第3話   崩 れ 始 め る 日 常

 

 

 

「おはよう名雪、相沢くん。今日もギリギリね」

「おはよう香里っ」

――― おはよ、う…」

 あれから全力で走り、何とか遅刻を免れた祐一たちは教室へと辿り着いていた。

 香里に挨拶を返すと、自分の席に倒れこむようにして座る。

「おつかれさま。それにしても毎日遅刻寸前なんて懲りないわね」

 香里の言葉に、んぁぁ、と呻きに近い声を上げ、

「今日は、結構早く、出たんだけど、な…」

「あら、それじゃどうしたのかしら?」

「佐祐理さんと舞さん、それとあゆちゃんと話してたら結局こんな時間になっちゃった」

 名雪の説明に、香里がなるほど、と頷いた。

 

「相沢、お前も毎日大変だな」

 後ろから掛かった声に顔を向けると、そこにはいつもどおりの顔があった。

「よぉ北川。元気か?」

「それはこっちの台詞だって」

 はは、と笑う北川はいつもどおり調子はいいようだ。

 これでこっちも疲れてなかったらこのまま羽目を外しているところだろう。

 

「それはそうと相沢、今日の1限が体育だってこと、知ってるよな?」

――― ぅ」

 その北川の言葉は、今の祐一にとって拷問以外の何物でもない。

「しかも陸上だ」

 死刑宣告だった。

 何とか死刑だけは回避しようと、対策を練る。

「俺、保健室で寝てる…」

「却下」

「屋上でサボ―――

「ダメだって」

 どうやら逃げ道はないようだった。

 

 そんなやり取りをしていると、担任が教室にはいってきた。

 SHRが始まるのだろう。

 どうせ大した連絡もないだろうが、やらなければならない日課なので、いままで散っていたクラスの連中が席に座っていく。

 SHRの時間は短い。そしてその後の1限までの時間も同様に短い。

 今の祐一は、その短い限られた時間の中でどれだけ体力を回復させられるかが重要だった。

 

 

「死ぬ…」

「おぉ、死んでこい」

 

 軽く流した北川の頭を小突くと、祐一はそのまま机に突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時は、いつもの日常がつまらないと思っていた。

 

 だけど、それが本当に大切なものだなんて、気付くことはなかった。

 

 それがそこにあって当然だと思っていたから。

 

 だけど…

 

 いつも通りのもの≠ェこんなにも簡単に壊れてしまうなんて、

 

 その時はまだ気付いていなかった…

 

 

 

 

 学校

 

 生徒

 

 教師

 

 つまらない授業

 

 いつまでも続くかのように思っていた永遠≠ヘ誰の予想もつかず、崩壊する。

 

 

 

 ―――――― ズン…ッ

 

 突如…

 

 学校中が…

 

 プレッシャーに…

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 襲われた。

 

 

 

 

 

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