Panic Party  第十八回  消えた長森




 RRRRRRR…

 途中、茜と別れて家に付き、制服を着替えようとしたところで電話が鳴り響いた。

 電話は玄関前と由起子さんの私室にある。

 まだ由起子さんが居るかもしれないので少しだけ取るのを待ってみる。

 どうやら由起子さんはもう仕事に行ったようだ。

 3コール待ってから俺は電話に出た。

「もしもし、小坂ですけど」

 俺の苗字は折原だが、この家の主は叔母の小坂由起子さんだ。

 だから電話に出るときは小坂と名乗るようにしている。

『あ、もしもし、浩平君?』

 相手の声には聞き覚えがあった。

 長森のお袋さんだ。

『瑞佳がそちらにお邪魔してない?』

「いいえ、今日はまだ来てませんけど」

『そう…』

 その声からは明らかに落胆の色が滲み出していた。

「一体どうしたんですか?」

『うん、瑞佳ね。昨日学校に行ってからまだ帰ってないのよ』

 なん、だって?

「長…瑞佳なら放課後一緒に商店街に行きましたよ」

『え、そうなの。それで?』

 お袋さんの声がわずかに跳ねる。

「途中で別れました。何か用事があるらしくて」

『用事…』

「何か心当たりがあるんですか?」

『…うん。でも、そんなに大した用事じゃないはずだから』

「…そうですか」

『浩平君。悪いんだけど…』

「分かってます。これから商店街を探してみますよ」

『ごめんなさい…』

「謝る事じゃないですよ。それよりも、何か心当たりはありませんか?」

『う、ん。あの子、商店街の割と奥の方に用事があったみたい」

「そうですか…。それじゃあ」

『うん、お願いね』

 受話器を下ろした。

「………」

 長森が親に無断でどこかに泊まるということはありえない。

 つまり…何かが起きたのだ。

 最悪の場合…

「さて、どうする?」

 俺は暗い考えを首を振って打ち消して自分に問いかけた。

 大丈夫、俺は冷静だ。

 とにかく状況をまとめてみよう。

 長森は何かの用事があって、商店街の奥に行って、姿をくらました。

 まとめるも何も、情報が少なすぎた。

 これで闇雲に探し回ったところで見つかりはしないだろう。

 とりあえず何でも良い、何か情報が欲しい。

 こう言うときに頼れるのは…

「…住井か」

 家に居るかは分からないが、電話してみるか。

 俺は引き出しから電話帳を引っ張り出して住井に電話をかけた。

 しかし、すぐに留守電に繋がってしまった。

 親御さんも仕事に行ってしまったらしい。

「…待てよ」

 確かあいつは携帯電話を持っていたはずだ。

「いや…」

 だめだ、番号が分からない。

 聞いた覚えはあるが、あいつの携帯に書ける用事がないからすっかり忘れてしまった。

 俺も携帯は持ってないしな。

「………」

 いきなり手詰まりだ。

 もうこうなったら直接商店街に行って聞き込みでもするしかないか。

 RRRRRRRRRRR…

 電話だ。

「はい、小坂ですけど」

『え、あ? ご、ごめんなさい間違えました』

 その声には聞き覚えがあった。

「ちょ、待て、切るな七瀬。俺だ。折原だ」

『え? 折原? こんな時に冗談は止めてよ」

「別に冗談じゃないって。それよりもどうした?」

「あ、うん。瑞佳のお母さんから聞いた?」

「あぁ、これから商店街に探しに行こうと思ってたところだ」

「そうなの。それならあたしも行く」

「助かる。それと、すまんが茜と澪にも連絡取ってくれないか? なるべく人手が欲しい」

「うん、分かった。でも澪ちゃんの家の番号知らないわよ、あたし」

 そう言えば俺も知らないな。

「多分茜が知ってる。そっちから先に連絡してくれ。俺も先輩に連絡するから」

 茜と澪は仲がよく、休日などもたまに一緒に商店街に出かけているらしい。番号も知っているだろう。

「先輩って、川名先輩? でも先輩って…」

 七瀬はそこで口篭もる。

 言いたい事は分かる。

 盲目のみさき先輩では連れていっても役に立たないということだろう。

「連絡をとるだけだ。ひょっとしたら何か知ってるかも知れないからな」

「そう、分かった。じゃあ三十分後に商店街に集合でいい?」

「ああ、そうする」

「じゃあね。また後で」

 受話器を下ろした。

「確か、先輩の電話番号は…」

 たしか今年もらった年賀状に書いてあったはずだ。










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