ZERO R. 始まりを告げる声
ズゥン… ドォォン……
遠くの方から、爆発音が聞こえる。
ズドォン… ゴゴゴゴ…
鳴り止むことなく、継続的に響き渡る。
そして、それと共に聞こえてくるのは、人と、そして人外の者の叫び。
―――そこは激戦だった。
血で血を洗う…そんな言葉がしっくりきてしまうほどの地獄絵図。
多くの人が、多くの人外の者が、絶叫と、爆発の中でぶつかり合っていた。
そして、その激戦区からまだ離れた地…そこにひっそりと建つ神殿。
建物自体は古く、歴史を感じさせる。
だが、放棄された建物ではない。
いまだにその昨日を失っていない、聖なる神殿だ。
「いったい聖女は何をしている!?」
そんな神殿の中に、叫び声が響く。
いかにも戦人≠ニいった感じの男が大声で叫んでいた。
「聖女さまは…まだ祈祷の最中です」
いきなりやってきた巨漢に、受け答えをしている神官の女性はうろたえている。
「祈祷、祈祷と―――! いつまで同じことを続ける気だ!?」
「お、お静かに願います…。聖女さまは、」
ゴォン
男の手にしていたハルバードが唸りをあげ、神官の目の前に突き刺さる。
「ひっ」
神官が息を呑み、男が更に声を荒げる。
「くそっ! こっちはどんどん仲間が死んでいっているんだぞ!?
それなのに聖女は何をしているッ!!」
男の憤りは収まりそうにない。
誰もが眼を背けたくなるような大戦乱の中、ただ命のみが消えていく。
「やはり…この世界の異変は、止められるものではないのですね…」
神殿の最深部、さきほど男と神官の女性が言っていた聖女≠ニ呼ばれる女性が言葉をこぼした。
聖女と呼ばれてはいるが、その容姿はまだ幼さを残している。まだ、10代であることに違いない。
「これを起こしたのは…人間では、ないというの…?」
「それでは…どうすれば……」
ただひとり、虚空に瞳を彷徨わせながら言葉を紡いでいく。
「…次元を統べる剱…」
その言葉を発した瞬間、聖女の表情が歪む。
まるで、その言葉を発することを封じていたかのように。
「三振の剱…あれはもうこの世界には存在していない…」
「この世界には…」
「!?」
突如、聖女の表情が驚きに変わる。
「この世界には確かに、もう次元を統べる剱は存在していない」
「だけど」
「違う世界では?」
違う世界。それが何を意味するのか。
それが指すものを知るのは、この言葉を発した聖女のみ。
「次元を統べる剱…ディメンジョン・ゼロ……」
次元を統べる剱 …それが全ての鍵であることに、間違いはない。
全ての鍵…それは失われた剱。
そして…まだ、存在の可能性を秘めたもの。
見知らぬ聖戦が、今はじまる。
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