TALES OF PHANTASIA

− 夢幻の出会い −

後編

 

 流れている・・・蒼い光、波の中を・・・。

 あの時、《時の魔剣》と称された剣を手にした時の不思議な感覚。何かが溢れ出すような――そんな感覚・・・。

(アタシは・・・この剣のコトを・・・知ってる・・・?)

 朦朧とする意識を、そのまま流れに委ねようとした時――光が途切れた。

「・・・・・・はい?」

 光から投げ出された場所、それは・・・空ァ!?

「う、うそォ〜〜〜ッ!!!?」

 いくらなんでも重力には逆らえない。当然・・・強制落下!

     バキ、ドゴ、ガシャァ、ズダァ

「イッタ、タタタ・・・。う〜・・・なんか、すっごい音がしてた気がするんだけど・・・」

「う、う〜ん・・・。ティシア・・・平気か・・・?」

 ロディ・・・存在忘れてたわ・・・ゴメン・・・。

「まぁ、ね・・・。にしても、よく生きてるわねぇ〜」

 結構な高さから落ちたと思ったんだけどなぁ・・・。普通なら死んでるような高さだった気も・・・。って、なんか死にたかったみたいに思われそうだから止めとこ。

「なんかがクッションになったとか?」

「クッションねぇ・・・」

 言いながら視点移動、下方へ。そこには・・・、

「人、ですか・・・?」

 そう、人。思いっ切り落下の衝撃を吸収してもらったみたいです・・・。

「・・・はやく・・・どいてくれ・・・」

「わっっ、ゴ、ゴメンナサイ!」

 飛び退く。うっわ〜どーしよ?やっぱヤバイよ〜!

「あの・・・大丈夫ですか・・・?」

 内心の叫びを決して出さないようにしながら言う。言わなきゃダメなのよ、こーゆーのは。

「・・・まぁ、ね・・・」

 ・・・はぁ、よかった・・・。それに見た感じ優しそうな人だし、きっと許してくれるよね? って、ん? なんか見たことあるよーな・・・。

「他の人は・・・?」

 わっ!? ロディ!? 人が考えてたところに・・・って、ホントに一人じゃないよ・・・。えっと・・・? 1、2・・・6人? わっ!? 女の子までいるよ・・・。あの子・・・まだ10歳くらいだよね・・・。

「私は平気です」

 その女の子から返ってきた返事は・・・少女と思わせるようなものではなかった。同じように他の人たちも何ともなかったみたい。よかった・・・。

「それはそうと、君たちは・・・?」

 やっぱり不信に思ってましたか・・・。まぁ、当然といえば当然だけど・・・。なんてったって、空から降ってきたわけだし。

「あの・・・アタシたちは――」

「助かったぜ」

「・・・は?」

 青髪の青年が割り込んできた。なんとなくロディに似てるかな? って、助かったって何?

「見てみろよ」

 言葉に促されて見た先。そこには無惨にも放り出された料理の数々。これを見て罪悪感を覚えないわけが無い。

「せっかくの料理が・・・」

「いや、助かった」

「???」

 わけわかんない。わかるはずもないけど・・・・・・なぜか知りたいとは思わなかった。

「アイツの料理はある種の劇薬なんだ・・・」

 誰?とか思ったが、向こうで「アタシの料理が〜!」とか言っているあの子がそうなんだろう。

「そういえば自己紹介がまだだったね。僕はクレス、クレス・アルベイン」

「オレはチェスターだ。よろしくな」

 クレスとチェスター・・・聞いたことが・・・って、あれ?

「あの・・・、今って・・・アセリア歴何年ですか・・・?」

 まさか・・・まさかとは思うけど・・・。

「? たしか、4354年だったと思うけど」

 ・・・・・・ここって・・・過去? って、ぇえっ!? なんでアタシ達過去にいるわけ!?

「ティシア? ティシア!!」

「・・・ここ・・・過去よ・・・」

 ロディだけに聞こえるくらいの声で呟いた。

「いや、それは分かってるけどさ」

 ・・・なんで分かってるわけ? アタシより洞察力無いと思ってたのに(偏見)

「どうしたんだ? 二人とも」

「えっ!? いえ、別に!!」

「まぁ、いいけどな」

 む〜・・・どうしよ・・・?

