第6話 壁 を 作 り 出 す 少 女
「取り敢えず、今回のコレは能力者には効果がない、ということにしておいて――― 」
6人で廊下を歩いているとき、ふと祐一が口を開いた。
「俺たちの他にも能力者っているのか?」
能力者が近くにいると、感じることができるという佐祐理の言葉からの疑問だ。
佐祐理が、そうですねー、と言った感じで思い出すような素振りの後に口を開いた。
「3年生と2年生にはいませんねー。もしかしたらいるのかも知れませんけど、能力を使いこなせるようになると反応をかなり消すことも可能ですからー」
「へぇ…。んじゃ、1年は?」
「1年生ですか? そうですね〜…。あっ、確か一人だけ。名前はわからないんですけど…舞知ってる?」
佐祐理が舞に訊くが、舞はただ横に首を振るだけだった。
それを見た後、思い出したように、
「その、ですね…祐一さん。あゆちゃんも能力者なんですよ?」
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「「「「 えぇっ!? 」」」」
一瞬の沈黙の後、佐祐理と舞をのぞく4人がそろって驚きの声をあげる。
あゆが能力者であるというその事実に。
「あゆが…能力者…。………てか、どうして佐祐理さんがあゆのこと知ってるんだ!?」
普通に考えれば知り合いのはずが無い。
だが、
「あははーっ。以前からのお知り合いなんですよー」
あっさりとその考えは破られる。
まぁ何処で誰が知人になったとしても不思議ではないのだが。
「――― 取り敢えず! 今はこの学校内だけを考えようぜ」
固まっている祐一の変わりに北川が提案する。
「そうだね。ほら、祐一もいつまでも固まってないで」
「ぁ? あ、あぁ…。そうだな。確かにその一年生も確かめたほうがいいな」
「そうと決まれば即行動!」
なぜか北川がみんなを引っ張っていっていた。
場の流れを操る達人だったのかもしれない。
その場所も、事態は同じだった。
倒れる生徒。
変わらない日々の崩壊。
そして、異形の者。
「はぁはぁ…」
そこにひとりの少女がいた。
赤みのかかった髪は、少女が走ることで風に流れている。
そして、その走る少女を追うように迫る3つの影。
シャァァァァ!
人の形をしながらも、その左の腕は禍々しい鉤爪を有し、左右の身体のバランスは狂っている。
その異形の者が唸りを上げ、一気に飛び迫る!
その気配を察し、少女が振り向く。
パギィィン!
甲高い音がしたかと思うと、飛び掛ったはずの異形が跳ね飛ばされていた。
それを確認するより速く、少女が再び駆け出す。
他の異形も獲物を逃がすまいと飛び掛るが、同じく見えない何か≠ノ弾き返される。
ただ、異形が弾かれる瞬間、何かが白く光ったのだけが目に映る。
それはまるで…少女を守るように立てられた、壁≠フように見える。
少女が走りつづけ、昇降口近くにたどり着いたとき、その足が止まった。
「…っ」
目の前にも、異形がいたのだ。
前後あわせて5体。出口はすぐだと言うのに、逃げ切れない。
じりじりと、異形が間を詰めていく。
鉤爪をぎらつかせて、一気に前後の2体が跳びかかる!
が、その両者がまたも見えない壁に弾かれる。
だが、少女の瞳に宿ったのは、確かな焦りと、恐怖。
2体の後ろに、さらに1体ずつ跳んでいたのだ!
「しま…っ」
遮る壁はもう存在していない。ここで一撃を貰ってしまったら―――
「天野、伏せろっ」
唐突に聞こえた声に、身を沈める。
そしてそれと同時に頭上を通り抜ける、エネルギーの塊。
エナルギーと異形が重なった瞬間、異形の身体が上下に分断された!
「今のは…?」
高速で駆け抜けた【断裂】のエネルギー。
そしてそんな芸当が出来る者は一人しかいない。
「 … 【 閃 】 … 」
魔を討つ者……
川澄舞。
そして、祐一、名雪、佐祐理、香里、北川の5人もそこにいた。
「大丈夫か?」
「…はい」
祐一の問いに、少女―― 天野美汐が答える。
祐一たちが美汐の無事を確認した時、舞の方ではすでに戦いが始まっている。
目の前には4体の異形の姿。
敵を認知した瞬間、舞の剣が降り抜かれる!
空気が軋みを上げ、目には見えないエネルギーが弾き出される。
祐一たちにも、何が起きたのかよく理解できなかった。
そこに映ったのは、上下に分断され、空気に解けるように消えていく、
異形の姿だけだった。
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