第17話   襲 撃

 

 

 

 辺りは、漆黒の闇に包まれていた。

 闇…すべてを飲み込む闇が広がっている。

 そんな闇を裂くように、金色の月が、爛々と輝いていた――

 

 ――ほとんどの人が寝静まる午前2時過ぎ…。

 寝静まる――つまり、すべての動きや音が、1日の内で唯一なくなる時間帯。

 深夜の街は、シン、としている。

 まるで別世界。

 いつもと同じ場所でも、まわりの雰囲気だけでその姿をガラリと変えてしまう。

 

 そんな別世界に、蠢くモノの姿があった。

 その数、19。

 音も立てず、そんな多くのモノが街を疾走していた。

 体勢を低く、まるで獣のように走る。

 …それは、人のカタチをしていた。

 ただ、それが人だと感じられないとしたら、それはその速さだ。

 速い。普通には考えられないほどのスピード。

 目の前の獲物に喰らいつく獣の如し。

 常人離れしたヒトが、街を疾走しているのだ。

 

―――目標は、天使悪魔の翼アンバランスウイングだ。わかっているな?

 

―――了解。

 

―――それと他の能力者たちは捕獲できれば捕獲しろ。抵抗するようなら…

 

―――殺しても構わん。

 

 人の言葉で会話をする、人ではないヒト。

 その会話からも分かるように、狙いは天使悪魔の翼アンバランスウイング≠ツまり――月宮あゆ。

 そして、それぞれの能力者だ。

 

――― 。

 

 一言でも言葉を交わしたわけでもないが、19の影は最初から決められていたかのようにすんなりと3つのグループに分かれた。

 7と6と6。

 

 6と6は、進行方向から外れるように違う場所へと向かっていった。

 おそらく、能力者の拿捕が目的の小部隊なのだろう。

 数が多すぎると、動きにくいトコロがある。

 少人数だからこそ、効率がいいのだ。

 だからこその3部隊。

 

 その中の、7の部隊。

 ひとり多いこの部隊、そしてその多いひとりとはリーダー格だ。

 メインの部隊だと、その事実だけで伺える。

 

 当然、その目的も一番優先度が高いものだ。

 

 この小部隊が向かうのはひとつしかない。

 それは――

 

天使悪魔の翼アンバランスウイング、必ず手に入れる…!」

 

 

 

 

 

 

 

 ここから始まる。

 

 闇が始まる。

 

 光が途切れる。

 

 白が塗られる。

 

 赤に塗りつぶされる。

 

 

―――ここから始まる。

 

 

 

 消滅への宴が―――

 

 

 

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