Panic Party  第二十一回  追跡、そして激突。






 集合場所場所にはもう七瀬と澪がいた。

「あ、折原。どう? 何か手掛かり見つかった?」

「あぁ。というか。とんでもないことになった」

「とんでもないこと?」

 怪訝そうな顔をしている七瀬に茜が説明を始める。

「実はですね…」

 かくかくしかじか…

「ホントなの? それ…」

「残念ながら本当らしい。学校はいま完全に占拠されてる」

「そう…。でも、その話だと、瑞佳は巻き込まれてないんでしょ?」

「それがよく分からん。住井の話ではこの商店街にそいつらの仲間がいたらしい。長森が行方不明になってる以上安心はできない」

「そう…」

 七瀬は俯き呟いた。

「じゃあ、これからどうするの?」

 七瀬の問いに茜が答えた。

「また、地道に聞き込みするしかありませんね。今度はその黒服のひとの方向で…」

「…しかないだろうな。とにかくまた二手に分かれて…」

『あのね』

「うおっ!」

 目の前に突然スケッチブックが表れて驚いた。さっきから会話に割りこむタイミングを計っていたらしい。

「どうした? 澪」

 澪はスケッチブックにサインペンを走らせて、

『さっきからずっとこっちを見てる人がいるの』

 全員にさっと緊張の色が走る。

 とっさに何か言おうとする七瀬の口を押さえて俺は小声で言った。

「どこだ?」

 澪はスケッチブックに矢印を書いて斜めに掲げた。

 全員がその矢印の方向に目を向けて、ベンチに座って横目でこちらの様子をうかがっている背が高い男と目が会った。

 しかし、それがまずかった。

 全員が一緒にそっちを見たために、その男に気付かれてしまった。

 ダッ!

 そんな擬音が似合うほどの突然さで、男は逃げ出した。

「待てっ!」

 当然追いかける。

 そんな怪しい人物を逃がすことはできない。だが、

「速…いっ!」

 男は速かった。必死で追いかけてもその差は縮まるどころか開くばかり。

「く、そ…」

 手掛かりが逃げてしまう。

 長森への手掛かりが…

「ちくしょう…」

 息が保たない。

 その男はその速さを保ったままで門を曲がった。

 俺も曲がろうとして、足がもつれた。

「うぉ!」

 派手に転ぶ。しかも運悪く水溜まりに突っ込んでしまった。

「大丈夫!? 折原!」

 後ろから七瀬が駆けてきた。

「はぁ…はぁ…俺は…大丈夫。でも逃がしちまった」

 びしょびしょになってしまった服の水滴を気休め程度に手で払いながら立ち上がる。

「そう…」

 七瀬は残念そうに通りの向こうに目を向けて、

「…でもないみたいよ?」

 地面に倒れて気絶しているさっきの男を指差した。

「え……?」

 なんで? と思うよりも少し早く、情けない声が聞こえてきた。

「うぅぅ、痛いよぉ…」

 この声は…

「…みさき先輩?」

 みさき先輩は痛そうに額をさすっていた。

「目がちかちかするよぉ…」

 みさき先輩は涙目になりながらゆっくりと立ち上がった。

 七瀬は先輩の近くにばたんQしている男の元に歩み寄り、

「…完全に気絶してるみたいよ? これ」

 足でつついて確認した。

「もしかして、留美ちゃんと浩平くん?」

 痛みから立ち直ったらしい先輩がきょろきょろと辺りを見渡しながら言った。

「ここですよ、先輩!」

 大きめの声で言って位置を教える。

「あ、そこか。浩平君。すごく痛かったんだけど、わたし何にぶつかったの?」

「人」

「え、あ、そうなの!? ぶつかった人ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「気絶してる」

 先輩の動きが固まった。

「………」

 先輩は無言でにこりと微笑んで踵を返した。

「先輩、どこに行く気ですか?」

 その襟首を引っつかんで、恐らくは逃げようとしていた先輩を止める。

「え、いや、うん、あれだよ。じょ、浄化槽の点検を…」

「そんなことは業者がちゃんとやってくれます」

「学校に行かないと…」

「先輩は既に卒業していて、さらに今は夏休みです」

「きょ、今日は良い天気だね?」

「雨です」

「…ぐすん」

 先輩が涙目になる。少しからかいすぎたか…。

 そう思うと同時に俺の後頭部に鋭角なチョップが入った。

「折原っ! 遊んでないで手伝いなさい! この人結構重いんだから」

 口調とは裏腹に以外と軽そうに男を引きずっていく七瀬。

「…えっと、何かあったのかな?」

 先輩はひとり不思議そうな顔をしていた。










  


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