TALES OF PHANTASIA

− 夢幻の出会い −

前編

 

「ロディ〜! 行くよ〜!!」

ここはミゲールの街。その中の一軒の家の前で呼びかける一人の少女。その少女――ティシアの底抜けに明るい声が辺りに響く。

「ロ〜ディ〜!!」

     ガチャ

「あっ! おはよ〜♪」

 これまた底抜けのない笑顔であいさつする、が。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 と、返事がない。うなだれ、気力も感じられない。

「ロディ? どーしたの?」

「・・・・・眠い」

「・・・・・はぃ?」

「・・・・・眠い」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・眠い」

「・・・・・起きろォーッ!!」

      ガスッ!

「んにゃ・・・? あぁティシア・・・おはよォ〜・・・」

 アタシの必殺『龍虎滅殺吼爆掌!』(ただのパンチ)でやっと起きたみたい。

 えっと、この寝ぼけてるのはアタシの幼なじみのロディ。一応アタシより一つ年上なんだけどね。あ、アタシは今16歳だから、ロディは17歳ってことかな?

「・・・・・とりあえず顔洗ってきたら?」

「そうする・・・」

そう言ってフラフラと戻っていく。

(進歩ないわね・・・ロディは・・・)

 などと考えながら数分経過。

      ガチャ

「ゴメン、ゴメン。遅くなった」

「ん? 別にいいよ。それより、昨日のことちゃんと覚えてるよね?」

「・・・・・昨日って?」

 返ってきた答えはまた予想外であって、それは怒りを招くものであって、それで・・・。

      ゴスッ!

 思わずアタシの握りこぶしはロディの後頭部を捕えていた。

「イタイ・・・ティシア・・・」

 頭をさすりながら言葉を返してくる。本当に、絶対に、完全に、当然のように忘れているようだ・・・。

「イタイ、じゃないわよ! 本ッ当に覚えてないわけ!?」

「・・・・・・・・???」

 必死に思い出そうとしている。・・・・・が、思い出したような素振りはない。

「はぁ・・・。だーかーらー、明日モンスター退治に行くって言ったじゃない! そーゆー依頼がアタシの家の道場に来たって!」

「・・・・・? なんのこと? だってほら、昨日家にいなかったし」

「・・・・・あれ?」

「「・・・・・・・・・・・・」」

 イヤ〜な雰囲気に・・・きまず〜・・・。

「ア、アハハハハ〜! 誰にでも間違いはあるって!」

「・・・・・殴られ損・・・」

 ボソッとしかも痛い所を突いてくる。

「ウッ! ま、まぁ気にしないで・・・」

 こうなったらアタシはどーしよーもない。受け手にまわるしか・・・。

「まぁいいや。で、モンスター退治に行くんだろ?」

「え? あ、うん・・・」

 予想外の言葉に、一瞬反応できなかった。

「じゃあ弓取ってくっから」

 そう言って再び家の中に戻っていく。あの辺がロディのいいところだ。

 そうそう、アタシは剣を使うわけ。ロディは弓ね。言ってなかったけど、アタシのフルネームはティシア・アルベイン。で、あいつはロディ・バークライト。そう、アタシ達はあのダオスを討った人達の血を引いてるのよ! 引いてるってほど遠くないわよ。だってアタシ達のおじいちゃんにあたるんだから!

「よし、準備できたぞ〜!」

 弓を手に出てくる。アタシも準備は出来てる。いつでも行ける。

「・・・・・で? どこ行くんだ?」

「えっと・・・ユグドラシルのもう少し奥・・・」

「・・・・・やけに近いな・・・」

「うん・・・だからこそやらないと」

「そうだな」

 二人は決意を固めた。そのモンスターを野放しにするわけにはいかない。

 ここ、ミゲールの街は森とのかかわりが大きい。狩猟をする人も多いのだ。

 

「――で、なんだと思う?」

 ユグドラシルを目指しながらロディが聞いてくる。

「聞いた話だと、狩りをしていてボアを追い詰めたかけたときにユグドラシルの裏に逃げられたそうなの。そしたら・・・・・」

「そしたら?」

「・・・・・骨が砕けるような音と、断末魔の叫びが聞こえたって・・・」

 考えればわかる。少なくとも友好的とは考えられない。

「大型、だな・・・」

 ロディも分かっている。そんなに簡単な話ではないということを・・・。

「やるしか・・・ないわよ・・・」

「あぁ、分かってる」

 覚悟を決める。まだ被害者は出ていない。しかし放っておいたら―――

「もうすぐ、ね・・・」

 開けた場所に出る。そこには青々と茂る大木――ユグドラシルがあった。

(いつもは落ち着くのに・・・)

