彼は7年前の街を訪れる。

 それは決められた運命かのように巡った時の流れ。

 ――そう、思われた。

 

「約束だよ」

 ちゃんと覚えていなきゃいけなかった事を俺は、

 忘れてしまっていたんだ―――

 

 運命は、変わる。

 いや、運命なんて…存在しなかもよ、今じゃ。

 だって、ね?

 もう、壊れちゃってるよ? 歯車。

 

 

起きないキセキの最後のキセキ。

 

 

 ここ、どこにあるのか不明な相沢家。

「なぁ、親父」

 そこには3人の姿。今喋ったのは、あの街に訪れることになる祐一。

「ん? どうした祐一?」

 そして、それに答える彼の父親。

「…海外って言うのは…本当か?」

 再び祐一が訊きかえす。

 海外――親の仕事の都合で、行く事になったらしい。

「本当よ」

 彼の母親が答える。

 ゆったりとした口調。やさしい微笑み。あの街のいとこの母親を思わせる。

「それに、長くなりそうだ」

 父親が言う。祐一にとっては聞きたくなかった言葉だったらしく、硬直している。

「と、言うことは――」

 震えながら言葉を発す。なにか、その返答に恐れるかのように。

「みんなで行くのよ」

「…やっぱり」

 その言葉を聞いて、がくっ、とうな垂れる。

「嫌そうだな」

「まぁ…ね」

 当然だ、とでも言いたげな瞳で父親に言葉を返す。そして、

「母さん」

「何?」

「俺、残ってひとり暮らししたいんだけど…」

 祐一が無駄とも思える注文をする。

「おい、祐一!」

 当然、駄目そうだった。親がそうも簡単に許すはずがない。ただでさえ、親が日本を離れると言うのだ。近くに置いておきたいのも無理はない。

「ダメ…か?」

 父親ではなく、母親に訊く。すでに父親に言っても無理だとわかっているらしい。見た目バカのわりにそこらへんだけは冴えている。

「うっさい」

 作者に威圧的に返答するあたり侮れない。だが、まだまだ甘い!

「なんだとっ!?」

 貴様は所詮、俺の手の内で踊っているのだ!

「なんでKanon主人公の俺がたかが作者の手の内で――はっ!?」

 ――ふっ、気づいたか…。

「作者の手の内――――」

 そうだ。この俺が書いたことがすべてその世界で実行されるのだ!

「………くっ」

 ふふふ……では、相沢祐一くん。君にはまだまだ操り人形であってもらうよ。手の内で踊る…ね。さぁ、今の記憶を消して、自分の世界に戻るんだ。

  ………

  ……

  …

「――? 俺は今、いったい何を…」

「どうしたの祐一?」

 母親が心配そうに顔を覗き込みながら訊く。

「…いや、何ともないよ」

 すこし不思議そうな顔をしながらも、そう、と言って顔を上げる。

「それで母さん、一人暮らしの件だけど――」

「民衆の前で10回廻ってうぐぅで、了承」

 意味不明な言葉を発する。

「「…………は?」」

 当然祐一も、その父親も、唖然としていた―――

 

 

 

  そして―――

 

 くるくるくるくる…………(10回転)

 

 「うぐぅ」

 

 彼は運命を切り開いたのだ…。

 全ての羞恥心と、プライドを捨てて――

 

 

 

 彼が――相沢祐一が、あの7年前の街を訪れることは二度と…なかった――

 

 

 

 後に彼は言う。

「うぐぅって…何?」

 

 

了。

 

 

  

そして、彼のいない7年前の街で、キセキは起きた…。

たったひとつだけのキセキ。

それは――

北川潤という少年が主人公へと昇格したことだった―――

 

 

 

 

 

 

 

当然、他のキセキはすべて起きなかった。

 

 

本当の了。

 

 

戯言。

 いやぁ、無茶苦茶な話になってしまいましたよ。

 さて、腐れ作者はとっとと永遠の世界に旅立ちますかね。

 ということで、さいなら。

 

 って、無理か。

 えっと、このSSは突発モノ。急に思い浮かんだわけですよ。

 『もし祐一があの街に来ないとしたら、どんな理由か!?』

 って感じで。

 んで、それが形になったのがコレ。

 作者とのやりとりは始めの時はなかったんですよぉ?

 書き終わって容量がホントに少なかったから書き足しただけ。

 ま、無駄ではなかった、ということで。

 でもやっぱり、北川が主人公になるのって…キセキ?

 あ、久瀬とかでもよかったかもしれないなぁ。

 ………ま、戯言の場なんだし、これくらいでイイでしょ?

 んでは〜。

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