「あっと、俺・・・ロディ。よろしく」

 ・・・フツーに自己紹介してるし。

(もう、なるようになって・・・)

「ティシアです。ティシア・アルベイン」

 ・・・はっ! フルで名乗っちゃった!!

「あ、俺はバークライト」

 アンタまで名乗らないでよ〜・・・。どうするのよぉ〜・・・。

「「・・・・・・は?」」

 ・・・どーすんの?

「あれ? 俺なんかしたか??」

「したわよ・・・かなり」

 自分のミスは棚の上に上げておこう。

「俺・・・?」

「そう」

「・・・ま、いっか」

(本当にもう、なるようになっちゃって・・・)

「む〜アタシの『アーチェスペシャルα海鮮スープ マジックバタフライ仕込みVar.4』・・・食べる前にダメになっちゃったじゃん・・・」

 ピンクの髪を大きなリホンでポーニーテールにした女の子。同い年くらいかな?

って、・・・マジックバタフライ? なに、ソレ・・・。

「あれ? どしたの??」

 硬直してる二人を見て。次にこっちを見て。

「アンタ達、名前は?」

「アタシは・・・ティシアって言います。ティシア・アルベイン」

 もう隠す気もないです・・・。

「アルベイン? へぇ〜アルベイン、ねぇ・・・」

「・・・は! ア、アーチェ!?」

「やるじゃん、クレス♪」

「やる、ってなんだよ!?」

「べっつにィ〜」

 なんだろう・・・。・・・深く追求はしないでおこう。

「で、アンタは?」

「俺? 俺はロディ、ロディ・バークライト」

「こっちはバークライトなわけね・・・」

「俺は知らねーぞ!!」

「ハイハイ、少し黙ってようね〜♪」

 言いつつ手をチェスターさんの背中に押し当て・・・。

パンッ

 高い音がはぜた。

「ご・・・!?」

 こ、昏倒させちゃった・・・(汗)

「ふぅ。それで、アンタ達は何者なわけ?」

「何者、って言われても・・・。ただ、森の奥にあったこの剣を抜いた瞬間、光に包まれて・・・気付いたらココ」

「剣?」

 首をかしげている。「コレです」と言って見せると、その表情が変わるのが見て取れた。

「コレって・・・!」

「「エターナルソード!?」」

二人の声が綺麗に重なった。

「そうか・・・君たちは未来から来たみたいだね」

「やっぱり・・・」

 予想通り。でも、まさか本当に過去に来るとは・・・。

「僕たちは知ってしまったからいいけど、他の人には話さないでくれ」

「なにをですか?」

 真剣な表情。冗談でも何でもない。

「君たちの未来のことだよ」

 アタシ達の時代のコト・・・?

(どうして・・・?)

「未来が変わってしまうかもしれないからね」

 考えていたことを見透かされたのか、付け足された。

(そっか・・・)

「そうですね」

 そう答えた。未来が変わる・・・考えたこともなかったけど、なんとなく分かった気がする。

「あと、僕のこともクレスでいいよ。よろしく、ティシア」

「あ、はいっ! こちらこそっ!」

「敬語はイイからね〜。あ、アタシはアーチェね☆」

「チェスターでイイぜ?」

 わっ!さっき昏倒したのに・・・!?

「ぁあっ! いつの間に復活したのよ!?」

「あんなん効くか! それ以上の受けまくってんだよ!!」

 あーイイ人ばかりだな〜あはは・・・はぁ・・・。どーしよ、これから・・・。

「ったく。あんなバカは放っておいて、よろしくなロディ、ティシア」

「よろしく」

「チョット待てェ〜!! だ・れ・が・バカだってェ〜〜!!?」

 明らかに殺気立ってるよ・・・。触らぬアーチェに祟りなし、ってね。

「オマエだ、バカ」

 火に油を・・・注がないで下さいよぉ!!

