第46話   雑 魚 に は 興 味 な い の よ ね

 

 

 

 高められたエネルギーを全身へと行き渡らせ、一気に地を蹴った。

 夏杞と栞との距離は約5メートル。

 交差まではほんの一足。

 

 栞が【凍結】によって創り出した氷のナイフを走り来る夏杞へと突き出す。

「よ―――っと!」

 しかし夏杞はその突き出されたナイフを避けるために上へと跳躍した。

 一気に天井まで。

 足を天井につけるように頭を下にして跳躍し、重力に従って自身が落下しはじめる前に天井を蹴る。

 あの魔物と同じ動き。人間離れした動きに大抵の者は追いきれるものではない。

 栞とて同じだ。

 だが栞は追いきれないと判断した瞬間に能力を開放していた。

 周囲一帯にエネルギーを散布し、氷の針を無数に創り出す。

 如何に人間離れした動きをしようとも、周囲を覆う氷の針から逃れる術はあるまい。

 氷の針の中を無理に抜けようとすれば全身がズタズタに引き裂かれることは間違いないだろう。

 

 だが。

 

 それを前にして夏杞は不適に笑みを浮かべた。

 

 

 夏杞が天井から落下しなが氷の針に満ちた空間を突き抜ける。

「ッ!?」

 それを見て栞は驚愕した。

 夏杞が笑って飛び込んできたことにも驚愕したが、それ以上の衝撃。

 

 夏杞が通り抜ける空間の、そこにある氷の針がまるで夏杞から避けるかのように動く!

 

 まるで夏杞から逃げるように。

 まるで夏杞を助けるように。

 

 進行方向上の障害を排除した夏杞は、落下の勢いのままに栞へと激突した!

 激突の衝撃で奥に吹っ飛ぶ栞と同じように、夏杞も自身の勢いに従って縺れる様にして奥へと転がる。

 栞が密着状態の中でナイフを夏杞の背に付き立てようと振りかぶった。

 だが、そんな栞の行動を感じ取った夏杞はエネルギーを行使―――能力を発動させた。

 

「え?」

 そんな疑問に満ちた呟きは栞の口から発せられた。

 それもそうだろう。

 自分が振り上げた腕が、急に重くなって、、、、、、、思うように動かせなくなったのだから。

 

「はい」

 夏杞が困惑している栞をトン、と前に押した。

 それだけで。

 栞は一気に数メートルと言う距離を弾き飛ばされた!

 一体何が起こったのか。一体何をしたのか。

 夏杞が少し押しただけで栞の身体が吹っ飛んだ。

 普通に考えてそんなことなど有り得ない。そうなれば考えられることはひとつ。

「け…っほ。……っ。…それが、あなたの能力…ですか?」

「そうよ。―――まぁ、あなたじゃ到底勝てないほどの能力なのは確かね」

 ふふ、と余裕に満ちた笑みを浮かべる夏杞を前に、栞がエネルギーを高めていく。

「…」

 瞬間、何の前触れもなく栞が地を蹴った。

 高められたエネルギーは右手に収束させている。

「どんなに凄い能力者でも、直接【凍結】のエネルギーを叩き込まれれば同じです」

 ひゅん、と空気を切って、栞の手が夏杞へと迫る。

「あーあー。そんなにムキにならなくてもいいのに」

 言いながら夏杞は軽やかにステップを踏むように、栞の攻撃を全て躱していく。

 決して栞の攻撃スピードが遅いわけではない。夏杞の反応スピードが栞を上回っている。…それだけだ。

 

 栞が一瞬でつららを創りだし、それを夏杞に向かって投げる。

 だが夏杞はそれを一瞬で判断し左手で弾いた。

 その瞬間に栞が肉薄する。右手を夏杞に押し付けようとして、それすらも失敗に終わる。

「…どうして?」

 今度は全身が右に引っ張られるような感覚を受けた。―――いや、確実に自分の身体は右方向に吸い寄せられた。

 そのために狙いは逸れて、右手は空を切ったのだ。

 

「さぁ、どうしてかしらね」

 言って夏杞は能力を発動させた。

「えぅっ!?」

 ガクン、と膝が折れた。何か、ものすごい圧力が上から掛かっている。

 その圧力に押され、起き上がることができない。まるで地面に張り付けにされたよう。

 少しも動くことが出来ない。

 

「わかった? これが実力の差ってヤツよ」

 栞を見据えたまま、夏杞が言う。

「―――わか、りません…!」

 身体が動かないなら、この空間に影響を与えるまで!

 栞が夏杞に狙いを定め、能力を再度解放した。

 夏杞の後方につららを生成、重力に従って落下させる!

 同時に創りだしたつららの数は4本。同時に捌ききることは不可能。そして避けることも不可能な距離。

 栞は勝利を確信した。

 

 だが。

 それでも栞は愕然とすることになる。

 

 落下を始めたつららが、急にその方向を変換し、真横へと動いたのだ!

 

 真横へ動いたつららは、一定の距離を進んだ後、また地面へと向かって落下した。

 だが既にそこは夏杞から離れたポイント。当たる事はない。

 

「―――まだやる?」

 結局夏杞は栞から視線を外すこともなく、つららを回避して見せた。

 そして栞に問う。

「…とう、ぜん…です…」

 そんな栞の言葉に夏杞は目を細めた。

 瞬間的に、夏杞のエネルギーが爆発的に高まった!

 

 今まで上から押さえつけていた重圧が消え去り、身体に自由が戻った。

 そう思った瞬間には、今度は逆にまるで重さを失ったかのように栞の身体は中に浮かんでいた。

 

「悪いけど、私――――――」

 

 呟いて、夏杞が右腕を引き絞った。

 視線はさらに鋭く。

 エネルギーが空間に奔る。

 

 

「――――――――雑魚には興味ないのよね…!」

 

 

 ゴゥ、と空気すらも巻き込んで。

 夏杞の掌底が栞に突き刺さった!

 その瞬間に発動する夏杞の能力。

 

 インパクトの瞬間に働いたその力は栞に掛かる衝撃を増加させ、意識を奪い、一気に十数メートルという距離を吹き飛ばした!

 

 

 

 

 

 

 

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