アーチェの想い −Happy Happy には程遠い?−

 

     ちゅごぉぉぉんっ!!

「待てェーーッ! 誰がバカだってェーーーーッ!?」

「お前に決まってんだろっ!? んなこともわかんねーのか!!? このバカがッ!!!」

「また言ったわねェーーー!! 絶対、ぶっ飛ばーーーすっ!!!」

     ちゅどどどーーーんっ!!!

 とうとう日常的になってしまったこの二人の揉め事。その二人とは、追いかけているアーチェと逃げているチェスター。

 チェスターがちょっかいを出し、過剰反応したアーチェがキレて追いかける・・・・。こんなことがほぼ毎日おきていた。

 ただの揉め事ならいいのだが、アーチェの繰り出す魔術のせいで毎回大きな被害が出る。それが深刻な問題だった。

「アンタなんか・・・・大ッ嫌いよッ ビックバンッ!」

 アーチェの怒りが、魔術へと変換され――

「チ、チョット待てェーーーーッ!」

 チェスターの願いも虚しく、解き放たれるっ!

     ずごおおおおおおおおおおおおん!!!!

 周囲が光に包まれたかと思うと、即座に大地を揺るがす大爆発が生じた!光属性最強魔術。その威力は、周囲一体を焼け野原にするのにも余るほどの威力を持っていた。

 そしてそれを受けたチェスターは、

「うわぁぁぁあぁぁあぁ・・・・・・・・!」

 遥かかなたまで、吹き飛ばされた。

 当然、戻ってくるまでに、相当の時間を要することとなった。

(あぁーーーーもうッ!! ムカムカするッ!!)

 そして、アーチェの怒りはおさまっていなかった。

 ほぼ毎日のこの出来事。毎回ちゃんと仕返しをしてはいるが、完全に怒りを取り除くことはできない。当然のように…蓄積されていた。

 ※

 そして時は変わって食事時。ここはある町の宿屋。

 そこには相変わらずの二人の姿があった。

「チェスター。いい加減にしときなよ? これ以上やってるとさすがに体がもたないぞ」

 クレスが心配して声をかけるが、当のチェスターは、

「俺は本当のことを言ったまでだぜ? 『お前はバカだ』ってな。あいつ――」

   ドスッ!

 アーチェのナイフが深々とテーブルに突き刺さった。

「チェスターっ!!」

 クレスがチェスターの言葉を遮る。そんなクレスに目を向け、チェスターは疑問を投げかける。

「なんだよクレス。本当のこと言ってなにが悪いんだ?」

「アンタ…またぶっ飛ばされたいの…?」

 アーチェにいつもの笑顔、明るさがなかった。その顔には憎しみしか浮かんでいない。

「―――望むところだ…」

 チェスターが食事の手を止め、アーチェを正面から見据える。

 その瞳は、狩りをするときの――鋭くすべてを射抜くかのような――色を宿していた。

 チェスターとアーチェの間に殺気が立ち込める。

 チェスターが後ろ手に弓を取り、アーチェが精神を高めていく。

 まさに、一触即発。両者共に相手に探りをいれている。なにかのきっかけで、この場は戦場と化すに違いない。

 そんな二人の様子を見ていたひとりの人物が声を掛けた。

「二人ともいい加減にしないか。せっかくの料理が台無しになってしまう」

 二人を止めたのはクラース。

 最年長であること。思慮深いこと。それらからくる、落ち着いた雰囲気。

 だが、今回の言葉には怒り≠ェこもっていた。

 もしここで止まらなければ両成敗をもって収める、ということだろう。クラースの周りにはすでにマナが渦巻いており、いつでも召還術が発動できる、そんな状態だ。

「……ごちそうさまッ!」

 アーチェが急に席を立ち、そのまま外へと飛び出した。

「…ちっ」

 チェスターも同じように席を立ち、自室へと戻っていった。

「ふたりとも、もう少し仲良くすればいいんだがなぁ…」

 クラースのぼやきに、そこに残った3人が頷いていた。

 あの後、アーチェはこれといった目的があるわけでもなく、ホウキにまたがって空中散歩をしていた。

 表情からも伺えるとおり、気分は沈んでいた。

「チェスターのバカ、バカ、バカ、バ―――」

 不意に、アーチェの頬に一筋の雫が通った。

(どうしてアタシ達はいつもこうなの…?)

 どうしていつもいつもケンカばかりしているのだろうか? アーチェはそれを考えていたらなぜか悲しくなった。理由はわからない。ただ、悲しかった。

(アタシの…バカ…)

 それから十数分後、アーチェはひとつの事を決めた。

(謝ろ…)

 ケンカばかりしていては、二人とも居心地が悪い。

 それに、まわりにも迷惑を掛けてしまう。

 そう考えると、やはり謝るしかないと思ったのだ。

 アーチェはホウキを翻すと、もと来た道を戻りだした。

 宿に戻ってきたアーチェは、クレスにチェスターなら部屋にいると聞き、その部屋を訪れていた。

「チェスター…?」

「あん…? なんかようか?」

 言ってアーチェを睨み付ける。まだ相当怒っていることは明白だった。

「えっと…、これ、食べてみてくれない?」

 そう言ってアーチェの差し出したお皿の上にはオムレツがのっていた。謝るきっかけにと、つくって持ってきたのだ。

「いらねぇよ。んな殺人的にまずいもんなんてな」

 だが、それは一言で突っぱねられた。

「え……?」

 以前、アーチェに与えられた汚名…『××料理人』この名が指すのは…つまりそのままだ。

「そんな…、人が、人がせっかく仲直りしようと思ってつくったのに…」

 そばにあった机の上にオムレツののったお皿を置いた――その手はかすかに震えていた。

「チェスターの…チェスターの……、バカァーーーーーッ!!」

 どうしようもない悲しみと、怒りをマナに委ね、その勢いのままにファイヤーボール×9、アイスニードル×4、ライトニング×2を同時に撃ち込むと、勢いよく部屋を飛び出した。

 その頬を一筋の涙が流れたことを、チェスターは朦朧とする意識の中で見ていた…。

 それから数分が経ち、なんとか回復したチェスターはまずは一息ついて自分を落ち着かせた。

 その後に部屋を見回し…その中で、見栄えするオムレツに惹かれた。

(ん…? 見栄えのいい、オムレツ…?)