「また言ったわねェ〜・・・! 天を駆けし雷光 夢魔を切裂く稲妻よ この手に集いて刃と化せ――」

 独特のテンポを持つ言葉が紡ぎ出される。周りは視界に入ってない。

「――悪しき輩の黒き心 雷の刃 その身を持ちて打ち砕かん!」

「ま、待て! それフツーじゃねぇぞ!?」

 待つわけないでしょう・・・?

「サンダーブレードッ!!!(超強化、怒り上乗せVer.)」

 その瞬間、目を開けていられないほどの閃光と、耳も反応しきれないほどの凄まじい爆音が轟いた。あまり考えたくないが、これほどの魔術の対象となった例の人は――

「チョット焦げて痺れてるだけ・・・?」

 予想外にダメージが軽い。いや、軽すぎる。普通なら一撃で・・・。

 後に知ることになるのだが、こんなことは日常的に起こるらしい。

「まったく・・・いつもいつも・・・!」

 自分でやったにもかかわらず介抱を始める。わざわざそんなことするくらいなら、最初から魔術を軽いものにすればいいのに・・・。

「あ、アタシに任せてよ」

「ほへ?」

 気の抜けた返事。ま、気にしないでおくとして・・・。

「ふぅ・・・。神の御手にて汝を癒さん・・・ヒール!」

 淡い光が生まれる。傷が癒え、体力が戻っていっているはず。

「なに? 法術使えたの??」

「まぁ、一応勉強したしね」

「へぇ〜・・・」

 なにかしら感心している。う〜ん・・・自分の無茶についていくために学んだだけだったんだけど。

「暖かき光は汚れしその身を浄化せん・・・リカバー!」

 痺れてた、つまりマヒしてたみたいだから一応。多分これで平気だと思うけど・・・。

「・・・んぁ? おっ! 傷全部治ってるじゃねぇか! またミントの世話になったか?」

 いや、フツーはそうすぐに動けないんですけど・・・。

「ミントじゃなくて、ティシア」

「はぁ〜・・・オマエ法術使えたのか・・・。世話かけたな」

「どういたしまして。それより・・・ホントに大丈夫?」

 どう考えたってすぐには動けないと思うけど・・・。

「さすがに慣れたからな。さっきのなんてイイ方だぞ? ヘタすっと禁呪文だからな・・・あれはヤベェ」

「へぇぇ〜・・・フフン♪」

「・・・なんだ、その笑いは・・・?」

「べっつにィ〜」

 絶対に、ぜったいに、ゼッッタイに何か考えてる!!

      パキッ

「「!!?」」

 周り・・・人じゃない・・・コレは・・・!

「団体様の到着だぜ・・・」

「モンスターね」

「あぁ・・・」

 囲むような形で近付きつつある気配。独特の、モンスターだけの気配。

「ティシア・・・そっちは任せてもいいかい?」

 背中を合わせるように立つ。剣を抜き、すでに臨戦体制。

「分かりました・・・」

 請け負う。数は多い、が――

(やれる!)

 そう、ハッキリと感じていた。

「ならティシア・・・いくよ!!」

「はいっ!!」

 剣――エターナルソードを握りなおす。

     トクン・・・

 体の奥で何かが動き出す。湧き上がる。力・・・。

「「魔神剣ッ!!」」

 双方が同時に放つ。大地を抉り、駆ける衝撃が戦闘の開始を告げた。

「いくよっ!」

「よし!」

「アタシもいくよ〜☆」

「まかせときな」

 アーチェとチェスターさんも協力してくれる。絶対に負けない!

「震天・・・!」

 妖精弓から放たれた無数の矢が降り注ぐ。ランダムに広範囲に広がるこの攻撃で一瞬怯む。そこを突く!

「ハァァ!!」

      ズバァッ!!

 一気に踏み込み斬り裂く。鮮血が飛ぶが、気になどしていられない。

「っ!」

 後ろに気配。

 振り向きざまに剣を振るう。

      ザシュッ!!

(浅い!)

      ドスッ!!

