□ 第 1 9 話
そ れ は ゲ ー ム の よ う な 感 覚

 

 

 

「なんだよ、それ」

 声は、閉鎖された空間に静かに響いた。

 返す声はない。

 ただ、その響きが、事実だと突きつける。

「……はぁ」

 何故かため息が零れた。

 それが何を示しているのかは祐一には分からなかった。ただ、ため息をつかずにはいられなかった。

 

 振動が鈍く伝わってきた。

 恐らく、キョウスケたちが出撃したのだろう、と簡単に予想することができた。

 襲撃、だっただろうか。

 この基地での実力者はあの三人、ATXチームだ。半年前のL5戦役を終焉に齎した中心にもいたらしい。

 敵がなにであるかは祐一には分からないが、キョウスケたちが出るからには敵もPTなどの人型兵器の類である可能性が高いのだろう。

 キョウスケたちは確かに凄い。それは祐一にも理解できていた。

 操縦技術云々などといったものではない。あれは実戦を潜り抜けたからこその直感だ。

 当たり前の戦術ではあっさりと破られ、意外性をついたつもりでも、その瞬間に対処された。

 その動きに無駄はなく、的確だった。

 それほどまでに強い。

 

 そう、そんなことは分かっている。

 

 キョウスケから見れば、自分などまだまだなのだろう。

 祐一はまだキョウスケにシミュレータで勝ったことはない。エクセレンにも、だ。

 勝ったのは今、ブリットに始めてだ。

「――あぁ、そうだ」

 ブリットに勝った、、、、、、、、のだ。

 ならば、ブリットよりはやれるのでないだろうか。

 少なくとも……同じくらいはやれるはずだ。

 

「なら、やるしかないだろ!」

 

 シミュレータから飛び出ると同時に走り出す。

 向かうのは格納庫。そこには自分だけが動かせる闇色の機体――孤独な亡霊アインザムガイストが。

 あれだけゲームを繰り返したのだから、操作法は完璧だ。

 敵がどんな動きをするのかは知らないが、ヒュッケバインMk−Uを超える機体があるとは思えない。

 つまりは敵なしだ。

 もし強い敵がいたとしたら、キョウスケたちは苦戦しているだろうか。

 苦戦していたとして、そこに颯爽と現れて蹴散らす自分の姿を思い浮かべた。

「やべ、まるでゲームじゃん」

 ゲームなどでよくある、ピンチに現れる味方だ。

 美味しいトコ取り。カッコよすぎる。

 

「よし……!」

 さらに走るスピードを上げる。

 格納庫までもう、目と鼻の先だ。格納庫特有のオイルの臭いと、喧騒が耳に響く。

 被害がここまで来ていないことを見ると、キョウスケたちは上手く敵を抑えているようだ。

 格納庫に飛び込んだ。喧騒はすでに最高潮。まわりで叫んでいる声もハッキリと聞こえないほどだ。

 ぐるり、と周りを見回して自分の機体を探す。

「あった」

 一番端のハンガー。直立状態で保持されていた機体は相変わらず、そこにある。

 走る。驚きを露にする整備の人たちを無視して、直線で機体へと向かった。

 機体の足元に辿り着く。パネルを操作し、昇降用の足場を持ち上げた。

「さて、と」

 コックピットハッチを開くとすぐに、中へと滑り込む。

 シートに身を沈め、ベルトで身体を固定。コックピットハッチを閉めると同時にメインジェネレータを起動。

 システムの起動を確認。

 ジェネレータ出力、確認。

 T−Linkシステム、起動。

 グラビコン・システム、起動。

 起動シークエンスを流すように確認していく。――問題はない。システム、全てよし。

 

「ロックボルト、OFF!」

 ガシュン、と音を立てて機体を固定していたロックボルトが外される。

「アインザムガイスト……起動!」

 ヴン、と青くデュアルアイが光った。

 ジェネレータ出力の上昇を確認。

「武器は……っと」

 近場にあったのはビームライフルだけだった。

 それを迷うことなく手に取る。

 内蔵装備の弾薬を確認する。問題なし。

 

「危ないから下がってくれよ!」

 

 外であたふたしている整備の人たちにマイクで告げて、機体を歩かせる。

 格納庫のハッチは開けられていた。その先は外だ。

 戦闘が行われている場所はすでにレーダーを通して確認済み。

 後は……向かうだけだ。

 

「アインザムガイスト――」

 テスラ・ドライブを起動させる。重力を制御し、機体はもうひとつの命令だけで飛び立つだろう。

 スロットルレバーを押し込んだ。

 

「いっくぜぇッ!」

 

 

 

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