 このすぐ先にモンスターがいると思うと落ち着いていられなかった。

「ティシア・・・」

 弓に矢をつがえながら声をかけてくる。

「・・・・・分かってる・・・」

 剣に手をかけながら返す。さっきから感じる・・・気配を・・・。

 一歩、また一歩とその気配に近付く。息を殺し、細心の注意を払いながら。

「・・・ロディ」

「よし・・・」

 言葉に応じると、目を閉じる。木々がざわめき、空気の流れに変化が現れる。

『我射りし一閃に旋風を纏わせ――』

 風がロディを包む。弓を構え、さらに言葉を続ける。

『――彼の者を切り裂け・・・』

 すっ、と目を開く。風が矢に集まる。意志を持つかのように。

『風牙』

 言葉と同時に射る。一見したところでは普通の矢と変わりはしない。だが違う。触れずと切り裂く力など矢に有るはずがない。しかしロディの放った矢はその力を示しているのだ。

(魔法弓術か・・・)

 魔法弓術。魔術と、弓術。二つを組み合わせたロディの特技。

 魔術を矢に込めるというこの技を扱うロディはエルフの血を引いているということになる。しかし、なぜか魔術だけで扱えないらしい。魔力が弱いのか理由は分からないが、そのために矢を媒体として利用している。物に込めるといった時点で改良も加えやすい。

      ゴォォォオオオォオ・・・・・!

 風が渦巻く。何かに当たったに違いない。矢に込めた魔術『ストーム』がその力を発揮している。

(来る・・・!)

 巨大な影が草木を飛び越え襲い掛かってくる。閃いた爪をなんとか剣で受け止める。

(コイツは・・・!?)

 長く鋭い爪、牙。そしてその巨体からは想像も出来ない敏捷さ。血に飢えし魔獣を連想させる、そのモンスターは――

「「ガルフビースト・・・」」

 噂で聞いていた。闘技場の一体が逃げ出した、と・・・。

「コイツが・・・?」

「そうみたい・・・ね!」

 爪を弾き、一旦間合いを取る。

「やるしかないわ・・・いくわよロディ!!」

「あぁ!!」

 それぞれがそれぞれの武器を構える。

「いくわよ・・・」

 剣を下段に構え、気合いとともに鋭く振り上げる。

「魔神――」

 さらに振り下ろし、薙ぐ。その動作、一つ一つから衝撃波が生まれる。

「三連ッ!!」

 三筋の衝撃波が大地を抉りながらガルフビーストに迫る。しかし、それは当たることなく木に突き刺さっただけだった。

「上だッ!!」

 ロディの言葉に答えるように剣を振りぬく。

「魔神天舞ッ!!」

 上空に魔神剣を放つといった荒技。魔神剣を極めたティシアのオリジナルだ。

「空中じゃ身動き取れないでしょうッ!?」

      ズガァ!

 ティシアの言葉通り、ガルフビーストに突き刺さる。だが浅い。

グガァァアアアアッ!!!!

 咆哮とともに向かってくる。鋭い爪で確実にアタシの命を狙って。

「くっ・・・!」

 なんとか捌いてはいるものの、一回でも受けたら確実に動きに制限がつくことになる。出来るだけ避けたい。

    ヒュッ

 空気を切り裂く音と、焦げるような臭い。それが示す物を悟ると、間を取るために爪を打ち払った。

「炎螺ッ!!」

 ロディの放った魔法弓術『炎螺』込められた魔術は『ファイアストーム』半径数メートルを炎の嵐で包み込むという力を持つ。って呑気に説明してる場合じゃない! 出来るだけ離れないと!!

    ゴァアァァアアアァ・・・・・!!!

 炎が巻き起こる。それはガルフビーストを包み込み、さらに激しく燃え盛る。

「ティシア!!」

 炎が弱まると同時にアタシは駆け出した。ロディの作ってくれたこのチャンスを逃すわけにはいかない!