 勢いを殺さないように貫く! その一撃で崩れ落ちた。

(血が・・・)

 ――剣に滴る"血"。    トクン・・・

――赤い生きる証拠。    トクン・・トクン・・・

      トクン、トクン、トクン、トクン・・・

(なに・・・? この感じ・・・?)

 雑念を振り払うように頭を振る。こんなことを考えてる場合じゃない!

 剣を構えなおし、再びモンスターと向き合う・・・。

 

「よ〜っし! アタシもいくよ〜!!」

 それまで彼女の周りを包んでいた明るい空気が消える。大気が震え、草木がざわめく。

「天光満つる所に我は在り・・・」

 風が荒れる。

「黄泉の門開く所に汝在り・・・」

 空がよどむ。そして・・・すべての気配が消える。音も何もない"虚無"の世界に迷い込んだかのように。

「出でよ・・・神の雷・・・!!」

 風が、空が、全てが荒れ狂い吼え叫ぶ!!

「いっけぇ!! インデグニションッ!!!」

 神の雷が刃と化し、全てを引き裂かんと唸りを上げる!!

      ズドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 大地が吹き飛び、視界が遮られる。周囲には焦げた匂いが立ち込め、青白い雷光が帯電しているかのように走っていた。

「すご・・・・・・い・・・」

 無意識のうちにそう呟いていた。砂煙がはれ、視界が開けてくる。吹き飛んだ大地がその威力の絶大さを語り、モンスターの半数以上が吹き飛んでいた。

「てへ♪ やっちゃいました〜☆」

 さっきまでの空気が一変。またもや明るくなる。マジメなのか分かんないよ・・・。

「・・・・・・!? アーチェ!!」

「ほへ?」

 後ろを振り向くと同時に一つの影が目に入る。大剣を今にも振り下ろそうとしている一体のモンスター。

「っ・・・」

 恐怖に目を閉じる。が、そのさきの痛み、衝撃がない。

「え?」

 見た先、さっきのモンスターに矢が突き刺さっていた。

「大丈夫か!?」

 チェスターが駆け寄る。アーチェに怪我がなかったのを確認すると、心底安心したようだった。

「さっきの・・・チェスター?」

 当然、自分を救った矢のことについて訊いている。

「いや・・・」

「え?じゃあ・・・?」

 思い当たる人物はあと一人しかいない。

「さっきの矢・・・ロディ?」

 駆け寄ってきたところに訊く。

「まぁ、ね」

 言いながらモンスターに向き直る。さすがに矢の一本くらいじゃ倒せない。まだ起き上がろうとしている。

「よし・・・」

 矢をつがえる。そして精神を集中する。

「巻き起こすは冷気・・・」

 辺りの空気が震える。

「解き放つは螺旋・・・」

 紡ぎ出される言葉に共鳴するかのように風が舞う。

「一閃に纏い全てを結せ!!」

 渦巻く冷気が矢へと重なる。引き絞り・・・解き放つ!

「氷魔ッ!!!」

 白き一閃が空気を斬り裂きながらモンスターに迫る。

      ドッ・・・ゴオオオオオ!!!

 直撃した瞬間、爆発的な冷気の渦が巻き起こる。これを見て二人は・・・放心していた。

「なぁ・・・」

「うん・・・」

「あれ・・・魔術だよな・・・?」

「うん・・・」

「オレ・・・エルフの血、入ってないよな・・・?」

「そうだね・・・」

「オレらの中で魔術つかえるのオマエだけだよな・・・」

「そうだよね・・・」

「・・・まさかな」

「まさかね」

 二人して乾いた笑い声を上げていた。

「って、呆けてないでくれよっ!!」

 ロディの叫び。呆けている間に完全包囲。

「・・・あれ?」

「どーすんだ・・・?」

「どーすんだ、って言われてもなぁ・・・」

 包囲網は狭まる一方。三人の運命はいかに!?

