第13話   最 深 層 記 憶

 

 

 

 風が吹いていた。

 

 辺り一帯に広がる荒野。

 そして、むせ返るほどの血の臭い。

 

 上がる断末魔。

 響き続ける鋼のぶつかる音。

 

 そこはまるで…地獄だった。

 

「………」

「………」

 

 そんな中、周りの空間から切り離されたかのように、しんと静まっている空間トコロがあった。

 そして対峙するふたつの影。

 

 

「お前と殺り合うのも…何度目だ?」

 あどけるように言う。

 見た目はまだ少年と言える年代。

 そして…

 その背には黒い翼があった。

 

「さぁな…いい加減にしてほしいと思うくらいは殺り合ってる」

 同じような語調。

 こちらも同年代程度の少年。

 だが…

 その背にあるのは白い翼。

 

 【天使】と【悪魔】

 

 対峙するのは対立するふたつの種族。

 

 激突は…必至!

 

 

 ゴガガガガガガッ!

 

 ふたりの姿が消えたかと思った瞬間、無数の打撃音が響く!

 お互い攻撃を攻撃で弾きあうという、力押しの戦い。

 そして、ふたりの力は均衡していた。

 

「「おォオッ!」」

 

 ガァアアン!!

 

 ふたりが同時に繰り出した拳撃が互いにぶつかり、空気が軋みを上げる!

 

 逃げ場をなくした力がふたりの中心で爆発、両者を共に弾き飛ばした。

 それでも両足と左手で地を噛み、慣性を殺しながら体勢を整えていく。

 

「【ケテル】ッ!」

「【バイス】ッ!」

 

 地面を滑りながら、ふたりが同時に叫ぶ。

 その瞬間、両者の右手に収束されるエネルギー!

 白の翼の少年には白く輝く光が、

 黒の翼の少年には黒く染まる闇が、

 それぞれ右手でカタチを成していく。

 

 ザ…ッ

 

 ふたりが静止したと同時に、光と闇の奔流が消える。

 そして、次いで現れたモノ。

 両者の右手に握られたもの。

 

 それは…

 

 ツルギ

 

 

 

「さすがに強いな…ヴェル…」

 白の翼の少年が、大剣【ケテル】を担ぐように構えながら言った。

「メタ…お前こそ、な…」

 大剣【バイス】を同じように構えながら、黒の翼の少年が言った。

 

 天使の少年、メタ。

 悪魔の少年、ヴェル。

 

 このふたりが対峙するのはすでに何度目かも分からぬほど。

 

 両者とも、組織の中でも上位に位置する実力者だ。

 存在が欠ければ、戦況が大きく変わるほどの、だ。

 

 その両者がこのように激突するのはもう、何度目とも言えないほど。

 お互いが、お互いの勢力図を変えるために、激突している。

 その戦闘は、周りと次元そのものが違う。

 

 

「いくぜ…」

 メタが呟き、その言葉に呼応するかのようにエネルギーが上昇していく!

 空気が渦巻き、プレッシャーが全てを包み、辺りの小石は砕け砂になる。

「ヴェルッ!」

 一括!

 大気が軋みを上げ、風の本流が刃となり、ヴェルを切り裂かんと吹き荒れる。

 

 だが、

 

 吹き荒れる【鎌鼬】を眼前に、ヴェルは不敵に笑みを浮かべ…

「甘いぜ…!」

 担いでいた大剣【バイス】を振り下ろした!

 

 ミギィ…!

 

 軋む、音。

 そして、音と共に、吹き荒れていた風までもが消え去った、、、、、

 

「そんなストレートに【風】を撃ってきても、俺には通用しない」

 剣を振り下ろしたそのままの体勢で、ヴェルが言う。

 

「空間を削り取る能力【共鳴する血ハウリング・ブラッド】か…。相変わらず厄介だな」

「それを言うなら、お前の【決壊する刻ブロークン・ハート】、時を視る、、能力はどうなんだ?」

 

 互いがにやり、と笑みを浮かべる。

 余裕からくるものではない。

 死力を尽くして戦える相手を目の前にしての、喜びだ。

 

 そのまま、ふたりが正面から向かい合い、数分経った時、

 

「さて…試合再開と行こうか…」

「そうだな…」

 

 ふたりが、エネルギーを高めていく。

 上昇し続ける。

 

 誰もが到達出来ない域まで!

 

 エネルギーの渦が空間を軋ませ、唸りを上げて全てを砂塵を巻き起こす。

 

 

 

 

 

「いくぜ…っ!」

 

 大剣【ケテル】を構え、オレ、、は一気に飛び出した。

 

 目の前の親友、、との決着をつける為に…!

 

 

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