「アルベイン流、奥技! 魔神双破斬ッ!!」

 魔神剣を放つと同時に上下からの斬撃。一つ一つに確かな手応えを感じた。

「やった!?」

 間合いを取り、確認しようとする。そこに写ったのは腕を振り下ろす奴の姿。

「えっ!?」

 反応が遅れた。足元から岩柱が撃ち上がる。

「・・・・・っ!」

 横に跳んで致命傷は避けたが、足に鈍い痛みを感じる。見てみると血が流れていた。傷も深い。歩くのもままならないくらいに・・・。

(あと一打なのに・・・)

 自分からは動けない。最悪の状況ね・・・。

「ロディ・・・アイツをこっちまでおびき寄せれる・・・?」

「・・・・・やってみる」

 今の頼みの綱はロディだけ。こっちにおびき寄せれれば・・・一撃で終わる。

「・・・・・はっ」

 三点射。威嚇に等しいが、目的はあくまでおびき寄せること。無理をすると裏目に出かねない。

 矢は全て軽くあしらわれたが、注意は向いたみたいだ。あとはこっちにこれば・・・。

 剣を居合いの要領で構える。この一撃が決まらなかったら―――

「・・・・・っ」

 さらに二点射。確実に近付かせる。その距離、あと数メートル。そして、待っていた間合いに奴が入った!

(今ッ!!)

「当たれェ! 真空破斬ッ!!!」

 一気に振りぬく。その剣から発生した真空の刃が深々と切り裂いた。足の使えない今に出来る、最善の技だっただろう。

グガァアアアアアアアア・・・・・・・・!!!

 崩れ落ちるガルフビーストを見つめながらティシアは思った。ロディがいなかったら死んでたね・・・と。

 

「さてティシア。なんとか倒したわけだけど、どうする? ってティシア!?」

 叫ばなくてもいいんじゃないの・・・? 大げさ・・・でもないか。

「いつつ・・・。こりゃヤバイわね・・・」

「ど、どーすんのさ!? この傷! ヤバイって!!」

「あーもー、うるさいわねぇ・・・。神の御手にて汝を癒さん・・・ヒール」

 傷が光に包まれたかと思うと、その部分は何もなかったかのように治っていた。

「あ、そっか。ティシア法術つかえたんだっけ・・・」

「今更なに言ってんのよ・・・」

 剣術と一緒に法術も学んでおいてよかった〜。と内心で思っていたりする。

「さてっと、このまま戻り――」

     キンッ・・・・

「!?」

「どーした? なんかあったか?」

「今・・・なにか光った・・・」

「はぁ? なにが?」

 ロディの言葉も聞かずに駆け出す。光の正体を知るために。

「ちょ、オイ! ティシア!?」

 同じように追いかける。このまま一人で行かせたら大変なことになりそうだと思ったから。

「ここは・・・」

 ユグドラシルのあったところからさらに奥に進んだ所。そこには一振りの剣が石台に突き立てられていた。

「なになに・・・《時の魔剣》?」

 なんだろう・・・この感じ・・・。体の奥からなにかが溢れてくるような・・・。

「っと」

 剣に手をかける。するとさらに強いなにかが溢れる感じに襲われた。

「ま、待てティシア! コレ絶対に封印してあるんだよ! むやみに触るなって!!」

「でも・・・なんかアタシこの剣のこと知ってるみたいな感じがする・・・」

「なに言ってんだよ! オイッ! やめろって!!」

 握る手に力を込める・・・ことなく剣は抜けた。

「・・・あれ?」

 不思議に思っていると、またあの感覚に襲われた。なにかが湧き上がるような、そんな感覚に。

「えっ!?」

 剣が光を生む。大きく、暖かな光。その光が二人を包み、そして収まった時、そこに二人の姿は影も形もなかった・・・・。

 時の魔剣――《エターナルソード》の導きのもとに・・・・・・。

To be Continued

 

あとがき

 前編終わり! つ、疲れた・・・。テイルズとほとんど関係ないような・・・そんな前編でした。つーかティシア強すぎたかも。だって傷は最後の一回しか負ってないし。いや、ロディが活躍しなかったのが問題か? う〜ん、難しい・・・。

 そんなこんなで前編は終わったわけで、次は後編。こんどはいろいろな人物が出てきますよ〜♪ ふっふっふ・・・この先どうなるかは、書いてる本人にも分かりません(をい!

 ただ・・・エターナルソードは重要です。いや、マジで。これなかった話は進みません。

 さぁ! 二人の行き着いた場所とは? そこで待ち受ける運命とは!? 後編をお楽しみに!!

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