「・・・・・・終わりか・・・?」

 ロディがそんな言葉を漏らす。

「なに勝手に終わってんのよ!!」

「おいアーチェ! どーする気だ!!?」

「決まってるじゃん!! 全員魔術でぶっ飛ばーす!!」

「・・・オレらは?」

「ゴメンね・・・尊い犠牲になってもらうわ・・・(遠い瞳)」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」←長い沈黙

 冗談・・・だよね・・・?(どっかで聞いたセリフだな・・・)

「と、ゆーわけでぇ・・・」

 空気が変わる。・・・本気(マジ)か?

「猛り狂いし紅き業火」

 風が止む。

「全てを喰らいし炎の舞曲」

炎が巻き上がる。

「触れし全ての者の身を滅さん!!」

 空が叫び、荒れ狂う!

「いっちゃえぇ!! エクスプロード!!!」

 赤き閃光が全てを包む。五感が反応しきれないほどの大爆発が生じた!!

     ズゴオオオオオオオオオオオオン!!!

「「ぎゃあああああああああああ!!!」」

(ゴメン・・・チェスター、ロディ・・・。二人のコトは忘れないわ・・・)

「勝手に・・・コロ・・・ス・・・な・・・」

 息はあるようです。

「(放っておいて)さってと、モンスターは、っと・・・」

 見渡すと・・・動きあるものはない模様。すなわち全滅。

「バッチリじゃん!」

 ビシッと勝利のポーズを決めてみたりする。勝利の余韻・・・。

 

      ギィン!!

「くっ・・・」

 最後の一体。なかなか手強い。

「てやぁ!!」

      ビュン!!

 空気を斬り裂く音だけが耳につく。

(かわされた!?)

      ビュッ!!

 反撃が来る。速い!?

(それなら!)

「ハァア!!」

      ガキィン!!!

 剣を打ち落とし、相手の隙を生み出す!

「秋沙雨ッ!!」

 無数の連続突きで相手を貫き、そのまま上へと打ち上げる!

「とどめ! 襲爪雷斬ッ!!!」

 空中で身動きとれないところをすかさず追撃する。稲妻が身を焼き、

      ズバァッ!!!

 繰り出される斬撃が引き裂く!

「ハァハァ・・・やった・・・」

 やっと片付いた・・・。

(そうだ・・・ロディ達の方は・・・?)

「あ、ティシア〜☆」

「アーチェ? ・・・!!? 危ない!!」

「え?」

 さっきアーチェが倒したと思っていた中の一体はまだ息があったのだ。その一体が迫っていた。

「キャア!!」

 ここからだと距離がある。走っても――

(間に合わない!?)

 助けたい。守りたい。いつも思うのに・・・!

      キィン!

 エターナルソードが光を放つ。力強く。意志に呼応するかのように。

(これは・・・力・・・! 時を駆ける!!)

      フッ・・・

 空間に溶け込むように姿が消える。

      ヴンッ

 再び現れた場所、そこはアーチェとモンスターの間。

「ティシア!?」

「ッ!!」

 剣を横に凪ぐ。その一太刀はモンスターの胸を抉るように斬り裂いた!

      ザンッ!!

 崩れ落ちるモンスターの姿を見て、冷静な心を取り戻してきた。

(助けることできたの・・・?)

