不死 / 絶対死

 

 

 

 

 

 

 

 今までソレに牙を立て、紅い紅い血を啜っていた鬼は突然の来訪者にゆっくりと立ち上がった。

 

「―――ただの人間が、何のようだ?」

 

 凶暴な笑みを浮かべ、鬼が言う。

 だが、その言葉に目の前の来訪者―――ひとりの青年は答えない。

 ただ一振り、ナイフをポケットから抜き放った。

 

「殺る気か。だが勝敗はやる前から分かりきっているだろう?

 俺は血を吸う鬼。不死≠手に入れた。

 不死≠フ相手に、如何にして勝利できる?」

 

 本当に、本当にオカシソウに笑う。

 

「俺は死≠ネない。お前は死≠ハ。

 これ以上に決定的な差がどこにある?」

 

 なんて酷く歪んだ、楽しそうな笑み。

 

「お前が勝てる、わけがない」

 

 

 

「――――言いたいことはそれだけか?」

 

 言って、青年はメガネを外した。

 そこにあるのは闇夜に冴える、蒼い、蒼い瞳。

 

 その瞳に、絶対的な死≠予感した。

 

「不死と言ったな? 不死、読んで字の如し死なない≠チてことだ。

 あぁ確かに俺は死ぬさ。この心臓に刃物でも刺さればそれで終わり」

 

 トントン、と親指で自分の胸を指しながら言葉を連ねる。

 

「―――ひとつ訊く。お前、どうして自分が不死≠セと言える?」

 

「なに、を―――――」

 

 蒼い瞳に射抜かれ、言葉を上手く紡げない。

 よせ。止めろ。その瞳を。俺に向けるな。

 

「どうして自分が不死≠セと言い切れる? まだ死んでないだけの話だろう?」

 

「お、れは」

 

「終わらない、なんてこと誰に分かるものか。もしかしたら今よりも先で終わるかもしれないって言うのに。

 言い切ることなんて誰にも出来ない。

 結果が分かるのは終わる時。だが永遠ゆえに結果に辿り付く事もない。

 だがだからと言ってそれが永遠かはワカラナイ。まるでメビウスの輪。いつまで経っても結論には至らない。

 ―――なのに何故言い切れる、自分が不死≠セと」

 

 ガラガラと。ガラガラと音を立てて世界が崩れる。

 自分は不死? それとも?

 自身という名の世界が崩れる。

 蒼い瞳に射抜かれて、すべてが簡単に。

 

「やめ、ろ」

 

「お前は何も分かってない。不死≠ネんてもの、言い切れない」

 

「やめ、ろぉぉぉおぉおおおおおおおッ!!!!」

 

 絶叫と共に、もはや理性もなにもなく。

 ただ相手を黙らせる為にケモノの如く。

 跳躍して青年へと迫る。

 

「――――――――ひとつ、教えてやる」

 

 瞬間、青年の右手の内―――逆手の刃が銀閃を引いた。

 

 ドブリ、と。

 

 そんな音がしそうなほどに深々と。

 だが抵抗はほぼ皆無に。

 刃は寸分狂わず具現された死≠貫いた。

 

「――――――――――この世に終わりのないものなんて存在しない」

 

 

 灰となり、崩れ行く不死≠謳った男を一瞥し、空を見上げる。

 そこにあるのは真円。

 夜空と言う真っ黒の画用紙に穿たれた、ひとつの穴。

 

 あぁ―――と声を漏らして。

 

 

 青年は深く昏い夜に、蒼い蒼い月を見上げる。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 何と言うか、思いつき。

 短編が書きたいな、と思っていたら構想が浮かんだのでテキトーに書き上げただけです。

 短すぎて何が言いたいかよくワカラナイ。

 

 

 

◇ 記憶を退避する


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