Last regrets

 

 私は逃げた。

 辛く、悲しいその現実から目をそむけた。

 妹を――大好きな栞を、存在しなかったように

 

「妹なんていないわよ」

 

 そう言って逃げた。

 

「起こらないから奇跡って言うのよ」

 

 そう言って現実から目をそむけた。

 でも…栞はそんな私のことをいつも思っていてくれた。

 でも…私はやっぱり逃げるしかなかった。

 近い将来に消えてしまう存在。それがわかっていたから…。

 

「私が栞のお姉ちゃんじゃなかったら…」

 

「私が栞を大好きにならなかったら…」

 

「栞が近い将来、私の前から消えていなくなってしまう

そんな存在でなかったら…」

 

 どうしてあげることも出来ない私は…

 

「妹なんていないわよ」

 

 そうするしかなかった…。

 

 でも彼は私と違う道を選んだ。

 目をそむけた私とは逆に、一緒にいることを選んだ。

 悲しい未来を受け入れようとした。

 栞を受け入れようとした。

 私とは逆に…。

 

「私、お姉ちゃんと同じ学校に行くの憧れてたの」

 

 そう言って栞は学校に行くようになった。

 必死に病気と闘い続けながら――

 

「お姉ちゃんと同じ制服着て、同じ時間を過ごしたいの」

 

 そう何度も言って…。

 でも私は手を差し伸べることも出来ず、ただ逃げ回っているだけだった。

 あと僅かしか残されていない時間の中で私ばかりが逃げ回って――

 

「私は栞に何もしてやれない、そんなままで終わってしまっていいの…?」

 

 そんな私に彼は泣く場所を与えてくれた。悲しみを、栞への思いを、全てを受け止めてくれた。本当は栞のことが好きで、大好きでいる自分の気持ちに気付かせてくれた。

 

「少しでも起きる可能性があるから奇跡って言うんじゃないのか?」

 

 そう彼は言った。

 私もその言葉を受け入れようと思った。

 私は栞の辛いときには一緒に頑張ってあげたいと思ったから。

 支えたいと思ったから。

 栞は今、必死に生きているのだから…。

 

 そして、本当に奇跡は起こった。

 

 彼は栞だけでなく、私の心も救ってくれた。

 

「そんなにアイスばかり食べてたら太るわよ?」

「む――っ! そんなコト言うお姉ちゃんは嫌いですっ!!」

「ふふっ冗談よ冗談」

 

 二人で笑っていられるようにしてくれた。

 心の鎖を解き放ってくれた。

 だから私は彼に感謝している。

 

 そして今なら言える。

 

「奇跡は起こすことが出来るものなのよ」

 

 と――。

pure snow

 

〜・・・あとがき・・・〜

 Kanonの香里で書きました。今までには書いたことないような形になったわけですが・・・どうだったでしょうか?

 香里はKanonのなかで最も好きなキャラなので、一度書いてみたいと思っていました。そして今回書いた、というわけです。

 かなり短い内容なのでスラスラ読めたと思います。この短い内容にどれだけ込められるか、そんな挑戦でした。自分ではなかなか満足のいく仕上がりになったと思います。香里の心情の変化が少しでも感じてもらえれば幸いです。

 今回のタイトル、『last regrets』は、KanonのOP曲をそのまま使わせてもらいました。意味は『最後の後悔』。内容に合っていると思ったので、そのまま適用しました。

 それでは、感想などはBBSのほうによろしくお願いします。

 

白く振り注ぐ結晶を想い抱きながら――

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