を痛いぐらいに耳に押し当てる。舞は救いを求めるように言った。

 

「一般的に中性子の質量は量子の質量の何倍か、A1800倍、B1820倍、C1840倍、D……」

 

「ちょっと待てっ!」

「時間がない。黙って。D1860倍、どれ?」

「え、あ、な、何だ」

「早くっ! あと五秒!」

 

「えっと、たぶんCだ」

 

 そこで、ぷつんと電話が切れた。

 しばらく待ってたが、かかって来る様子はないため、寝ることにした。

 

 舞がどこからか一千万円を入手してきたと知ったのは翌日の事だった。

 

 

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