Spiral in Hearts

 



『空にいる少女』

 

俺はその少女を探していた。

相棒はたった一つ、古ぼけた人形。

家に伝わり続けている"法術"を用いた人形劇。

手を触れずとも動き出す・・・だけの力しかないが。

それで路銀を稼いでいた。

 

そして偶然訪れたこの町で、

俺は彼女と出会った。

 

『神尾 観鈴』

 

それが彼女の名だった。

 

「にははっ」

 

よく笑って、とても強い子だと思った。

そして――

 

「ただ・・・もうひとりのわたしが、そこにいる。そんな気がして」

 

空を仰いで彼女は言った。

 

「空を飛べたらいいのに」

 

と。

 

そして彼女は夢を見る。

 

『空にいる夢』

 

『過去へ遡る夢』

 

夢を見るにつれ、

過去へ遡るにつれ、

彼女は身体の自由を失っていった。

 

『女の子は夢を見るの』

『最初は空の夢』

『夢はだんだん、昔へと遡っていく』

『その夢が、女の子を蝕んでいくの』

『最初は、だんだん体が動かなくなる』

 

母親の言葉。

絶望の言葉。

・・・言葉はまだ続きがある。

 

『それから、あるはずのない痛みを感じるようになる』

 

傷も無いのに、何も無いのに、彼女は痛みに苦しむようになった。

 

『そして・・・』

『女の子は全てを忘れていく』

 

俺のことさえも・・・?

 

『いちばん大切な人のことさえ、思い出せなくなる』

 

全てを・・・?

 

『そして、最後の夢を見終わった朝・・・』

 

聞きたくなかった。思い出したくなかった。

 

『女の子は、死んでしまうの』

 

絶望。

 

何も出来ない。

何もしてやれない。

ただ・・・近くにいるだけ。

 

ズキン・・・!

背中に痛みが走る。

傷を付けられた瞬間のような痛みとは違う。

古い傷が疼く、そんな痛み。

 

『二人の心が近付けば、二人とも病んでしまう』

 

この痛みが?

 

『二人とも助からない』

 

俺も・・・おれも・・・オレモ・・・

シ ン デ シ マ ウ ノ カ ・・・ ?

 

『痛みはじめてしまえば、それから先は早かった』

 

離れよう。

彼女の元から。

 

『知っていたのに、私はなにも出来なかった』

『誰よりもその子の側にいたのに、救えなかった』

 

病んでしまうから。

それなら、離れれば助かるかもしれない。

町を出よう。

・・・歩けばいい。

二度と会うことの無いように遠くへ。

 

「そろそろ、出ていこうと思うんだ」

 

笑顔を裏切って。

 

「ずっと、一緒にいてくれる・・・そう言ってくれた」

「悪いな。そのことに関しては謝る」

 

本心。

 

「性分なんだ。俺は一カ所に留まっていられないんだ」

 

こんなもの言い訳だ。

 

「これからがんばろうとしてたのに・・・」

「往人さんにいてほしいな」

「ずっといてほしいな・・・」

 

俺まで病んでしまうんだよ・・・。

 

「おまえが俺を苦しめてるんだよ。わかるか」

「これ以上おまえと居続けたら、俺のほうが先に倒れる」

 

知っていた。

この言葉を突きつければ彼女は諦めると。

 

俺は・・・

神尾家を後にした・・・。

 

モ ウ ア ウ コ ト モ ナ イ

 

そう思いながら・・・。

 

でも、俺は――――

 

summer lights

 

 

あとがき

今回は作品も遥蒼です。

AIR本編を簡単に、そりゃもう簡単にしただけ。

題の『Spiral in Hearts』"心の内の螺旋"ってつもり。間違ってないよね?

往人母の言葉がなかったら書いてないね、コレ。

それくらい往人母の言葉は重要なわけですよ、ハイ。

しかも長い。ルーズリーフで裏表2枚は楽です。多いです。

それを書き写したときには驚いたね。

「なんでこんなに多いん・・・?」

って感じで。しかも雑に書いたせいで・・・。

「なんて書いてあるんだ・・・?」

と、かなり愕然。大丈夫か、俺。

あー、まぁコレ書き切ったからイイや。

さて、次は何書きますかいなぁ・・・?

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