 自分でもいまいち理解できていない。『時を駆ける』そのことも。

「ティシア♪」

「アーチェ・・・?」

「ありがと☆ 助かっちゃった」

 笑顔。なにも変わっていない笑顔があった。

「よかった・・・」

 助けることができた。今はそれだけでいいと思う。

「おーいっ!ティシア〜!!」

「あ!クレス〜☆」

 声に反応して見てみると、クレスさんが走ってきていた。

「ティシアもアーチェも無事みたいだね」

「まぁ・・・」

「よかった。・・・ところでチェスターとロディは?」

 あ、そー言えば・・・。

「わ、忘れてた! クレス! ミント呼んできて! ティシアはついて来て!!」

「え? う、うん!!」

 とりあえずついて行くことにした。なにか嫌な予感が・・・。

「・・・・・・うそ・・・」

 アーチェに連れられてきた場所。そこには・・・ボロ雑巾と化した二人の姿。

「アーチェさん!」

「あ、ミント! 二人をお願い!!」

「これは・・・!?」

 驚きと焦りを露にしながらも駆け寄ると、精神を集中する。

「アタシも!」

 一人よりも二人のほうが、効果も効率もイイはず。

「「天の光、神の福音、慈愛の心を持ちて彼の者を癒さん・・・キュア!!」」

 大きく、暖かな光が生まれる。その光は二人を包み、傷を癒していく。

「これで大丈夫なはずです・・・ところであなたは?」

「あ、アタシはティシアって言います。なんか未来から流されてきたみたいで・・・」

「そうなんですか・・・よろしくおねがいしますね」

「こちらこそ。あ、こっちのはロディ」

 一応紹介しといてあげよう。

 

 その後、チェスターとロディも回復した後。まだ挨拶もしていなかったクラースさんとすずちゃんに自己紹介をし、全員で未来へ帰る方法を話し合った。

「それならクレスが送り届ければいいじゃないか」

「そう・・・ですね」

 簡単なことだった。エターナルソードの使い手でもあるクレスさんなら時を越えることが出来る。アタシは制御できないわけだし、それが一番ベスト。

「よし、それじゃあ早速いくよ?」

「はい。よろしくおねがいします」

「今日一日だけだったけど、楽しかった。ありがとう」

(ロディ・・・)

「本当に、今日はありがとうございました」

「僕らも楽しかったよ」

「モンスターがこなかったら、もっとよかったけどな」

「そうですね」

 そんなこんなで互いに別れの挨拶を交わす。もう、会えることは多分ないと思う。

「それじゃ・・・時の剣よ!彼女たちの時代へ!!」

 剣を掲げ、そう叫ぶ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」←沈黙

「あれ?」

 なにも起きてないんですけど・・・。

「どうしたクレス?」

「エターナルソ−ドが反応しない・・・」

 ・・・は?

「そ、それって・・・帰れない、ってコトなんじゃ・・・」

「そ、そうなるかな・・・?」

 冗談・・・だよね・・・?(ホントにどっか聞いたセリフ・・・)

「帰れないって・・・そんなぁ〜・・・嘘でしょぉ〜・・・」

 泣き言一つじゃ何も変わらない、って言っても言わずにはいられないよ・・・。どうすんのよ・・・これから・・・。

「ま、楽しく行こうよ♪」

 アーチェの笑顔も今は辛いです・・・。

 

 こうして、アタシたちは過去で、自分のおじいちゃん達と時を過ごすことになったのです・・・。

to be continued

 

・・・《 あとがき 》・・・

 はぁ・・・長らくお待たせしました・・・『夢幻の出会い』後編です・・・。

 あー疲れた。長い。無茶苦茶長い。今までで一番長い。・・・疲れた。

 あ、内容について。とうとうティシアとロディの二人はクレス一行と出会いました。そしてモンスターに襲われました。で、撃破しました。結局帰れませんでした。・・・終わり。いや〜なんて簡単なあらすじ。シンプルってイイね☆

 ・・・ゴメンナサイ。マジメにやります。え〜内容については、まず戦闘。なるべく技を使わせないで、普通に剣で闘わせよう、というのが今回の目標。・・・無ルでした。最初だけであとは全部技。というか、呪文がほとんどだったけど。あ、敵の数もしっかり書いてなかった。う〜ん・・・イメージとしては全部で40体くらいかなぁ・・・。その中の半分くらいを任されたわけよ、ティシアは。

 魔術使用時の表現は思いつき。適当に並べただけ。最近、謎な言葉がよく浮かぶ。

 あ!この台詞『冗談・・・だよね・・・?』知ってる人は知ってるね? そう、あのゲームの、あの人の言葉。知らない人は気にするな。

 そーいえば、もう一つ謎があるね。ティシアが血を見たときの反応。あれはその内分かります。まだ先も書くんで。うん、次はマジメじゃないけど。

 うーん、それじゃあ・・・ティシアとロディの時は波乱を迎える・・・であろう『喧騒の旋律』をお楽しみに!!

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