夜、眠りに落ちる前。
夜空には双子の月が煌々と光を放っていた。少し肌寒い空気が夜を深める。
そんな夜にふと、死という言葉を連想した。
どこまでも深い夜の闇と、音の亡い風がそうさせたのかもしれない。
ただ、それは。
どこまでも言いようのない不安を誘った。
「……旅が終わったら」
皆、元の時代へと帰るのだろう。
言うまでもないことだ。自分もそれに漏れず、自分自身の時代へと帰る。
だがそれが意味するのは別れだ。
一生の。あるいは、ひとときの。
――そう、ひとときだ。
いかに長い年月とはいえ、人間とは桁違いの寿命を持つからにはひとときとも形容できる。
だからそう悲観することもない。
また、幾年月を越えて逢うことはできるのだから。
「笑えないよ」
だけど、幾年月を越えた再会は、また死を以て終わりを迎えるのだろう。
再会を果たした、親しき者たちの、死を以て。
全ての仲間と、今のままの姿で再会できるのは自分だけだ。
誰もが年老いていく中、変わることはない。
「辛すぎるじゃん」
年老い、衰弱していく様を、きっと今のままの姿で見ていくことになる。
それは辛く、悲しく、絶望だ。
なんて、死は近く、遠いのだろう。
未来はほんのヒトカケの希望と、それを塗り潰す絶望で埋め尽くされているというのか。
いらない。
そんな未来はいらない。今が、今この時が。
このまま、ずっと続けばいいのに。
「――寝れないのか?」
その声に、はっとした。
眠っていたと思っていたが、まだ眠りには落ちていなかったのだろう。
半眼のまま、言葉を紡ぐ。
「何悩んでるかは知らねぇが……あまり深刻になるなよ」
「……アンタには、関係ないじゃん」
ついそんな言葉が出ていた。
可愛げがないとは思う。
だけど、この悩みは、誰にも解決することはできない。
だから余計に。言葉はトゲを孕んだ。
「……一応、仲間だからな。頼ったっていいんだぜ?」
その、頼る相手が。
その、頼るべき仲間が。
すべての中心、しこりだと言うのに。
「何勘違いしてるか知んないけどさ」
だから今、願う。
たったひとつだけ、叶えてはいけない願いを。
「そもそも、別に悩んじゃないんだけど?」
笑顔で飾る。内心は今ここで封印し、忘れよう。
ただひとつ、真摯な願いだけを残して。
――この旅が終わりませんように。
それは許されない願い。
双子月が輝く肌寒い夜の、たった一夜だけの記憶。
あとがき
まぁつまりそんな話。
なんてーか、暗い。雰囲気出てねぇ。ダメじゃん。
久しぶりにテイルズです。だけどテイルズな名前は何ひとつ出てません。こんなに短いのに出していられるかっ、ってことです。
まぁ誰の話かは分かる、と思う。分からなかったらどうしよう。
話の内容としては、本当に暗い話。
夜に寝よーとしてるときにふと思い浮かんだのです。寝る寸前はいつもSSのネタを考えているのです。
で、久しぶりにテイルズで書くかー、とか思いこんなモノになりました、と。
全ては駄文、という言葉に集約されます。ダメじゃん。
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