Panic Party 第十一回 THE URGENT SITUATION
志貴が有彦を倒し、アルクェイドの援護に向かおうとしていたときにアルクェイドは戻ってきた。
しかも気絶したシエルを抱えている。
それを見た志貴は安心して息を吐いた。
「なんとか勝てた…」
みたいだなと続けようとしたところでアルクェイドの体がぐらりと傾ぐ。そのまま倒れこみ、シエルの下敷きになってしまった。
「大丈夫か、アルクェイド!?」
慌てて駆け寄る志貴。アルクェイドはなんと言うかお疲れの様子だった。息もかなり荒い。
「ちょっと、大丈夫じゃ…ない…かも。うぅ、しえる重い」
シエルを退けてやる志貴。
「そう言えばアルクェイド。次は連戦らしいぞ」
志貴はゲーム開始前にスタッフの人にそう聞いていた。
「えー。もうわたし疲れちゃったよ」
ごろりと寝転がるアルクェイド。志貴は溜息を吐いて、
「参加を決めたのはおまえだろ? 俺も最後まで付き合ってやるから…」
志貴の言葉は途中で遮られた。突然視界いっぱいに『WARNING』と表示されたからだ。
「ななな何だぁ?」
『ふぃーおん、ふぃーおん、ふぃーおん…』
凄まじい形で決着が着き、呆然とする客を余所に、その音が会場中に響き渡った。
「な、何だと? そんな、そんな馬鹿な…」
和樹が何が起こったのかさっぱり分からず呆然としていると、大志が立ちあ上がって呟いた。信じられない、という表情。
「大志?」
「まさか、信じられん…」
呼びかけても反応しない。大志が動揺することなどめったに見ないため、和樹は大いに狼狽した。瑞希に振り返っても、彼女はふるふると首を振るだけ。何が起こったのか微塵も理解していないようだった。
「おい、大志!」
和樹は呆然としている大志の目の前で手をぶんぶん振った。大志もようやく気付き、和樹の方を見る。
「む、我輩としたことが。すまない。少し取り乱してしまった様だ」
「別に謝らなくていい。それよりも、一体何が起こっているんだ? はっきり言って尋常な事態じゃないぞ、これ」
大志はむぅと唸り、スクリーンを指差した。そこには大きく赤い字で『WARNING』と表示されている。
「あの文字が見えるな、同士。あの文字は『システムに何らかの異常事態が起きたとき』及び『外部からの不正アクセスが発覚したとき』に表示されるようになっている」
「それって…つまり?」
「今大会に向けてデバッグは完璧にこなした。ならば、システムの異常はありえない。セキリティも完璧だ。ハッカーが侵入するような隙間は存在しない」
「えっと…」
「全く原因が分からない異常事態だということだよ同士。すまないが、我輩には急用ができたようだ。失礼する」
言うが早いか、大志はダッシュで走り去った。『関係者以外立ち入り禁止』のドアを空けてどこかに消えていく。
「…なんなの、一体?」
「…さぁ、何だろうな」
呆然と呟く瑞希に、やはり呆然と呟く和樹だった。
本当に今日はどうかしている。志貴は家に帰りたくなった。それも、今すぐに。
どうしてこんなわけの分からない状況になってしまうんだろうと思う。
「おかしい、絶対におかしい」
先程の警告音も『WARNING』も既に消えていた。しかし、
「どうして目の前の空間がばちばちとか音を立てながら歪んだりしているのでしょうか…」
わからない、全然わからない。
「アルクェイドの悪戯…じゃないよな」
「違うわよ。大体空想具現化も使えないのに空間に干渉できるわけないじゃない」
さっきしてたくせに…という言葉を飲み込んでその歪みを凝視した。ぐにゃりと、いっそう大きく大きく歪んで、ダレカがそこから出てくる。
出てきたのはふたり。赤いバンダナをした剣士風の青年と、ピンク色の髪をポニーテールに結った女の子だった。女の子は何故かホウキを持っている。
「ダレ?」
「知らない」
志貴の問いに間髪入れずに答えるアルクェイド。
「ナニ?」
「知らないって」
とりあえずふたりが誰なのか考えてみる。一秒ほど思考して、わからないと結論を出す。
「そうだ、分からないなら訊けばいいじゃないか」
そう結論付けて、ふたりの方に歩き出す遠野志貴。
『Ready?』
「ちょっと、待てぇぇぇぇぇ!」
先程の異常事態の後遺症か何かは知らないが、VLSはあっさりと戦闘モードに切り替わろうとしている。というか既に切り替わっている。
志貴が横を見ると、アルクェイドはもう身を起こしていた。
『Fight!!』
「うぅ、嫌だよぅ」
とか呟きながらもメガネをポケットに突っ込み、ナイフを構える志貴。
奇妙な闘いはこうして始まったのであった。
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