□ 第 2 0 話 不 可 解 な 敵
照準、発砲、着弾。
3発の光弾がリオンの右肩、左肩、胴体を撃ち貫き、破片の尾を引いて地表へと叩き落とされた。
ブーストで飛び上がると同時に左手でライトソードを抜き放つ。
一閃。至近距離まで近付いていたリオンの腕に装備されたレールガンを断ち切り、返す刀で、袈裟斬りに。真っ二つになったリオンの奥を見定め、フォトンライフルを発砲。別機は胸の中心辺りに砲撃を受け、破片を背中から撒き散らして落下する。
ブーストをカット。重力に引かれるままに落下しながら、左腕に装備されたチャクラムを射出する。
空気を引き裂き飛来したチャクラムはリオンの一機を絡め取った。その飛行しているリオンに吊るされる形で数瞬の滞空。その間にフォトンライフルで二機を撃ち落す。
ガクン、という衝撃。絡め取ったリオンが限界に近いのだろう。左腕を力強く振り、その先端にあるリオンをまるでハンマーかのように違う一機に叩き付けた。
そしてチャクラムを回収すると同時に自由落下へと戻る。
「数が多いな……」
ガシュンと音を立ててヒュッケバインMk‐Uが着地した。
着地の衝撃を、衝撃緩和剤が吸収し、その際に気化した幾らかが機体の各部から噴出す。
すかさずレーダーに目を通し、敵機の位置を確認。
<警報! 敵機接近!>
「っ、!」
意識を戦闘用に一瞬で切り替えた。
軽くステップを踏ませるようにして旋回、敵弾を回避すると同時に照準――
横殴りの砲弾が目の前でリオンを撃ち抜いた。
『大丈夫かブリット』
「キョウスケ中尉、すいません、助かりました」
通信で聞こえたキョウスケの声に言葉を返し、機体をキョウスケのアルトアイゼンへと向ける。
「……射撃は苦手だったんじゃ」
モニタに映る、遠方のアルトアイゼンの腕には、無骨な銃器が抱えられていた。機体とほぼ同サイズの、ただ生身用の銃をサイズアップしただけのような――あまりにも凶悪なフォルム。
『要は慣れだ。出来ないことではない』
コッキングレバー作動、チェンバーへ次弾を装填。
両手で抱えるようにして保持、射角、誤差修正――トリガ。
重い音を引いて高初速徹甲弾が空中のリオンへと突き刺さる。中心からほぼ機体を真っ二つにして地面に叩きつけた。
ブーステッドライフルの威力は絶大だった。純粋な破壊力と射程だけならば他の追従を易々とは許さないだろう。
元々対空戦を想定していないアルトアイゼンにとって、飛行機体だけで構成された部隊を相手にすることは厳しい。だからこそ、PTの汎用性の高さが活かされる。
対空の武装がないのなら、対空の武装を持たせればいい。そのための腕、そのためのマニュピュレーターだ。
発砲。
さらに遠方での着弾。その間に、ブリットは近場の敵機を立て続けに撃ち落していた。
上空ではヴァイスリッターが敵を翻弄しながら確実に撃ち落している。
「それにしても……おかしいですよね」
『気付いていたか』
「確実な敵意がない……。無人機だから、というのもあるかもしれませんけど……それでも攻撃に積極性がない」
『そうだ。無人機なら無人機で、攻撃プログラムが組み込まれているはずだ。なのに、向こうが攻撃してくるようになったのはコチラが攻撃してからだ』
まるで、最初から目的ではなかったのに、攻撃されたから反撃しているかのような。
破壊するためではなく、防衛のため。
そんなことを思わせるような動きだった。
「なにか他に目的がある、ということでしょうか」
『エクセレンからも同様の通信があった。ほぼ、間違いない』
ならばその目的とはなにか。
向かっていた先は間違いなくラングレー基地だった。今基地にある、他にはないもの。そんなもの――と、考えて。
「いや……」
頭を振ってその考えを否定した。
だが、それでも、その考えは頭を離れようとしない。辻褄が合いすぎた。都合が良すぎる。それ以外に考えられない、と言うほどに。
『ブリット、考えるのは後にしろ。今は』
「敵機の殲滅を最優先、ですね?」
『そうだ。考えることなど後でいくらでも出来る。ここさえ乗り切ればな』
そう告げて、アルトアイゼンからの砲撃が轟いた。
敵機は残り十数機といったところだろう。空戦が主体のリオンによる編成なのだからそう簡単にはいかないが、それでもなんとかなるだろう。
出力を上昇させる。
T−LINKシステムによる後押しで空間は把握しきった。どこにでも手が届きそうな、そんな感覚を受けて。
「やるぞ……!」
その感覚が指し示すままに、引き鉄を引いた。
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