 不思議だ。××料理人のアーチェがつくったとは思えないほどの出来だ。

 いつもならちょっとばかし個性的な色や形だったりするのに今回は見た目よし、香りよし。そして確かめてはいないが味もよければ完璧なのだ。

「………」

 恐る恐るオムレツを口に運ぶ。

「うまい」

 本当においしかった。

 ミントがつくったものと十分に張り合えるほどに。本当はミントがつくったのではないかと思ってしまうほどに。

− 仲直りしようと思って −

 アーチェの言葉を思い出し、勢いのままに宿を飛び出す。

 そこでバッタリとミントに会った。

「なぁ! なんでアーチェの奴、急に料理がうまくなったんだ!?」

 掴みかかるかの勢いで、何の前触れもなく唐突に訪ねる。しかしミントはそれに動じることもなく答えを返した。

「アーチェさん、よく私のところに料理を習いにきていました。すぐに上達していって…。特にオムレツの出来は―――」

     ずっごおおおおおおおおおおおおおん!!!!!

 ミントの言葉を遮るかのように響いた爆発音!

 離れているはずなのに、その衝撃はココまで伝わってきた。

 そして、そんな芸当が出来るのは一握りの魔族と――

「あのバカ…!」

 呟き、駆け出す。

 目的地は、ひとつしかなった。

―――― そのころアーチェは…

「――エクスプロードォッ!!」

     ずどぉぉおぉぉおおおおんッ!!!

 そこらへんのモンスターを吹っ飛ばしまくっていた。

(チェスターの、バカ…。アタシの、バカ……)

 悲しみと、怒りが渦巻き、それを押し殺すかのように魔術を放っていた。

 この被害にあうモンスター達が本当にかわいそうなものだ…。

「………」

 到着したチェスターは辺りを見回して絶句していた。

 その地面にはいろいろな傷痕が見受けられた。

  ――燃え尽きている所。

   ――岩石がまわりに弾けている所。

    ――地割れの起きている所。

     ――激流のあとがついている所。

      ――上から凄まじい圧力をかけられたような所。

 エクスプロードにインデグニション。アースクエイクにタイダルウェーブ。そしてゴッドブレス。

 高等呪文の傷跡がハッキリと見て取れた。

 そしてホウキにまたがって宙に浮いているアーチェを見つけた。

 アーチェも気づいたらしく、体の向きをチェスターへと向けた。

「おい、アーチェッ! この付近、こんなんにしてどうするつもりだ!? 高等呪文ばっか打ちこみやがって…、このバカッ!!」

「うっさいわよッ!」

 チェスターが、アーチェが、お互いに怒りと不満をぶつけるが――

「…と、こんなこと言いに来たんじゃなかった」

 チェスターが怒りを放り捨てて言った。

「なによ…?」

 そんなチェスターに何を感じたのか、アーチェもホウキから降り、近くにあった少し大きめの岩場に腰掛けた。

「――誤りに来たんだ」

「え……?」

 意外な言葉。その言葉にアーチェは立ち上がり、そして思考が一瞬停止した。

「悪いッ、俺がワルかった! だから機嫌なおせよな!」

 勢いに身を任せるかのように一気に言う。その言葉をアーチェはしっかりと受け止めていた。

「そんな…アタシだって…ゴメン」

 再び涙がこぼれる。今までの嫌な気分から開放されたこと。そして何よりもチェスターと仲直りできたこと。いろいろと理由はある。

「お、おい、泣くなよ。オマエは泣いてる顔より、いつもの明るい顔のほうがお似合いだと思うぞ…?」

「……そだね」

 涙を拭うと、チェスターと共に歩き出した。みんなの…仲間達の待っているところへと。

「あ、そうそう…」

 チェスターが思い出したように口を開いた。

「?」

 アーチェが不思議そうに小首をかしげる。

「オムレツ、美味かったぜ」

 ビッ、と音がしそうな感じで親指を立てた。

「ぁ…」

 不意に心が躍った。嬉しくて、涙がこぼれかけた。だけど今は、

「ありがと♪」

 明るく答える。すでにアーチェの顔には輝かしいほどの笑顔が戻っていた。

END...

 

あとがき

 せっかくなので手直しを加えてみました。

 一番最初に書いた二次創作なので読むのも恥ずかしいくらいに下手だなぁ、と思いましたが…まぁ、少しはマシになったかな? と思います。

 えー、チェスターとアーチェの組み合わせですが…私的に大好きです。

 なんというか、いいキャラしてますよね、ふたりとも。微笑ましい?というか何と言うか…と言った感じではあるんですが、好きなもんはしょうがないってことで。

 えーと、こんな文章を読んで下さってどうもありがとうございました。

 もし、感想を書いてもいいなぁ、って方は掲示板の方にお願いします。

 おそらく狂喜乱舞します。

 

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