「誕生日おめでとう、香里」
「ありがと」
それは、まだふたりだけしかいない朝の教室での短い会話。
- 誕 生 日 的 事 実 に 基 づ く 相 沢 祐 一 的 思 考 -
「でも珍しいわね。相沢くんが何の捻りもなしに人の誕生日を祝うなんて」
「む、何か引っかかる言い方だな。それじゃ俺がいつも捻ってるみたいじゃないか」
「むしろ拗れてるわね」
「ぐはっ」
それも、まだふたりだけしかいない朝の教室での短い会話。
ここから先が彼の思考回路を疑うことになる、誕生日的事実。
「――― いや、な。俺の思考が最終的に『香里の誕生日はしっかり祝うべきだ』なんて答えを出したわけだ」
「何よ、その思考は」
まったくもって、一体どんな思考なのか。本気で彼の思考回路を疑った。
「ん? 何だ聞きたいか?」
「――― あまりいい予感はしないけど…えぇそうね。聞きたいわ」
そうかそうか、なんて満足気に言う彼の顔を見ながら、壮絶に自分自身の吐いた言葉に後悔する。
「香里の誕生日って今日、3月1日だろ?」
「そうね」
「それで栞の誕生日は先月、2月1日」
「――― そうね」
「つまり、だ。栞が誕生日を迎えてから今日までの1ヶ月間。その間はふたりの年は同じになるわけだ」
そう、確かにこの1ヶ月間はあたしと栞の年齢は同じになる。考えたことはなかったが、確かにそうだ。
「……何が言いたいのかしら?」
「いんや別に。そのこと自体は結構あるケースだから別にこれといったことは思わないんだが――― 」
だが、何だと言うのだろうか。
「その間が、たったの1ヶ月だっていうのがポイントなんだ」
「――― 」
彼が何を言いたいのか、まったく予想がつかない。
あたしと栞の誕生日が1ヶ月違いで、あたしの誕生日まで年齢が同じであることも事実。それに加えてまだ何かあると言うのか。あたしには、まったく予想がつかなかった。
「学年がいつを境に変わるか、知ってるよな?」
「え―――?」
学年が変わる境。それは、きっと話の流れからするに誕生日のどこまでが上の学年で、どこまでが下の学年か、という『早生まれ』を含めた考えのことだろう。
「4月2日、よね?」
「御名答。学校教育基本法第22条だったか? それで1日は入らずに、2日からだな。まぁ、それはいいとして早生まれってのは香里も栞も同じだろ? ふたりとも3月と2月なんだから」
それを聞いて、何となく彼の言いたい事が予想できた。
「いやー、よかったな香里。1ヶ月遅かったら、すげぇことになってたぞ」
あぁそれともう1日プラスな。なんて言う相沢くんの言葉を聞きながら、あたしはその話を整理した。
――― それは、あたしと栞の誕生日が1ヶ月と1日ずれていたら、の話。
そうなったら、あたしの誕生日は4月2日。栞の誕生日は3月2日。あたしは早生まれでなくなり、栞のみが早生まれとして上の学年へ編入される。それによってあたしたちふたりの誕生日が同じ学年の中に収まってしまう――――― 。
「――― つまり相沢くんは、そんな理由がない限りは、普通に人の誕生日も祝えない、ってことね」
「はっはっはっ。そう褒めるなよ香里」
「褒めてないっ!」
反射的に叫んで、あたしは右の拳を閃かせていた。朝の清々しい空気を切り裂いて、
ばきぃっっっ
それはきれーに顔面に突き刺さった。
この後授業が始まっても相沢くんは動かなかったけど、それはまた違うお話。
あとがき
香里の誕生日記念ってことで。構想時間+執筆時間+推敲=20分
――― ゴメンナサイ。ギャグになりきってなくて、だからと言ってマジメでもなくて、どうにもこうにも中途半端で――― ゴメンナサイ。
メールにて早生まれについての指摘を頂いたので修正。本っ当にアリガトウございました。
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