折り鶴に込められるのは何かの想い、そして願い。

 男の想い、そして願いは何なのか。

 

―――そんなことは、知らない。

 

 呟き、哂う少女が、街を歩く―――

 

 

 

 

空の境界

=  血 流 残 置  =

 

/4

銀十字

 

 

 

 近くまで煙草を買いにいって、戻ってきたら既に式はそこには居らず、橙子は窓の外を眺めていた。

「―――あれ? 式は帰ったんですか?」

「あぁ、さっさと帰ってしまったよ」

 そうですか、などと言いながら橙子に今しがた買ってきたタバコを手渡す。

「所長、代金下さい。ただでさえ苦しい中から出したんです。払ってもらえないと行き倒れになりそうですので」

 本当に、今はきびしい。給料前と言うのは切ないのだ。

 

「そうだな―――ほら」

 言って、投げよこした物をキャッチする。

「―――あの…所長?」

「ん? なんだ黒桐」

 投げ渡されたものを眺め、思った疑問をそのまま口にする。

「―――なんです、コレ」

 橙子が投げ、幹也が受け取ったモノを指す、その言葉に、

「お守りだ。遠慮せず取っておけ」

 橙子は簡潔に答えた。

 橙子がお守りだと言って渡したのは、小さな銀十字。

 装飾は確かに綺麗なのだが、そんなことはこの際別にどうでもいいこと。

 

「いえ、そう言うことじゃなくてですね…現金ください」

「あぁ金はない。ついでに言うと給料も出ない」

 私が欲しいくらいだ。なんて溜息をつきながら言う。

「―――取り敢えず、それが代金と給料だ」

「早退します」

 聞いたときには、幹也は背を向けていた。

 お金がないのは、恐らく橙子がまた何か購入したからだろう。もう少しお金を大切に、計画的に使って欲しい、と幹也は切実に思った。

 …そんなことより、今は自分が生きていくためにも何とかしてお金を手に入れなければならない。やはり今回も学人に頼むしかないようだ。

 

「おいおい黒桐。まだ出社したばかりだろう。そんなことを許すと思うか?」

「…生活費の調達に行く必要があるので」

 そう言う幹也の目は、給料を貰えないせいだ、とハッキリ告げていた。

 確かに給料を貰えないと分かっているのに、そこに留まり続ける意味はない。逸早くなんとか資金を会得して安心しなければならない。

 そんな考えしか浮かんでいない幹也に迷いも、遠慮もない。

 確固たる意思が幹也を突き動かす。

 今の幹也なら橙子が何を言おうと強行するだろう。その相手が式でも、鮮花でも同様だ。

 

 有無を言わせない幹也の空気に、さすがの橙子も少し引いた。

 

「はぁ、分かった分かった。好きにしろ」

 やれやれと肩を竦めて橙子が言った。

 自分が悪いのに、なんて態度だろうか。―――まぁ言っても無駄だろうから言わないが。

 

「ただし、これっきりにしてくれよ」

 その言葉に、

「それは所長次第です」

 幹也は一言に全ての意を込めて返すと、扉を開け、その身を空いた空間に滑り込ませた。

 

 

 

 

 

 カツン、カツン、と靴底が剥き出しの鉄骨を叩く音を聞きながら、橙子は幹也から受け取った煙草に火をつけた。

「まったく…」

 一言だけ呟き、煙草をくわえる。深く吸い込み、そして紫煙を吐き出す。

「―――もっと美味い煙草が吸いたいものだ」

 

 暫くは買うのを控えるか、などと一瞬だけ思い、また紫煙を吐き出す。

 

 

 煙草の煙は部屋に篭り、開かれた窓からだんだんと抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 中書き兼後書き その4

  上手く書けない…。

  幹也も橙子も―――というか、らっきょは全員難しい…。

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