微かな、軋みを上げる音で目が覚めた。

 真円の月が煌々と輝く夜。目を覚ますと四肢は感覚を失ったかのように動かなくなっていた。
 自分の姿を見て、糸に吊るされた操り人形マリオネットを思い出す。自分の姿はまさにソレだった。
「―――、ぁ」
 視界が廻る。
 アカい。壁も、天井も、ベッドも、自分も。何もかもがアカで染め上げられていた。
 
 ぎぃ。
 
 軋む音がする。
 ベッドに縛り付けられて動けない私は、その音をぼんやりと聴いた。
 
 ぎぃ、ぎぃ、ぎ。
 
 よくわからない。
 どうして私はこんなところにいるのだろうか。確か友達と別れて帰ろうとしていたはずなのに。
 よくわからない。よくわからない、けれども。私の状況は普通ではないようだ。
 
 ぎ、ぎぃ。がちゃ。
 
 アカい部屋に、クロい影。
 糸に縛られる私が操り人形ならば、このクロい影は傀儡師だろう。
 ……視界が定まらない。
 どこか頭がぼんやりとしている。アカい部屋が、本当にキレイに見えた。

「オナカ、スイタ」

 クロい影が云った。その声はどこかしゃがれていて、現実感というものが希薄だ。ただなによりも現実的だったのは、その影の右手に下げられた鋭いエッジ。アカい部屋に漏れる月明かりに照らされて光るエッジはどこまでも白く――キレイ。
 手がお腹に触れる。
 ぼんやりとした視界の中でクロい影がエッジを、ナイフを振り上げた。

 口が三日月をかたどる。
 それを観て始めて。思い出したかのように悲鳴をあげた。


進む 
 クリックだけでも嬉しいので、気軽に押してやってください。完全匿名です。メールや掲示板に書き込むより断然お手軽。
> Back to List
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送